第17話 ラブレターの行方
「……なんか疲れたから、オレ少し寝るわ」
「あっ、うん分かったよ。それじゃあ、ボクはその間に荷物の整理でもしておこうかな♪」
そして智也はそのまま眠りについた。
それから暫く経ち、目が覚め気持ちが落ち着き、頭の整理ができたところで葵と色々な話をした。里親に引き取られてからここにたどり着くまでの経緯。智也も葵と別れてから今までの事を簡単に説明した。
「へぇ~、じゃあ朝子お姉ちゃんのおかげで
「おかげというか、原因というか、なんとゆうか……。何でもここの理事長と幼馴染だかなんだかで仲が良いらしく、
そう語る智也の顔は呆れにも諦めにも見えた。
「……そうなんだ。まぁ普通なら入れないもんね、ここ」
「お前もコネって言ってたけど、親かなんかのか?」
「まぁ……ね。そんなとこだよ」
葵の返事には少し間があったが、そんなこと無理に聞く必要がないし、また興味もなかった。なんせここにいる連中は親のコネが大半だからだ。そもそも入学の条件からしてまともに入れるわけがないしな。
「そういえば転入ってことは、今までどっかの学校に通ってたのか? 県外か?」
「ううん県外じゃないよ。この近くにあるじょ……ち、近くにある学校に通ってたんだ! そしてお兄ちゃんがここに通ってるって知ってね。だ、だからここに転入したんだよ!」
また間があった。しかもかなり動揺していた。葵には人には言えない何か隠し事があるのだろうか?
時折強引に話題を変え、誤魔化すような言動があったのだ。それが何かはわからないが、今のところ気にするだけ無駄になるだろう。
それからというもの、葵は智也の後をにゃーにゃーっと、子猫のようにいつも付いて回るようになっていた。寮ではもちろんサイクリングするとき、ご飯を食べるとき、歯を磨くとき、寝るとき、風呂とトイレと着替えるとき以外はいつも一緒で、教室でも隣の席なので本当にいつも一緒にいる当たり前の存在になっていた。
普通ならそれを煩わしく感じるだろうが、そこが葵の上手いところでもある。智也が一人になりたいと思ったときに葵の方から気を利かせてくれたりして、適度な距離間を保っていたのだった。そんな葵に少しずつではあるが、智也は好意を寄せるようになっていた。
朝子が亡くなってからというもの、こんなに親しくできる人間は智也の周りにいなかった。自分が施設出身であるという負い目、周りとの育った環境の大きな違いや常識、そのどれもが智也にとっては異質だった。
だからこそ余計にいつも傍にいる同じ境遇の葵のことが余計に気になったのかもしれない。葵の見た目はとってもカワイイ女の子と言っても過言ではないし、料理・洗濯・掃除と家事がなんでもでき、男じゃなければ是非ともお嫁さんにしたいタイプであった。
頭の方も学年トップクラスで、腕っ節もそこらの不良には負けない、運動神経も良い、何をやらせても卒なくこなし、まさに理想的と言えよう。ただし男だということを除けばの話だ(ここ重要)。
智也は悩んでいた。いやすっごく悩んでいた。いくらカワイイ顔でも葵は男なのだ。もちろん智也にはそっちの気はないのだが葵なら男でも……っといけないと思いつつ、そう思ってしまうのだった。
そんなあるとき、葵の下駄箱に手紙が入っていた。その手紙とはラブレターだったのだ。男子校でラブレター(?)正気とは思えない行動と思われるだろうが、実際になくもない。むしろありえなくもない話である。何を言ってるかわからないだろうが、これを書いている作者も何を言っているか正直わからない(断定)。
特に葵のようにカワイイ顔をしていると男の娘でもいいやと言った気持ちになってしまうのがいてもおかしくない。かくゆう智也もその一人なのだから。
葵は当然それを断るのだが、智也の心境を変えるには十分だったに違いない。兄として慕う弟みたいな葵に対して、いけないと解っていても恋心を抱いてしまう。
ダメなこと、絶対に実らないことと知りつつも、その気持ちだけは抑えられずに日を追うごとに強くなっていた。そしてついに智也は葵に対して、自分の気持ちだけでも伝えようと決意をする。
(だがもし断られたらどうしよう、今の関係が壊れてしまう、もしそうなったら俺は……)
などとそんな気持ちが交錯する。
そうこうするうちに、今度は智也の下駄箱にラブレターが届いた。もちろん智也の答えはノーなのだが、一応の礼儀として相手に面と向かって断ろうと、指定された校舎裏で放課後に待っていた。だが、そこに現れたのはなんと葵だったのだ。
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