第46話 『……ですわ』を使うなら計画的に。
「「「…………」」」
3人の時間が止まり、沈黙が世界を制す。そして時は遅れを取り戻すかのように時は慌しく動き出した。
「き、きさま~! ワシの嫁のみやびちゃんにナニをしておる!!」
「お、おじい様! ワタクシまだ嫁入り前ですわ!」
「わ~っ、ごめんなさいっ! ごめんなさいっ!」
主人公補正がかからない現実はこんなものなのです。
そして「お前はどこの馬の骨だ! 孫娘を無理矢理押し倒して!」っと杖を振り回しながら錯乱する大次郎の誤解を解くのにはとても苦労しました(むつみ後日談より)。
「むつみ先生に対してこれまでの非礼の数々、おじい様共々なんて謝罪をしていいのか……ですわ」
動揺からか、みやびは最後がなんだか中途半端なお嬢様言葉になってしまった。
「……ぷっ」
むつみが少し笑った。
まぁ確かにみやびのそれは変な日本語だったから仕方ないといえば、仕方なかった。
「わ、笑わないでくださいまし。ワタクシ真面目に謝罪してますのよ……ですわ」
また最後が以下略(笑)。
「ぷっくくっ、ごめんなさい。笑っちゃって……(ですわ)」
「(ま、また笑われてしまいましたわ。しかも最後の方はワタクシに聞こえるような小声で声真似をしましたわね! この方カワイイ見た目に寄らず少し意地悪な方なのね。でもなぜかしら、ワタクシそんな意地悪をされてるのにそれが心地よいと感じるのは……)」
それに泣いているよりも笑っているむつみの顔は可愛かった。だが、それをむつみに悟られないよう照れ隠しながら、
「ワタクシ、
「ですわ……じゃなかった。だってお姉さんカワイイんだもん♪」
「(い、今完全に言い直しましたわね! ……ってそれよりもワタクシの事をカワイイだなんておっしゃいませんでした!?)」
からかわれながらも、年上の自分をカワイイと言ってくれるむつみの言葉にさらに動揺してしまうみやびさん。
「(照)か、カワイイなどとそんなこと年下に社交辞令言われましても、ワタクシちっ~とも嬉しくないですわ! む、むしろ不愉快になりますわね!(照)」
みやびは精一杯の虚勢を張る。
「(ウソです。ほんとはすっごく嬉しいに決まってる。例えそれがお世辞だったとしても……)」
「ボクお姉さんのこと好きに……なりかけてるかも」
「っ~~~~~!?」
(こ、これは不意打ちにもほどがありますわ! しかもしかも先生はボクっ子!? そんなこと好意を持った殿方に言われましたらワタクシは……(照))
むつみの一言に深い意味はなかっただろう。たぶん友達として……そのくらいにしか意味はなかったはずだ。
だがしかし、みやびにはそんなこと関係なかった。
動揺を隠すように、また嬉しさを誤魔化すように何より自分自身に言い聞かせるように虚勢を張ってむつみの言葉をこう否定する。
「ご、ごほんっ。むつみ先生。ふ、深い意味はないとは言え初対面の女性にいきなり『好き』などと、軽々しく言わない方がいいですわよ! か、勘違いされてしまいますから!(照)」
みやびは胸が少しチクリッとしたが、冷静さを取り戻すほうが先決だった。
「なら……もしも今のが
「(~~~~~~っ!? そ、そ、それは一体どうゆう意味なのかしら? 深い意味が!?)」
みやびはむつみのその言葉に顔をさらに赤くした。
「なんて、ね♪ 少しからかいすぎたかな?」
っと軽い口調で右目でウインクされ、みやびの心はまたかき乱されてしまう。
「(この方は一体どれだけワタクシの心をかき乱せば済むのかしら!!)」
嬉しさ、戸惑い、からかわれていることへの憤り、それらの感情が混ざり合う。
そしてそれらすべてを誤魔化すべく、強引に話題を変える。
「そ、そういえば先生は、先ほどはなんで泣いてらしたのですか?」
「うっ……」
先ほどのことを思い出したのかむつみが言い詰まる。やっとのことでここからみやびのターンになるのだ。
「(うるうる)」
むつみは捨てられた子犬のように、涙ながらみやびをうるうると見つめた。
「(くっ! やはりこの方の泣き顔はカワイイですわね!)」
むつみの猛攻により、みやびのターン即終了(笑)
「実はその……」
「い、いえ、そんなことどうでもいいですわね! それよりも……」
っとまた自分のせいで泣かれてもアレなので話を遮る。
「ところでお姉さんは……」
「(またお姉さんですの? ……ああ、そういえばまだ自己紹介をしていませんでしたわね)」
色んなことがありすぎて、まだお互いに自己紹介すらしていな事にみやびは気づいた。
「ワタクシはお姉さんなどではなく、みやびですわ。
ちょっと傲慢なお嬢様風に、だけどやや照れながらみやびはそう自己紹介をした。
「じゃあ……みやびお姉ちゃん♪」
「ズキューン♪」
みやびは何者かに心臓を狙撃された。 いや、むつみの言葉に打ち抜かれたのだった。
トゥルルルッルットゥトゥ~トゥッ♪
みやびはレベルが上がりショタ属性を得た。だが、代わりとしてダメージ(鼻血による出血)により30ccの血液(HP)を失った。
みやびはショタ属性を全開にしつつも、こう反論した。
「そ、そのお姉ちゃんって言うのやめてくださいませんかむつみ先生! ワタクシ先生の『お姉ちゃん♪』になった覚えがありませんわ!」
本当は耳元でむつみに「みやびお姉ちゃん♪」とずっと言って欲しいくらいだったが、それはあまりにも危険すぎる。主に鼻血(HP)的な問題で(笑)。
むつみはお姉ちゃん呼びを禁止されてしまい、途端しゅんと落ち込んでいた。
そんなむつみを尻目にみやびはこう切り出す。
「せ、先生なら、別に私のことをみやびと呼び捨てで良いですわ。だって『作家』と『その担当』ですので遠慮はなし、ということでいかがでしょうか?」
「でもなんか呼び捨てだと……
「( か、考えもしなかったですわ! その発想は!?)」
確かに呼び捨てだと傍から見ると恋人に見えてしまうかもしれない。
「(むしろワタクシとしては好都合なのかも……)」
「う~ん……でも、やっぱりここは年上なんだから『みやびさん』って呼びますね♪」
その刹那一閃、みやびの心の声を遮りむつみはそう言った。ちょっとだけ、ほんのちょ~~っとだけ残念に思ったみやびさん。
「で、みやびさんに聞きたいことが……ってなんか怒ってる?」
「べ、別にわたくし怒っていませんわ!!」
いやいや、誰が見ても怒ってますがな。口調も。
「先生! それでなんですの?」
むつみの言葉を遮るように怒っているのを誤魔化してしまうみやび。
「え~っと、それで今日ここで打ち合わせって聞いたんだけど。その詳しい内容を聞いてなくて、ボクは具体にどうすれいいのかな?」
出逢いから小1時間かけてやっとで今日の本題となった。
「あっ、はい。そうでしたわね。それでは先生の今後の予定を具体的に……」
本来ならそれくらいなら電話かメールでもよかったのだが、みやびがむつみ本人と直接逢ってみたかったのだ。だから打ち合わせにかこつけたのだった。みやびはむつみの今の置かれている現状を詳しく説明した。
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