第035話 ニシカ・モモタというシオリを超える腹黒

 シオリは、そのまま住民を誘導する。

「はぁーい! こっちですよ! おいしい料理がありますよ!」

 住民と言っても、ホームレスたちだ。ニシカ・モモタ曰く『攫ってもアシが付きにくい』のだそうだ。

「なんだなんだ」

「飯をおごってくれるんだそうだ」

「なんとお優しい」

「ありがたや」

 シオリ。恐怖におびえた顔をしちゃだめだ。……逃げてはいけない。

 というか、シオリにも良心ってものがあったのか……、いや、ニシカのどクズっぷりがそう見せているだけか……。


「さあさあ、みなさん! こっちですよ!」

 サ〇エさんのエンディングのように、シオリがホームレスたちを引率する。研究所は静まり返った。

 後ろから拍手が聞こえる。ぱちぱち。

「ありがとう! シオリちゃん♡」

「い、いや、このくらいなんてことないぜ、へへ」

「じゃあ、ボルシチでも食べましょうか! 外は寒いですものねー、吹雪が吹いてますもの!」

「あ、あ、あはは」

 シオリには、鍋をかき混ぜるニシカの姿が、コフコッフに伝わる昔話の魔女に見えた。まあ、実際に魔術師だから魔女なんだけど←


「いただきまーす♡」

「い、いただきます……」

「あむあむ」

「ニシカ……? これ……」

「何の肉かは聞かない方がいいんじゃないかしら?」

「……この研究所、聞かない方がいいこと多すぎだろ(白目)」

「あと、そこの鉄の扉と赤い扉と、五階のホールと物置の隠し扉と」

「全部知らない方がいいんですねワカリマシタ」

 一度そのうちの一つを開けて、描写できないようなひどい目に遭ったシオリは、この忠告を固く守ることにした。

「ところでニシカ?」

「ん? 何?」

「学会には最近?」

「うーん、あんまり行ってないわねぇ……。国の軍事研究の方が忙しいもの。私としては、もっといろんなところを旅したいのだけれど……!」

「ラビアン首長国連邦とか、ヤマト連邦とか?」

「それもだけど、もっと未開拓の……もっと面白いところがあるのよ?」

「え、……?」

「『新大陸』よ……!」

「うーん。やめといたほうがいいんじゃね?」


 説明しようッ! この世界は、海に大陸が浮かんでいる構成なのだが、実際の所は、この海は大きな塩湖でありッ、その塩湖をさらに大きな大陸が囲っているのである! 人々はこの巨大な大陸を新大陸と呼んでおり、いまだに何があるのかも不明である。そのため、人々は世界の本当の果てを見たことは無く、また、知ることもなかった。人類や獣人、エルフやその他の種族は、内側の大陸が新大陸と地続きであったときに来たと言われている。


「止めるのは簡単よ。でも、この私の探究心がうずいてたまらないの!」

「まあ、止めないけどさ。どうしたら魔王一味を助けられる?」

「ズバリ! カチコミね!」

「……、いや、大雑把すぎないか?」

「この天才学者、ニシカ・モモタが言うんですもの、間違いないわ!」

「いや、予想はしてたけどさ」

 なんだかんだで国民が洗脳されているこのディストピアからまともに一味を助け出すには戦闘しかない。

「ニシカ……?」

「頑張る! 頑張るわ! さーて、研究しないと!」

 ニシカは、注射器に謎の液体を入れて、ピュッと出した。そのまま鉄の扉の中に入っていく。

「ダイジョーブ。任しといてね! 絶対にこの国をぶっ壊して見せるからね♡」

「実際にできかねんけどな……」


「うーん」

 僕は考え事をしていた。仮にもこの国が落とせれば、世界征服は目前だ。実際にコフコッフは世界有数の軍事大国であるし、土地も広い。人口もある。

「……ッ」

「ルーナさん? さっきから何を?」

「何って? 脱皮だ」

「いや、だからって素っ裸になるのはどうかと思うよ?」

 ルーナさんも男か女(雄か雌?)かわからないけど、体つきは女に近い。人間に近い素肌に鱗が混じっている。竜人、爬虫類の獣人であるため、脱皮をするのだ。

「よいしょ」

 ぺりぺりぺり。鱗や皮膚がはがれる音がする。

「うっへー……」

 なんか……キモイ。ごめんルーナさん。キモイッ!

 しかし、リンさんはそれを皿で受け止めている。

「リンさん? 何を?」

「これをお酒に漬けるのです!(キリッ)」

「いや、やめて!? 蛇みたいな感じで安易に漬けないで!?」

「見た目はグロテスクですけど、飲むと元気出るんですよ?」

「そう言うことじゃないから! 倫理観の問題だからッ!」

 オトカは、相変わらずリジコとゲームに興じている。

「よし、ここは選択肢Aの『何でもない』だ!」

「違うよリジコ、分かってないなー? こういうツンデレキャラは、ちょっとまっすぐな感じで話した方が落ちやすいんだって! こうやって、あんたのためじゃないって口で言ってても、クッキーが恋心を証明してるよ! 答えはCの『おいしかった!』だよ!」

「なるほど! このルートに突入するには、この選択肢が重要だったのか!」

「よし!」

 ピロン。

「よし!」

 ピロン。

「「いっけえええええええ!」」

 ピロン。

「「きたああああああ本命のエ〇チシーンだ!」」

 ねぇ、なんでここエロゲーまで置いてあるの?

 絶対オトカが選んだやつだよね?

「ああああああああああ、愛を交わしながら包丁で刺されたッ!」

 リジコが叫ぶ。ヤンデレものかよ。


 to be continued……

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