第十九話(一)
吾輩は首を巡らしトジュロー君の方を見て顔色を
やがてじくじく湿った
「やって来おったな、
静寂の薄氷を粉砕して
「御前が魔族を統べる魔王であろうか」一同を代表しトジュロー君が声を張り上げる。
「答えずとも
だが見れども姿は無い。いずこなりやと右へ
「吾等は勇者一行なり。この世に災いを成す者よ、
「
「なるものか。
魔王ボッティヌスは判然たる直線流の言葉使いをもって告白す。トジュロー君は少し気持を悪くしたと見えて、いつになく
「ハハハなかなか自信が強い人間である、実に愉快哉」と魔王ボッティヌスは
トジュロー君はすぐには答えず、一行中
「どうだウインド、
「まだですね。声からしてかなり近い。近いは近いがどうにも見当たらんのです」
「魔法的力に
一旦
「魔王よ。この世の全てを手に入れ何とする、何を望む?」
「何も」魔王の返答は
「それは無邪気で愉快で
「何と!」姿なき魔王の声は
不思議な事にはここまでトジュロー君の口から勇者猫たる吾輩の事は一言半句も出ない。吾輩の気付かぬ内に評判記はすんだものか、すでに落第と事が極って念頭にないものか、または最後の頼みと
「貴様等はこの世の全てを収めたいとは思わんのか?」
魔王の
「思わんさ」
「何故か」
するとこうだ。
「
これはコルドーである。
「僕はですな、やっぱり舞跳ぶ蝶を無邪気に追うのが
これはウインドである。
「この世は皆のものです。
これはクシュンである。
「僕はこの僕自身と
これはトジュロー君であった。
そして最後に吾輩が、にゃあ、と一際高く鳴き上げる。
「愚か哉小き者共よ、
永き沈黙を引破って天地を揺るがせ魔王ボッティヌスは無感情に言い放つ。
「
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