第24話 朝霧養護施設の出身
「あなたの恋人の智也さんは預かりました。返して欲しくば今夜はママと一緒に寝ること。そして今はとあるお店(ファミレス)に来て“二人っきり(ハート)”でよろしくしちゃってます。てへりっ♪ っとこれで良~し! そーしんっと♪」
碧は葵が心配しないようにメールを送っている。が、内容は余計不安を煽る感じだ。
「それが子供に送るメールかよ!?」と智也は思ったが口にしなかった。
あれから10分くらい歩いた近所のファミレスに来たのだが、そこに着くまで一切話さなかった。わざわざ葵がいない場所で話すのだから、それ相応の話なんだろう。
「コーヒー2つお願いしますね♪」
碧は話の定番商品のコーヒーを店員に注文した。
「…………」
「…………」
するとまもなくして、可愛らしいウエイトレスが「お待たせしました~♪」っと注文したコーヒーがテーブルに届く。その間互いに話さなかった。きっと話の途中で店員に話を遮られるのを嫌ったのだろう。
「私……周りクドイのってあまり好きじゃないの、だからこの際はっきりと言いますね。智也さん……ウチの葵さんと別れてくれませんか?」
ほんといきなりだった。丁寧な口調だが目と言葉は鋭い。まぁ先ほどの雰囲気から薄々はそれだと気付いていたのだがな。
「それはやっぱり……オレと葵が男同士だからですか?」
智也は探りを入れるように質問で返す。
「ま、そうね。智也君と葵さんは『男同士』だもんね。…………それも理由の1つかな」
(それも理由の1つってことは、他にも理由があるのか?)
それを聞こうと質問しようとするが、碧の言葉で遮られてしまう。
「……やはり気になりますか?」
「ええ、そりゃまぁ……」
他にどんな理由があるのだろうか。
「ですが、この理由を聞いたら葵さんとは……元のそして、今の関係には戻れなくなりますよ。そしてなにより、智也さんはこの話を聞かなければよかったと必ず後悔されると思います」
「元に戻れなくなる……ですか?」
元に……とは付き合う前の友達として、そして今の関係とは恋人関係の事を指しているのだろう。だがそれほどの理由が本当にあるのか? もし仮にあったしても、それでも葵のことが好きだし、どんな理由があるにしろオレが葵と別れるわけがない。智也はそう決意をし、碧に話の続きを促した。
「……その顔は聞く勇気があるみたいですね」
碧は智也の目を見つめ、そしてその覚悟を察した。
「話は変わりますが、智也さん。……あなた、朝霧養護施設の出身なんですよね?」
「っ!?」
そのことが原因なのか!? 正直それを今この場で言われるとは思わなかった。
だがそれなら葵も同じなはずだ。
「もしかして……それが今回のことに関係あるんですか? 葵
碧の問いに探りを入れる智也に対して碧はこう言葉を続けた。
「……ええ、葵さんもそうね。私が里親として引き取ったのがちょうど10年ほど前になりますね。あ、誤解しないで下さいね。別にそれが理由ではないんですよ」
碧は安心させるようにそう微笑み返した。
「(えっ違うのか? てっきりそれが理由かと思ったんだが……)」
「実はですね…………私も同じ朝霧養護施設の出身なんですよ」
「えっ!? そうなんですか!?」
これには普通に驚いた。
こんな身近に同じ施設出身者がいるとは思っていなかったからだ。
「(なら何が理由なんだ???)」
「たぶん智也さんはご存知ないと思いますが……私と同じく朝子今は……いいえ既に亡くなったのだから、『今』ではおかしいのですが、朝霧朝子と名乗ってしたが彼女も私と同じ境遇なんですよ。あの子も元々は孤児だったんです」
「朝子も!?」だったら朝子も俺と同じく、朝霧の養子になった……ってことなのか?
「そして、もう一人。あなたの母親である
「あの女が!?」智也はあの日自分が捨てられたことを思い出してしまう。
「やはり…………智也さんはそのことを知らなかったんですね」
智也の顔色からそう感じたのであろう。
「…………」
ショックから智也は言葉を発せなかった。
「話にはまだ続きがありますが…………聞きますか?」
頭を前に倒し、頷くだけで精一杯だった。
「……それでは続けますね。私たち3人は小中高と同じ女子校で、いつも一緒でまるで本当の姉妹のようだといわれてました。あの日が訪れるまでは……」
「あの日?」
「ええ」
っと短く肯定し、言葉を続ける碧。
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