第38話 とりあえずウーロン茶で酔いましょうか♪

「この世のすべてを忘れよう……このポテチを1枚食べるごとに! (パリッ)」

「な~に『その日暮らしの嘆く頃に』の主人公の真似してるんですか先生? あっそれ美味しいですか? イカにも人参っぽい味、私にも1枚くださいよぉ~♪ う~ん……っぽい味・・・・ですね! あっでもこれならお酒と合うかも♪」


 みやびさんは空いたグラスにこぽこぽこぽ~っとウーロン茶を注ぐ。


「ぷはぁ~、やっぱりポテチにはウーロン茶に限りますよねぇ~♪」


 みやびさんはグラス1杯のウーロン茶を一気飲み。みやびさんは車だからお酒を飲まないのではない。正確にはむつみ同様にお酒が飲めない体質なのだ。その代わりに、


「せんせぇ~♪ 飲んでますかぁ~ウーロン茶! やっぱおとこならウーロン茶ですよね♪」


 みやびさん、あなたは『女性』なのです。


「み、みやびさん? その……もしかしなくてもウーロン茶で酔ってるの?」


 聞いてはいけないことを聞いてしまう、むつみさん。


「よ、酔ってなんかいませんぉ~♪ ただウーロン茶を飲んでお酒を飲んだみたく、ちょぉ~っと気持ちよくなってるだけですぅ、えへへへっ~~♪」


 世間一般ではそれを酔っ払うというのです。どうゆう原理か、みやびはウーロン茶で酔う体質らしい……まぁ薄々は気づいていたけどね。


 むつみは先ほど完成したばかりの作品(キミキス)のヒロイン葵のことを思い出していた。葵も主人公と一緒に寮の部屋でウーロン茶を飲み、酔っ払って散々からんだ挙句に寝てしまい、主人公である智也に寝ながらファーストキスを奪われるシーンがあったのだ。


「せんせぇ~、せんせぇ~ってば♪ にゃ~んでそんなに~、二人になったり三人に増えてるんですかぁ~? あ~っもしかして、せんせぇ~は忍術使えたりします? 忍術ぅ~っ! せんせぇ~は伊賀派ですか? 甲賀派なんですか? にんにん♪」


 指を上下に繋げにんにんと忍者っぽい真似をするみやびさん。正直むつみさんには伊賀でも甲賀でも違いがわからないので、どちらでもよかった……もしかすると大穴で風魔派かもしれません(笑)


「せんせぇ~、せんせぇ~ってばぁ~♪」


 みやびはむつみに体を預けるように寄りかかり、首に腕をかけ密着する。どう対応していいかわからずに困惑するむつみ。あと酔っていて力加減ができないのかちょっと痛い。でもみやびの大きな胸がむつみの胸に当たっていて『気持ちいい』と思ってしまうイケないむつみさん。これが噂に聞く天国と地獄ってやつのなのかっと、むつみそれを肌で直接実感していた。


「せんせぇ~、せんせぇ~は偉い! 作家としての才能もないのに作家になるなんて。ほんと惚れ直しちゃいますよぉ~♪ にゃ~んて、ね♪」

「えっ!? ぼ、ボクって才能ないの!?!?」


 わりとショックなことを聞かされ、しゅんっと捨てられた子犬のように落ち込んでしまうむつみさん。


「う~ん~? どうしたんですかぁ~しぇんしぇ~? そんにゃに落ち込んでぇ~?」

「今みやびさんがボクのこと作家として才能ないって(泣)」


 戦後最大級にしょんぼりとするむつみさん。


「だ、だれだ~!! 私の大切なせんせぇ~に、才能がないなんていったのわ~。わったしが成敗してくれるゅ~♪」

「(あなた、あなたです、みやびさん)」


 みやびは、ありもしない刀の代わりにポッキーを1本持ち、両手で握りながらザシュザシュ……っと口で言いながら、むつみ目がけて十字斬りの真似をする。もうめちゃくちゃ。呂律が回ってない。言ってることが前後ばらばら。喜怒哀楽が激しすぎ。


「(あとボクのことさりげなくさっき2回も斬ったよね?)」


 もう完全に収拾がつきませんでした。

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