第002話 シオリ・ロータスリーブズとかいう金の亡者

 この世界は広い。

 現在僕がいる、Ritter Kingdomリッター王国(旧グレープフルーツ王国)の他にも、社会主義の発祥地、Kovkov Republicコフコッフ社会主義人民共和国や、極東の大国、Yamato Commonwealthヤマト連邦など、たくさんの国と地方がある。この世界は海で囲まれているらしいが、その広さは未だ未知数。海の向こうに何があるのかは、まだよくわかっていないそうだ。


 そんな世界全土で通用する職業。そして、今まさに僕が就こうとしている職業が、『冒険者』である。

 冒険者とは、総合的な職業で、学者、狩猟者、商人など、ありとあらゆる職業を統括したようなものだ。その名の通り、少々危険な冒険をすることが業務なのだ。まあ、僕にかかればそんなものどうってことは無いが。


 冒険者は、世界中のほとんどの国で採用されているシステムだ。冒険者の協会が全世界にあり、その協会が各地で『ギルド』(専門的な職業組織)を運営している。冒険者の実際の仕事は様々。探偵業のようなものから、洞窟や遺跡に巣食う大型モンスターの討伐まで、さまざまだ。

 前者は報酬が少ないがやりやすく、後者は下手をすれば命の危険はあるものの報酬が高い。当たり前だ。もちろん魔王の息子であるエリートの僕は(地の文省略)。


 依頼人がギルドに持ち込んでくる依頼(クエスト)を、冒険者が引き受け解決する。単純な構図だが、実際これでかなり設けることができる。


「えーと。一〇八番の方」

「はいッ! はいはいはいはいはいはーーーーーーーーいッ!」

「ッ? Kei Lemonadeケイ・レモネードさんどうぞー」

「ふっふっふっふっふ……ふはははははは! やっとッ! やっと十分な金が手に入るぞ!」

「何気持ち悪く笑ってるんですか、さっさとこっち来て」

「ぶ、無礼なッ!」

 しかし、少々度が過ぎた興奮具合だったのは事実だ。少し自制しよう。

「で、何をすればいいんだ?」

「えーと、とりあえず個人情報を入力、筆記してください。こっちがプロフィール。こっちが協会の保険制度の書類。こっちが……」

「ああもう、いい! とりあえず全部書くんだな!?」

「……」

 ふん、変なやつだという目で睨んでも無駄だ! 上に立つ支配者は、少々変なものなのだッッッッッ!


「吸血鬼……ですk」

「そうだッ! どうだ、恐れ入ったか!」

「へー」

「くっ……!」

 どいつもこいつも平民扱いしやがって……これでも一七歳だけど……一七歳だけども!

「じゃあ、とりあえず魔法をいくつか見せてもらった後に、等級を測定する機械を使ってもよろしいですか?」

「ふッ!」


僕は、少し光を出す魔法やらなんやら、指示されたものを出した後に、バカでかい水晶のようなものの前に立てと言われた。

「この水晶の反応を測定します。とりあえず、自分の得意な魔法を、魔力を注ぎつつ出してみてください」

「よしッ!」

 見ろ、これがな〇う主人公もびっくりのチート級魔法だッ!

 

 当たり前の如く、水晶玉は爆散した。

 パリ―ン。パリパリパリ。


「「「「おお、おおおおおおおおおおおおおお!?」」」」

「ふははははははははは見たかッ!? みたかッ!? これが僕の力だ、恐れおののけッ! ひれ伏せッ!(小物感)」

 ……勝った……計画通り(ニヤリ)。

 水晶玉が爆散するほどの許容量を超えた魔力というのは、前例がほとんどない。つまりは……。

 現時点での初期で得られる最高等級。『白金プラチナ級』は間違いないッッ!


 数分後。

「はい、検査の結果が出ました。とりあえず……」

「とりあえず!?」

「……五級ですね」

「は……はああああああああああああああああああああああああああああッ!?」

 五、五、五級といえばッ! 最低の等級じゃないか!? そんなもんで受けられるクエストなんて、浮気調査ぐらいのもんだぞなめとんのかゴルァッ!?

 僕は、事務員の首根っこを掴んで、揺さぶる。僕の金髪が乱れるが、気にしない気にしない。

「そ、そ、そんなこと言われても、『一八歳未満は、五級からしか始められないって』……」

「にっくき資本主義陣営がああああああああああああ!」

 そんなとき、後ろから誰かが歩いてきた。声がかかる。

「何かあったの? そこ」

「あ、あ、『怪猫かいびょうのシオリ』さんッ! 助けて! 変な吸血鬼に襲われてるんですぅうっ!」

「誰が『変な吸血鬼』じゃもういっぺん言ってみぃ、ミイラにするぞ!」

 すると、そこにいた人影が僕の前に出てきた。

「あんたねー、しょうがないじゃない、規則で決まってんだからー……。えーと、一七?」

 猫の獣人だ。

 銀の眼にカラフルな猫耳、尻尾。チャラそう()。

「ぬおおおおおおおおシオリとか言ったか! なんとかしろ! このままだと白金に上がれないッ!」

「だから、無理だっての気づけよ」

「どいつもこいつもおおおおおおおおッ!」

 この際、魔術で脅迫してやる、どうせ魔王になるんだ、これくらいはいいだろう←

Anima……」

 ふっふっふっふ、父親から教えてもらった暗黒魔法だ、ここら一帯を消しとばしてやる……しかし。

 猫獣人のシオリは、驚くみんなとは違い、けだるそうに突っ立っていた。

「あのさー、一応言っとくけど、私その白金級だよ? 勝負しちゃっていいわけ?」

「何を言う! 前魔王から英才教育を受けた僕が負けるわけg」


「ぐはぁ……」

「ほい、『ネール』戻っていいよ」

 彼女が召喚した龍の形の獣が、彼女の魔法陣の中に消える。

「な、な、なぜだぁ……なぜ……」

「あのね? 若気の至りだと思うけど……。確かにあんたの魔法はすごいんだわ。だけど、『実践が足りてない』。あんた、魔法で戦闘とかしないで、研究とか理論ばっかりやってたでしょ? 箱入り息子?」

「な、何故それを!」

「だってさwwwまるで魔法を相手に防がれること考えてないんだもんwwwww」

「わ、笑うな!」

「おっかしーわーwwwなにが暗黒ですかバカじゃないのm9(^Д^)プギャー」

「おのれぇ、文字でも煽ってきやがる」

「でさ、あんた何がしたいわけ」

「せ、世界征服だ!」

「……?」

「同じことを何度も言わせるな! 世界征服して、もう一度世界をこの手に戻すんだ!」

「……吸血鬼って言ってたけど、もしかしてあんた、『魔王の息子』だったりして?wwww」

「何がおかしい!」

「一人で?wwww旅して?www世界征服ですか?wwwwほうほうそれがご立派な息子さんでwwww」

「く……」

 たしかに、シオリの言うことは正解だ。

 よくよく考えれば、見聞の狭い僕が一人で世界征服などできるわけがない。

 ……なにか仲間を探さなければ、資金より先に。

 仲間……。……『四天王』。

 そうだッ! たしかに、幹部の中でも上である『四天王』が定番ではないか!

 それもなしにどうやって世界征服をしようとしていたのか、……はぁ。

「そ、そうか……よし、決めた」

「え、何?」

「お前、『仲間になれ』」

「……麦わら帽被ってる海賊ですか?」

「違うわ! 四天王として、僕と一緒に旅しろ!」

「うーん? さっきの衝撃で頭のネジが外れたのかな?」

「……見たところ、金に困っていると見える」

「何故それを!?」

 簡単だ、身なりを見ればわかる。ボロボロの民族服に、これまたボロボロのポーチ。唯一の武器に関しては、どれも最低限の手入れしかしてない。

 しかし、問題は白金級なのにこれまで貧乏になる理由は何かということだ。

「どうしてそうなんだ?」

「いやぁ、推しに貢いだらこうなっちゃって、テヘペロ♡」

 推し? 推しということはこいつ……重度のオタクなのか? 少年誌で連載されている某ヒーローものとか、そういうやつのグッズを買いあさっているというのか……。

「シオリ……とかいったな」

「うん、Shiori Lotusleavesシオリ・ロータスリーブズ

「シオリ・ロータスリーブズ……四天王になれば、世界を支配することも出来る。そしたら……金なんていくらでも手に入る。そうだ。世界の金の半分をお前にやろう」

「うん?」

「いいか、お前は白金級のベテラン冒険者でありながらも、推しに貢いでいることが原因で、いまだこれだけの貧乏な生活をしている。しかし、これ以上の所まで行っても、あまり報酬は変わらない。これ以上の金を手に入れるのにふさわしいその力……『魔王のために役立ててみないか?』」

「へー」

(シオリは思った。『こいつならたかれる』と……)

 ふッ……『オちた』←。


 こうして、とりあえず(シオリが実質、上の立場として)四天王の一人が集まったのである。

 この後の困難を僕はまだ知らなかった……。


 to be continued……

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