第十話(二)
薄暗がりの闇の奥でトントンと
しばらくは足音もしない――いや、またトントンと中った。
「……今何か仰った、トジュロー?」
「しっ。今回は聞き間違いじゃない。何か
トジュロー君は手の内の剣を握り直して吾輩を見おった。吾輩はしたりと
「やれやれ。どうやら勇者猫様はとうにお
「来ます」とコルドーが眼前に杖を構え魔法術を唱える準備を始める。
「ス、スライムじゃないか。これはいかん」
ウインドの
「あ、危ないですよ、マダナイさん!」
クシュンが何やら云うておったが、吾輩は構わず
「おいおいおい。猫様は一体何をしようと云う気だ。相手はスライムだぞ」
「どう仕留めるか思案されているのでしょう。そうですとも」とクシュンは応じる。
吾輩はこの刹那に猫ながら一の真理を感得した。「得難き機会はすべての動物をして、好まざる事をも
ところが誰も来ない、いくらしていても誰も来ない。早く食わぬか食わぬかと催促されるような心持がする。吾輩は
「なんと! 噛み付いたぞ」「しかし相手が悪い。溶かされちまいませんか」
このくらい力を込めて食い付いたのだから、大抵なものなら噛み切れる訳だが、驚いた! もうよかろうと思って歯を引こうとすると引けない。もう
「苦戦しているようです」「
この
「あの……助けに行った方が善くありませんかね」「いや、来るなと仰っているようですよ」
ようやくの事これは前足の助けを借りて餅を払い落すに限ると考え付いた。まず右の方をあげて口の周囲を
刹那第三の真理が
「危きに臨めば平常なし
――吾天祐を
「
迷うことなく吾輩が唱えると、あの夜と同じくただならぬ物音を立てて白光が炸裂した。
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