第十六話(二)
吾輩は少々休養を要する。
休養は万物の
「何だか元気がありませんね、マダナイさん。どうしたのです?」
「
火を焚き
やがて
「城での宴の夜が懐かしまれるな。つい昨日の事だと云うのに」
「そうですね。当分は質素で済ませなければならないわね」とクシュンが笑って応じる。
「宴の夜と云えば君達、相当に楽しんでいた
「ええ、まあ」とコルドーは言葉少なに云う。
「まあ何だね、吾が友。その様な
「
「大層評判だったろう」とウインドがからかい出す。「令嬢も
コルドーはまるで相手にせず鉄鍋の中身をもう一
「うつせみの世を、うつつに住めば、
住みうからまし、むかしも今も。
うつくしき恋、うつす鏡に、
色やうつろう、朝な夕なに」
「よしてくれ、みっともない」とコルドーはたちまち柳眉を
「いやいや。
そこでトジュロー君、真正面から
「結局御令嬢の
途端コルドーとウインドは面喰った顔をして互いを見つめ合った。
無言である。
「
答のない
「もう御存じなのかと」
「判然としないものだから窺っている。さては君か、ウインド」
それでもウインド貝の如く口を閉ざして答えない。
トジュロー君が痺れを切らす前にようやっと口を開いたのはなんとコルドーであった。
「
「それは……他言をしないと云う約束かね」
「ええ」とコルドーは黒羽色の
「ここには僕等しかおらんじゃないか。まだ駄目か」とトジュロー君
「余計な遠慮ならせんでくれよ、吾が友。このとおり僕なら気にも
ウインドがいやに真面目腐った顔付で云うと、コルドーは深々と溜息を吐いた。
「何を聞きたいのです」
「特段何と云う事も無いが……」途端、トジュロー君はしどろもどろになる。よもや恋う両人を裂いてくれと鼻王より乞われたとも言い
人間世界を通じて行われる愛の法則の第一条にはこうあるそうだ。――自己の利益になる間は、すべからく人を愛すべし。
しかしこの愛たるすこぶる強い執着心で、もし一たび、
少しは考えて見るがいい。といったところで人間共はなかなか考える
――やれやれ。
吾輩は
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