第33話 プロットの罠
「あわわわわわ」
むつみはどこかのロボットパイロットのように漫画やアニメなら両手を口につっこんで、あわあわしている。悲しいけど、これ現実(リアル)なのよね。そうは問屋が卸さない。
「み、見えない! 目の前が暗闇でボクは何も見えないよ! みやびさん!?」
ここにきてもなお、ささやかな抵抗をみせる作家のむつみさん。
「先生大丈夫ですよ。たかが
みやびはぎゅっと閉じたむつみの両目をこう「うにゃ!」っと強引に指でこじ開けた。もしこれがチワワだったら、両目が零れ落ちていたに違いないだろう。
「せんせい~こんにちわ~♪ お目目(めめ)はちゃ~んと見えてますかぁ~? もし、これでも見えないとおっしゃるなら『クロノスケ』みたく、そこにある“モノ”で目玉をほじくっちゃいますからね♪」
そう右目でウインクしながらみやびの視線の先には、むつみが昼に食べたカップヌードルに付いているプラスチックのフォークがしっかりっとロックオンされていた。
「み、見える! ボクにも
「……指示書(敵)が見えるなら、ちゃんと現実と戦えますよね?」
とても軽いノリの二人だが決して軽くない。この矛盾あなたならどう解決できる? もし解決できたら、きっとダイエットに応用できるかもしれないので1度お試しアレ。
「ではお次は先生のお耳を……」
「いえ。もう大丈夫です。はい」
むつみさん年貢の納め時です。これはもう、静かに死刑判決を待つしかないのです。
「まったくもう先生は、往生際が悪いんですから!」
「ほんっと、すいません」
ただただ平謝りするむつみ。二人が座っているベット(むつみ低い)とデスクの椅子(みやび高い)の立ち居地が、余計に今の立場を如実に表していた。
「それで作品についてなんですけどね……」
再び仕切り直しです。むつみさんは『ぎゅっ』と両手を握り膝の上に。目も辛さを耐え忍ぶかのようにぎゅっと閉じた。
「あ、あの、先生、そんなに目をぎゅっと閉じてられるとお話が進まないのですが……」
「……はい」
目を開けると眼前にA4サイズの紙が。それはどこかで見たことがあるのだが、それを嫌でも思い出したくないむつみさんであった。
「え~っと、それはもしかして伝説の……」
「はい。先生がお察しの通り、指示書・シノプシス・プロットなどをまとめたの資料です!」
みやびはむつみのボケを
「…………」
「…………」
二人のこの『間』は別に指示書を読んでいるからではない。目と目で牽制し合っているからだ。
「ここ! 先生、ちゃんと“ここ”を見てください!?」
「…………」
1番上の上冒頭、ジャンル指定の部分を突きながら指差す担当のみやびさん。
「そんなに強く押すと突き指しちゃうぞ♪」
「…………」
右目でウインクして軽いノリのむつみ。無言の圧力のみやびさん。その刹那みやびはガンっと、むつみの足と足の間のベットを支えるバーの部分を蹴った。
「は・や・く・こ・こ・を・よ・ん・で♪」
担当さんなのに、敬語をやめるくらい怒っているみやびさん。
「ジャンル指定…………BLって書いてあるね」
「はい! よくできました! 先生偉いですね~♪」
それは絶対によくはできてない。そして偉くも褒めてもいない投げやりな口調だった。
ジャンル指定の
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