第十三話(一)
常々忍び込むのが
「よくぞ参った」
吾輩は
「トジュローよ、これが
「いかにも。勇者猫マダナイと伴に我等も参ります」
「なんと!」
さすがの鼻王もこの
「結構だ実に結構! 時にその
「この私めは魔術遣いのコルドーに御座います」
「私めは吟遊詩人のウインドと申すもの」
「宜しい」交わる交わる名乗りを挙げると鼻王はもっともらしく
調子者のウインドは
「ははあ。ではゴルトン王、あちらにおわす見眼麗しい御婦人はどなた様でしょうか?」
「なに誰だと?」やれあちらだこちらだと眼に付くものを眼に付く限り誉めそやすウインドがひと際高い
「何でもございませんわ、別にどうだって構やしないじゃありませんか」
奥方様と声がよく似ているところをもって推すと、これが即ち鼻王家の御令嬢たる代物だろう。
「いやはや、親の
「
「さりとて
「
「よく云う。
「アハハハ、
そろそろ痺れを切らしたのかトジュロー君が苛々と帯剣を打鳴らしたので、察しの良いコルドーが隣のウインドに
「ではゴルトン王、そろそろ
「まあ待て待てトジュロー、そう
鼻王は
「このまま送り出してしまっては、勇者様御一行の華々しい門出に際して何事もせんかった
「ではそのように致します」
「おい、勇者御一行を部屋に案内せい」鼻王の合図に四五名の従者が姿を現す。「宴は明日執り行う。それまで英気を養うと
吾等は狐につままれた思いのまま豪奢な毛足の長い紅白
「どういうことでしょうかこれは」そわそわとコルドーが云う。
「どうもこうもあるまいよ」それに応じたのはトジュロー君である。「王め、あれほど人を慌てさせておきながら今度は穏やかに待てと云う。ほとほと呆れて物が云えん」
「まあまあ。御歓待いただけると云うのですから
「
「御婦人に野郎は酷いわ」とクシュンが非難するとトジュロー君はやれやれと嘆息する。
しかし鼻王が吾等一行を歓待したいと申すのは何よりの
さて吾輩は、騒々しい人間共を尻目に邸内の見廻りと極め込むか。
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