第十一話(一)
「いやあまさか本当に
「物理的攻撃が効かない厄介な魔物ですから。
「それをたった
ようやっと薄暗りから出られたと安堵する吾輩を尻目に、トジュロー君コルドーウインド共々そうしてみんな申し合せたようにげらげら笑っている。腹が立つ、まだ苦しくて
「本当に御立派でしたねマダナイさん。こうして出逢えたのも偉大なるメッツナーのお導き。さあ遠慮なさらずお休みになってください。私が御褒美に撫でてあげましょうね」
ようやく笑いがやみそうになった所でクシュンがそう云ったものだから、
しかし先刻は前歯がみんな折れるかと思った。どうも痛いの痛くないのって、群青餅の中へ堅く食い込んでいる歯を情け容赦もなく引張ったのだからたまらない。吾輩が「すべての安楽は困苦を通過せざるべからず」と
それにしても恐るべきは
いよいよ覚悟を
「で、どうするのトジュロー、王様に報告されるのでしょう」
「実際に見てしまったからね。云わん訳にもいかんだろう」とトジュロー君。「心配かい?」
「少し」
「悪いようにはせんと思う」
「だと良いのだけれど」
「そうそう。君達は――そのう――アレに報告する気かね?」
「ラビリス嬢でしたか」コルドーは無事思い出し
「アハハハ、
生真面目なコルドーとは対象的にウインドが軽薄様相どおりの
「君はアレを
「それでも私よりラビリスの方が評判が
クシュンの返答が余程面白くなかったのか、トジュロー君はなお不満な
「アレは夫を
「何ひどいものか、あんなのは婦人じゃない、
「愚人かは存じませんがね、なかなかえら者ですよ、大分引き
結局一人も味方にならぬと分かってトジュロー君は
吾輩はおとなしく四人の話しを順番に聞いていたがおかしくも悲しくもなかった。人間というものは時間を潰すために
しかしトジュロー君だ。彼はなぜこの場に
ようやっと一行は元来た道を辿り何事も無くゴルジアスターゼ城へと到着した。
「じゃあ僕はゴルトン王の所に参るとするよ、クシュン。後で話して聞かせようか」
「そうしていただけると幸いです。気掛かりですもの」
「うむ。そうしよう」
トジュロー君は改めてコルドーウインドの
「本当に助かったよ。君等はこのままクシュンと伴だって神官宿に行くかね。いや、違うな。アレは城の方で第二読本とやらを読み
トジュロー君の思いも寄らぬ申し出に両人は顔を見合わせる。
やがておずおずとコルドーから遠慮がちにこう申し述べた。
「そこまでお手を
「ラビリス嬢にはお逢いしたくないでしょうしなアハハハ」
「
トジュロー君はウインドの軽口にうんざりした顔付で肩を
「君等さえ良ければまた冒険行を共にしよう。これからも宜しく頼むよ」
「もちろんですとも」「ええ、またいずれ」
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