第009話 おらァッ! 出陣(出国)じゃああああああああ!

 僕は、シオリの方に向かっていた。市場には今日も人がたくさんにぎわっている。

「やあ、シオリ。気分はどうだ?」

「最悪」

「デスヨネー」

「あんたはどう? 俺にかまってる暇ないと思うけど」

「なッ、何を言うッ、次期魔王がこれくらいで恐れてるわけには……」

「いやwww足がガクガク震えてるんですけどww」

「これは武者震いだ!」

「いやー、いい天気だねー」

「ちくせう」

「そういや、他の三人は?」

「あー、なんかいろいろやってる。あと、ここらへんで牛を競り落とす」

「え????? まあ、いいけど」

「くそッ、金がッ……」

 お金がない。これじゃ金欠に逆戻りだ。

「ふっふっふ、十一で貸してあげようか?」

「闇金かよ……」

「えーと、買い物手伝って。鉱石とかをいろいろ転移させる準備しないといけないから」

「たしか、昼頃に飛行船だったよな?」

「うん、それでインスパイア帝国で着陸して、その後、私らだけが密航よ」

「え? 密航?????」

 まてまてまてまて。そんな話聞いてないぞ?

「どういうことだ!? 国家が支援してくれるんじゃなかったのか?」

「あー、それなんだけど、あの大臣がドタキャンしたんだわ。この件はうやむやにして、自分の給料上げることに専念するみたいね」

「ちくしょうめがああああああああああ!」

 あのクソ大臣ッ、帰ってきたらボッコボコにしてやる……きっと。

「と、とにかく、入国したら武力を背景に直談判だな?」

「うん、開国迫るよ」

「躊躇しないなこいつマジでサイコパスだわ」

「世界征服の脚掛けだと思えばダイジョブよ」

 うーん。確かにそうか。

「じゃあ、ここらへんで朝飯たーいむ!」

「わー! 食べるですの!」

 ミカエラ、どこから湧いてきた!?

「駆け付けたですの!」

「す、すごい食欲」

 シオリは、市場にある共用キッチンにお金を払い、一気に食材を持ち込む。

「テッテレー! シオリの三分クッキング!」

「わーいですわ!」

「嫌な予感しかしない」

 またどこからか聞いたことのある音楽が流れてきた。もう気にならなくなったな……。

「あれ? そういえばリンさんは?」

「ああ、原生バッタ捕まえに行ったよ。もうすぐ帰ってくるはず」

 あのバッタ、ものすごい味(語彙力)だったけど、ホントに料理に入れて大丈夫なんだろうな!?

「さあさあ、まずはブシドーウオ(魚の一種。オス同士が決闘をすることで知られる)を三枚におろします」

「うん。三枚どころかミンチになってるね」

「そして、火であぶり、たたきにします」

「うん。見事に炭になったね」

「これを、鍋にドカーン! スパイスをドーン! バーン! ごトーン!」

「ああ(あきらめ)」

 ミカエラは喜んでいる。

「すごいですの! シオリおねーちゃん! 絶妙なバランスですの!」

「ふへへへぐへっへへ、ミカエラたん、もっと褒めてもいいのよ? そのおみ足で私の顔を挟んでくれれば、もっとおいしく作っちゃうよ」

 ダメだこいつ、ロリコンだった。危ない。顔がアヘってる。

「よしよし、ミカエラたんが上手にトべるように、キノコをたっぷり入れちゃうぞー!」

「やっぱり危ないお薬なんですがそれは」

「……貴様は知りすぎた」

「粛清される!?」

「さあさあ! 料理もラストスパート! 体力増加の効果がある、クレナイバサミ(蟹の一種)のむき身をスープに入れて! 油とスパイスを垂らしまーす!」

「お、まともな料理してる」

「そこに捌いたそこら辺のイカを入れて! 貝の身も入れて! あそれ! あそれ!」

「調子乗ってるな」

 そんなところに、リンさんが到着した。

「原生バッタ捕まえてきましたー!」

「おー、リンさんナイス! これを入れまーす!」

「あ、バッタが跳ねてる。うわー、残酷ですぅ」

「これも食物連鎖なのだ」

 ミカエラが手を合わせる。

「バッタさん。いただきます」

「ぐへへいい子だねミカエラたん。私もミカエラたんをイタダキマス(意味深)したいな」

 うーん。シオリって思ったよりヤバいな。

「ミカエラちゃん、このお姉さん危ないから、ちょっと離れてよっか」

「ふぇー……」

 そして、料理にあるまじきドカーンという爆発音とともに、何かができた。

「完成ッ! シオリ特製スタミナパエリアッ!」

「ほーいきたよー」

 オトカも到着したようだ。

「ん? この匂い……媚〇入れた?」

「〇薬というか、怪しいキノコは入れたかな……(目逸らし)」

 おい、なおさらヤバいやつじゃねぇか。てか、オトカ。なんで媚〇の匂いをかぎ分けられるんだ?

「こ、これ本当に食べて大丈夫なんでしょうか(汗)」

 リンさん、食べちゃだめだ。ダメ絶対。

「いただきますですの!」

「ミカエラ!?」

「あむあむもぐもぐ! おいちーですの!」

 あーあ、どうなってもおかしくないぞこりゃ。 


 空港にて。

「アヒャ! アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」

 うん、ミカエラがおかしくなった。

「シオリ、どうしてくれるんだ?」

「ど、どうもこうも……(目逸らし)」

「とりあえず、このまま連れていくわけにはいかないから、個室取らないといけない……」

 オトカも、横目で見ながら相槌を打つ。

「個室部屋なら、料金が二倍になるよ」

「ぐッ。出費が痛い」

「あひゃはひはひはひはひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ……」

 シオリ曰く、ちょっとトんだ後に、体力強化の効果が付くのだとか。なんだその欠陥料理。

「ふへふえへへへへへへ、なんか気持ちいいですの! ショットガンぶっぱなしたくなってきたdeathの!」

 

 この後、さんざん射撃された。痛かった(涙)。


 僕たちの冒険はこれからだ(まだ続きます)!



 to be continued……

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