第34話 転換期
『BL』に興味がある方は是非とも1度触れてみるのもいいかもしれません。……たぶん戻ってこれなくなるだろうがね(触れた時点で当社では保障期間外となります)。
その昔「ハゲとホモが嫌いな女子はいません!」……などと、名言を残したキャラがいた。ある意味ではそれも、もう1つのBL(ボーズ・ラブ)である。今ならそこにBL(イケメンXイケメン)も加わるのだろう。またBL好きな女子は
「で、先生。な・ん・で、この原稿『キミにキスを、あなたに花束を。』長いので以降略しますが、この『キミキス』は指定したBLじゃないんですか? 私ちゃんと言いましたよね? それに最初はちゃんと学園BLモノでしたよね?(怒)」
「う、ん。実はね、実は……
歯切れ悪く、そして可愛くて誤魔化すようにてへりっをするむつみさんです。
そう最初『キミキス』は、物語では男子校で男x男の……つまりBLのお話だったのに、途中で本当は男装女子(本当は女の子なのに男の格好をしている)だったことが判明、結局は普通の男女の学園恋愛モノになっていたのだった。
「最初に決めたジ・ャ・ン・ル・無視して良いと思ってるんですか先生わぁ~♪ というか先生が『ボクBLモノを書いてみたい!』と言ってたのを記憶しているのですが……私の勘違いでしょうか♪」
「いたいでふ! いたいでふ!」
みやびはこれは罰だと言わんばかりに、むつみの口をうにょ~んっと、左右に引っ張った。むつみのお口はお餅みたいによく伸びたのだった。
「まったくもう~、先生は仕方ないですね!?」
「ごめんね、みやびさん」
むつみは上目遣いをしてみやびのことを見つめていた。
「か、可愛く言っても、誤魔化されませんからね!!」
怒られた子犬のようにしゅんと落ち込むむつみさん。もしむつみにしっぽが付いていたならぺたーんっと、元気なさげにしょげていたことだろう。
「うーんどうしたものか…………」
みやびは右手を口に当てながら、黙ったまま長考に入った。
「……っ!?」
ぽん♪ っと左手を叩きます。どうやらみやびさんはなにかを閃いたようです。
「先生、
長い沈黙を破った言葉がこれだ。たぶん考えることを諦めたのだろう。それは漢字にも現われていた。
「みやびさん……ボクがこんなこと言うのもアレだけどさ、それでほんとに大丈夫なの?」
むつみはさっきまでとは言っていたことが違うと言わんばかりに不安と疑問に思い、みやびにそう尋ねた。
「だって既に発売日も決まってますしそれに先生のおかげで原稿の納期から1週間も遅れているので時間もありませんし、それに先生今から新しいの書けませんよね? ね?」
「……ご、ごめんなさい」
原稿の納期のあたりをものすご~く嫌味に言われたが、自分が悪いので反論できないむつみさん。
「あとは原稿を繰り返し見直して、少し手直しや大幅な誤字脱字の修正すれば……たぶんこれでOKもらえると思いますよ♪」
「はぁ~。良かったぁ~。これでやっと休めるよぉ~♪」
みやびから仮のOKをもらって気が抜けたのか、ぐでぇ~っとベットに倒れこむようにダラケるむつみさん。
(さっき『大幅な誤字脱字の修正』という単語が聞こえたような気がするが……きっと気のせいだよね?)
「先生。本当に長い間おつかれさまでした。原稿は一旦こちらでお預かりします。急いで社の方に持ち帰ってチェックしますので。それでは私はこれで失礼しますね!」
先ほどの無礼を詫びるように丁寧に頭を下げ、帰ろうとするみやびさん。
「あっ! みやびさん、もう帰っちゃうの? せ、せっかくだからさ、ファミレスあたりで作品完成の打ち上げでもしない?」
1番の苦労をかけたみやびを労うように、そして感謝とお詫びをこめて誘うむつみ。
この作品が完成するまで本当に長かった。かれこれ半年前、むつみは
むつみは元々どこにでもいる普通の会社員だった。仕事の合間に書いた作品を応募したのがきっかけで現在に至る。元々ラノベは趣味程度には書いてはいたが、(仮)とはいえ作家になれるとは夢にも思っていなかった。審査員特別賞に選ばれとても喜んだが、仕事との両立はむつみが考えていたよりも難しかった。
だが幸いにも……いや不幸にも若くして会社をリストラされることになったのだ。むつみがリストラされた原因は昨今の不況・円高で会社の業績が悪化、事業縮小の一環として人員整理、そこにむつみを含む派閥が運悪くとも引っかかってしまったのだ。むつみは会社に愛着があったわけではないが、高校卒業後初めて就いた仕事だけにいきなりの、しかも若くしての
これまで仕事一筋、友達も家族も顧みずに仕事仕事。同僚が遊んでいるときにも真面目に仕事ばかりしていた。例え給与が発生しないサービス残業でも1度も断ったこともなかった。また売り上げも他の人の何倍も稼いでいたのだ。だが、その結果が会社からの人員整理という皮肉な結果だったので余計に落ち込んだ。一時期は再就職も考えたが、今の就職・経済状況では明日への望みはまったくない。そう考えたむつみは趣味で書いていたラノベを本職にしようと取り組んできた。
そこに審査員特別賞という可能性を得て、それに一縷の望みとしてかけてみることにしたのだった。
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