第十八話(一)
暑い暑いを繰返し
打って変わって
それでも吾輩に至っては暑い暑いよりはるかにマシなので素知らぬ顔で進んで行く。
松明の
これは
「全く……こいつは
油断なく構え身を寄せる四人を尻目に
やいのやいの
さて吾輩が
その方法を云うとまず庭へ出て、一匹の蟷螂をさがし出す。時候がいいと一匹や二匹見付け出すのは雑作もない。
「マダナイさんはどちらに……? ああ、何という事!」
「
さて見付け出した蟷螂君の
「どうするおつもりでしょうか、勇者猫様とは云えど力量の差は歴然です」
「さすがに
振り上げた鎌首を右の前足でちょっと参る。振り上げた首は軟かいからぐにゃり横へ曲る。この時の蟷螂君の表情がすこぶる興味を添える。おやと云う思い入れが充分ある。
「ギ――ギギギッ?」
ところを
「効いているようじゃないか。それに素早い。さすが勇者マダナイを継ぐ御猫様と云うもの」
「いや、苦戦しているようですね、只の猫の爪
おやおや、随分と手ごわいではあるまいか。ただ大なるだけでなく羽根が普通
が、
「ギイッ!」
――そう、この時君の長い首は必ず後ろに向き直る。
少々大なるこの蟷螂君は吾輩目掛けて突進すると極めたらしい。このように
「当たった!」トジュロー君が喝采する。
だがしかし、吾輩の思惑とは異なり蟷螂君びくともせん、びくともせんが吾輩の振舞いに大に
「彼奴め、飛んで逃げようと云う気か?」
「いいや、御猫様の方が素早いぞ!」
こうなると少々気の毒な感はあるが仕方がない。
「はは……。只一疋ぎりで打ち
「こりゃ
何と手応えの無い。常なれば、こっちの手で突っ付いて、飛び上がるところをまた抑えつけ、すっかりいやになってから、最後の手段としてむしゃむしゃ食ってしまうのだが――。
ついでだから蟷螂を食った事のない人に話しておくが、蟷螂は滋養分も
この少々大なる蟷螂君には気の毒だが、こいつは
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