第十三話(二)
「
やがて年老いた胡麻塩頭の従者長が恐縮至極の体で額の汗を
またトン、トントンと叩く音があり若い
「おや御前いつ
「よいかエギスタ、明日は勇者一行を歓待する宴を執り行うでな。御前も
「勝手ですわ! それにいつでも粗相するような云い
「勝手も何ももう極めた事だ。王族たるもの常に民の為に尽くさねばならぬ」
「王は御父様じゃありませんか。妾しには関わりござんせん」
「御前は儂の娘で王女だぞ。無関係な事なかろう」
「嫌ですよ、知りません」と令嬢はご立腹である。「明日は馬で遠出しますから」
「駄目だ、ならん」と鼻王がにべもなく言捨てると、腕組したままの令嬢は言ここに至って感に堪えざるもののごとく、
人間を研究するには何か波瀾がある時を
令嬢の紅涙のごときはまさしくその現象の一つである。かくのごとく不可思議、不可測の心を有している令嬢も、従者長や女中と話をしているうちはさほどとも思わなかったが、鼻王に一方的な
「妾しは不自由ですわ……。市井の民共が何と噂しているか知っておりまして? 天下の
「そんな
「それが不自由だってんですよ。妾しが手にするものは皆御父様が恵んでくれたものじゃござんせんか。妾しが自分の手で手に入れたものなんてありゃしない。何にも」
「どこに違いがあるのかさっぱりだ」
「分らなきゃもう結構です」
首を捻る鼻王の眼前で、令嬢は
吾輩は例の忍び足で再び扉の隙間から廊下へ出て、急いで主人の部屋に帰る。いささか
帰って見ると主人は
クシュンは真っ赤になって恥入るばかり。やれやれである。
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