第十七話(二)
元来人間共は王様とか貴族豪族とかいうと非常に恐縮するものであるが、妙な事には怪物化物の
いくら先方が王様でも、貴族豪族でも、自分が世話になる見込のないと思い切った人の利害には極めて無頓着なものである。それだから他の方面の事には極めて
「まだ気付かれてませんね」と岩を背にしたコルドーは声を
「
「とは云えこの先身を隠す場所なんてありゃしませんよ。どうします」
「ううむ。今考えてる所だから待ちたまえよ」とトジュロー君
先と同じ理窟で
「大鬼は人を食ってしまうと聞きましたよ」とクシュンは思わず身震いする。
「人どころで済めば好いが、連中は馬でも牛でも丸ごとなまで食ってしまうな。無論猫もさ」
「ああ、怖ろしいこと」クシュンはたちまち神経性胃弱を起して
下等な人間のうちには猫を食うような野蛮人がある由はかねて伝聞したが、吾輩が
「私が弓で射かけましょう」ウインドは王より授かりし長弓「
ウインド、
さすがは一流作長弓「竜舌弓」、
「う」瞬間クシュンは
一方、吾輩は一部始終を逃す事なく黙してじっと見届ける。
この世界に住めばさまざま事を知る、事を知るは嬉しいが日に日に危険が多くて、日に日に油断がならなくなる。
普通の人は戦争とさえ云えば
連想は当人の随意だがそれ以外の戦争はないものと心得るのは不都合だ。
して見ると
「その者達をどうするのです」トジュロー君が何やら始めたのでクシュンは問う。
「者じゃない。大鬼の化物さ」見るととトジュロー君は命の
「そいつはあまりにも
「勝手にやっているだけの事さ」
皮肉交りの
「一番愚なのは人間でも怪物化物でもない。互いを憎み争い合う心なのだ」
四人と一疋は誰れからと云わぬ内に無言で祈を捧げた。
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