第9話 もう100対0で完全コイツが悪いじゃんか!
「い、いや、しかしですね。だからと言ってその~、女の子を何人もで囲むってのは、いかがなものかと思いますがね」
「そんなことは言われなくても解ってるよ! こっちだって最初は謝れば許してやるつもりだったんだよ! ところがソイツ『こんなところに自転車止めてる方が悪い!』な~んて言いながら、オレ達を足蹴りしやがってきたんだよ。ソイツが先に手を……いや足を出してきやがったんだぞ!! どう考えてもソイツが悪いだろ? お前もそう思わないか?」
「(ちょおまっ!? そんなこと言いながらコイツら蹴ったの?)」
後ろに聞くと「うんうん!」っと、またもや力強く頷かれてしまう。
「(もう100対0で完全コイツが悪いじゃんか! 弁解の余地もねぇよ)」
その事実に気付き智也は、
「ほんっと、すいませんでした! コイツの代わりにオレが謝りますんで、どうか勘弁してやって下さい!」
っと智也は後ろにいた女の子も横に並ばせ、頭の後ろに手をやり強制的に頭を下げさせ、一緒に謝った。
「な、なんでボクが……」
「いいから黙ってろ!」そう智也は目で合図をする。
「ちゃんと謝ってもらうのはいいが、こっちはソイツに足を蹴られて大怪我しちまってるんだよなぁ~。おぉ~おぉ~、よ~く見ればこりゃ完全に折れてるな! だったらそれなりに貰うもん貰わないと、だよな!」
あからさまに足を引きずり、怪我をアピールする不良のリーダー。
(いやいや、折れてたら普通歩けないからな……コイツらはそんなことも知らないのだろうか?)
「た、たぶんですけど、歩けてるんで足は折れてはないと思いますよ。はい。……それじゃオレ達はこれで失れ……」
智也は女の子を引っ張って逃げようとするが、
「お~っとそうはいかねぇぞ! こっちの用はまだ済んじゃいねぇからな!」
『しかし、不良達にまわりこまれてしまった』
「てめぇよくも舐めた真似ばかりしてくれるじゃねぇか! いいからソイツをこっちに渡せってんだ!」
「…………コイツ渡したらどうするんだ?」
「そりゃ~もちろん『女』なんだからな。……お前だって男なんだから、何するか言わなくてもわかんだろがぁ?」
「グッ!?」
くくくっ……っと厭らしい笑いを浮かべながら、女の子を上から下まで舐めるような視線で舌をなめずる。
ここで問題を起こしたら自分も……っと思い智也は我慢するように不良達を睨みつけ、唇を噛み締めた。
「あの~…………ボクこれでも『男』なんだけど」
おずおずと遠慮がちに右手を挙げながらの一言。それに対し「「えっ!?」」っと女の子を除く、不良さん達と智也が呆気にとられてしまう。
「い、今なんて……」
智也が改めて確認するようにその子に聞き返した。
「だ、だからっ!! ボク……『男の子』なんです!」
目を
「(ホワイ? こんなにカワイイ子が女の子じゃない???)」
いや確かに着ているサイクルウェアは全身黒服で、いかにも男モノだった。レディースウェアの場合、ピンクや水玉・赤い色が多く、またいかにも可愛らしいデザインのサイクルウェアが多い。その男の子は智也達に比べ背は低いが、胸も出ていなかった。髪は長くポニーテールに束ねていたが、それだけで女の子とは言えないだろう。
「ま、まぁいいや。別に男だろうが女だろうが、こんなカワイイ顔してるんだからすることは同じだろ。それに今流行の
不良達はむしろ女の子よりも男の娘という存在に興味が増したようだ。
「(ま、マジかよコイツら……)」
そんな不良達に呆れる智也。
「いいから、こっちに来いってんだ!」
智也を退け、強引にその男の娘の手を掴み、抱き寄せようとする不良のリーダー。っとそのとき、
「ごはっ」
その刹那不良の顎にアッパーが入り、倒されてしまう不良の一人。智也がそれを阻止したのだ。
「て、てめえ! やりやがったなコノヤローッ!?」
リーダーを倒された事で智也の存在を危険と判断し、他の不良達は標的を男の娘から智也へと移した。
「ほんとめんどくせえ奴らだな。
智也は心底ぶちぎれていた。
「コラぁ! お前達! そこで何をしてる!」
そこに騒ぎを聞きつけた警察官が遅ればせながらやってきた。
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