第43話 みやびたんはワシの嫁!
そこからの大次郎の行動は目を見張るものだった。すぐにライトノベルに対する、購買層・人気・他社の販売部数やジャンルなどを徹底的にリサーチ・研究、そしてラノベ業界はこれからも伸びる産業と判断した。すぐさま経営会議を開き、製作途中の作品も含み、伏見書店すべての作品をラノベにするよう強引に経営を方針転換するのだった。
もちろん度重なる、大次郎の独断独裁、そしてその失敗から重役たちは大反対した。だが、既に会社は倒産寸前だったのだ。明日おも知れぬ会社の状況でどうせ潰れるなら派手に散ろう! っと最後にはしぶしぶながら賛成するのだった。
そうしてラノベの購買層である若者は何を求めているか? それだけに焦点をあて、徹底的にリサーチ・研究をし常識にとらわれないラノベばかりを出版することにした。
大次郎のその経営判断は功を奏す。出す本、出す本、それらすべてが100万部越えばかりだったのだ。倒産寸前だった伏見書店は、まさに不死鳥のごとく息を吹き返したのだ。その経験を元に社名を
だが、そんな大次郎の独断に孫娘で会社の救世主でもあるみやびが一言発言する。
「なんだかゾンビみたいな名前で、また倒産してしまうのではないでしょうか?」
「うん。確かにそのとおりだ! 縁起悪すぎる! 誰だこんなのを考えたのは!」っとすぐさま大次郎は自分の事を棚にあげた。その変わり身の早さは政治家を凌ぐほど素早かった。
「では代案はないか?」と大次郎に聞かれたみやびは、「1度死んで不老不死を得る鳥『
1度倒産しかけ蘇った会社、もう2度と死なない(倒産しない)不死とも掛かっており、2重に縁起が良い。そこから会社はまさに絶好調。不死鳥はどこまでも羽を伸ばした。今まで会社の経営とは無縁だったみやびも、これを機会に女子学生ながら、経営に意見を言う立場になった。特に祖父の大次郎は、常にみやびを気にかけ、またその意見にも耳を持つようになっていた。
そして大二郎は「みやびたんはワシの嫁!」っとラノベっぽいことも言うようになっていた。
※じいさん、それは毒されすぎ(笑)
またみやびの提案で「新人ラノベ作家を発掘するのはどうだろう?」っとまだ名を知れぬ小説家への門戸を広げてみることにした。これが後の『新人ライトノベル作家チャレンジカップ』の前身になるのだった。そこにむつみが作品を応募し、むつみの作品と出逢い、みやびは一目惚れしたのだ。この作品を書いた人は、一体どんな人なんだろうと日々想いを
だが、むつみの作品に対し他の審査員達は一様に「う~ん……これは一般受けしないのではないか?」っと首を傾げた。だがみやびは「この作家は将来大物になる!」と断言し、将来性ある作家として、強引に起用することにしたのだった。父親の現社長よりも、そして創設者である祖父の会長大二郎よりも、発言権が重いみやびの言葉に誰も逆らえるわけがなかった。
正直むつみ応募した作品はチープな恋愛モノだった。ストーリーは単純なのだが、構成や何気ない伏線が多く、読んでいる者の期待を
それなのに……である。
何故だか何度も読み返す内に、それぞれの話が少しずつ繋がっているように感じたのだった。読み返せば読み返すほどそれは強くなった。そして、この作品自体がスタンド・アローン・コンプレックスだと気づく。
それぞれ3つの物語が独立した(スタンド・アローン)作品(エピソード)であり、3つを作品として合わせる、複合(コンプレックス)。それによって、4つ目の本当の作品がスタンド・アローン・コンプレックスとして顔を見せるのだ。
1、2回読んだだけでは“コレ”に気づかないだろう。たとえプロの編集であっても。みやびはこの瞬間「この作家は大物に化ける!」と直感した。そして「このような物語構成をどうやってこんなことを思いついたのか?」っと、みやびはますます『大槻むつみ』という作家が気になっていた。「本人に直接逢ってみたい! 少しでも言葉を交わしてみたい!」そんな思いが日に日にみやびの想いは募るばかりだった。
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