第8話 不良さんは、わりと常識人
キキーッ、とブレーキをかけロードバイクを駐輪場に止める。いつもよりも早く駅前に着いてしまった。
「アイツのせいだな……」
智也は少し不機嫌だった。あの後もペースを乱されたせいか、平地でも思うように走れず『風』になることができなかったからだ。
「ちっ」
せっかくの休日なのに不満を
「おめえどうしてくれんだ!? あぁん!?」
っという雑音が聞こえてきた。そこには不良らしき数人に囲まれている、智也を不機嫌した
「あわわわわ、ごめんなさい。ごめんなさい」
ペコペコっと、米つきバッタのように頭を上げ下げしていた。どうやら目的地は同じ駅前だったようだ。
「ごめんなさいで済めば、弁護士はいらねぇんだよ!」
不良さんながら、わりと正論だった。
「おろおろ、あたふた」
慌てている擬音を口に出してしまうほど、どうすればいいかわからないようだ。『それ』がまた不良達の神経を逆なでする。
「……よく見りゃ、ありゃウチの生徒じゃねぇか?」
その不良達はフィリス学園のブレザーを着ていた。
「アイツら……馬鹿じゃねぇの?」
こんなことが学園に知れたら軽くて停学、最悪の場合には退学もありえるだろう。それくらい学園は些細な問題でも外に対しての対面を気にしているのだ。
「……あ、あの~だったらどうすればいいんでしょうか?」
戸惑うソイツに、不良のリーダーと思しき男が「コレだよ、コレ」っと右の親指と人差し指を繋げ輪っかを作り目の前で上下に振っている。
「あっ、もしかして…………お地蔵さんですか?」
「「ちげーよ!!」」
その天然ボケに思わず、不良だけでなく智也も一緒にツッコミを入れてしまった。
「あぁん!? なんだぁ~、てめえは?」
外部から水を指され、不良達がそれ(ツッコミを入れた智也)に反応した。テンプレートな展開。まさにラブコメのシナリオ通りとはこのことだろう。
「あっ、いや……オレは、そのぉ~…………」
不良からいきなり話かけられるとは思ってもいなかったので、智也は返答できない。
「コイツと同じ格好? ……ってことはお前もコイツの仲間か!?」
不良さん達は基本的に、良いことには頭の回転が鈍いが、悪い意味での頭の回転は早いのはデフォなのだ。
「ちっ、仕方ねぇな……」智也はその女の子を守るように、不良と女の子との間に入ることにした。女の子は不良達に囲まれて余程怖かったのであろう、智也の背中に隠れ服をぎゅっと握りしめ目を瞑っている。
「コイツが何をしたかわからないけど、このへんで勘弁してくれませんか?」
智也は頭を下げ、謝罪をする。だが不良たちは、
「おめえ、コイツが何したか分かってねえなら部外者だろ! 邪魔すんな!!」
「(はい。まったくもってそのとおりです)」
不良とはいえ、さすがフィリスに通ってることはあります。案外に頭が良いらしい。智也は不安になり、何をしたのか聞いてみることにした。
「……こ、コイツ、何したんっすかね?」
智也は不良達の言い振りに、思わず原因を聞いてしまう。
「聞いてくれよ実はよぅ~、オレ達が止めてた自転車を『邪魔だから!』って蹴り倒しやがったんだよコイツわっ!! こっちはきちんと駐輪場に止めてんだぞ。お前ならさ、どう思うよ?」
不良達がコレが証拠だと言わんばかりに、倒れている複数の自転車を指差して、うんうんと頷いていた。
「お、お前そんなことしたのか?」
っと後ろにいる女の子に聞くと「うん!」力強くと頷かれれしまった。
「(そりゃ、不良さんじゃなくても怒るわなぁ。……ってか、ちゃんと止めてある自転車を蹴るなよな!)」
そしてこれはひじょ~うにマズイ状況である。だって不良さん達悪くない、こっち蹴り倒した。どう考えてもこっちが悪いよな。
「だから! さっさとソイツを渡せってんだ!!」
「そ、それとコレとは話が違うだろっ!?」
智也はそう苦し紛れの言い訳をするのだが、
「…………どう違うんだ?」
不良さん達に冷静に正論を返されしまい、智也はもはや反論できなかった。
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