ドラマギカ
玲門啓介
第一章 旅の始まりッ!(冒険の始まり編)
第001話 ケイ・レモネードの憂鬱
僕の名前はケイ・レモネード。
吸血鬼だ。
魔法が常識のこの世界で、恐れられ、崇められていた吸血鬼一族のかの魔王……。
『グレープフルーツ四世』の息子。一七歳だ。
しかし、聞いてほしい。問題なのはそこじゃあない。
……半年ほど前に『父は死んだ』。
にっくき、聖剣の『勇者』によって。
それ以降、魔王が組んでいた社会主義陣営、および魔王城、魔王軍は解体。
勇者、そしてその生まれの王国が率いる資本主義、民主主義陣営にとってかわられた。
たった半年前の出来事なのに、吸血鬼の威厳は地に落ちた。
まず、恐れられないッ!
もはやごくごく普通の一般市民だッ!
この世界にはただの人間以外にも、エルフなどの妖精族や、獣人族、巨人族などがいるが、そいつらと一緒の扱いらしいッ!
昨日は、近所のおばちゃんに北の地方のお土産を持ってこられた。
僕は受け取るのを拒否したが、おばちゃんは『いいからいいから』と、半ば無理やり押し付けるようにして、お土産を僕に渡したのだ……。あの饅頭はまずかった。うん、吐くほどまずかった。
そして、その前は公園で遊んでいる子供たちに懐かれてしまった。
これも最初は遊ぶのを拒否したが、無理やり鬼ごっこをさせられた……。
明日も来てくれだと、だれに向かって口をきいてるんだあのガキどもッ!
ん? 今どこにいるのかって、……はッ! 聞いて驚くな、『六畳アパート』だ!
ごく普通の魔術師でももっといいとこに住んでるのに!? なぜ!? なぜなんだ!?
いや、資金の関係らしかったけど、……国が補助してくれてるから、なんか文句言うのも申し訳ないし……ちくしょうッ。
これが今の僕の現状だ。
ただの一般市民。それが僕の姿ッ! おんどりゃあなめとるんじゃねぇ誰だと思ってるんだこの僕を、魔王の息子、『ケイ・ポンカン・アマナーツ・レモネード』、次期魔王『グレープフルーツ五世』になる男だぞッ! ……今はもうなる予定なくなったけど……。
チクショウッ! 勇者め、世の中め……征服してやるッ! 一匹残らずッ!←
そうと決まれば行動だッ! こんなボロアパートさっさと解約して資金集めだッ! そして新魔王軍を作ってもう一度世界を牛耳るのだッ! ははッ! ふははははははははははははははは(父から教わった魔王笑い)!
翌日。
「無理です」
「……はッ!?」
今、僕はアパートを解約して、ちょうど就職活動をしているところだった。
魔法の技術や知識は十分あるから、錬金術師の会社や魔術師の協会、さらには上級冒険者のギルドなんかでも働き放題稼ぎ放題のはずなのにッ! この窓口職員のじじいめぇッ!
「どういうことだッ! みろ! 僕の魔術レベルはアカデミーの教授並だッ! この書類にも証明されているッ!」
「ええと、ですから……」
「どの分際で僕の就職を妨害しとるんじゃこのワレェッ!」
「えと、その……」
「さっさと通せェッ!」
「『若すぎます』」
「……へ?」
「失礼ながら、ケイさんでしたっけ? 貴方、うちだけでなく『どこの会社で働くにも、若すぎます』。たしか、一七歳でしたよね?」
「そ、それがどうかしたかッ!?」
「法律で……普通の会社は一八歳以上でないと雇っちゃいけないことになってるんです。高レベルの魔術系職は」
「な、なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおお」
チクショウ、資本主義陣営めッ! ジンケンやらキョウイクやらの保障とかで、最低労働年齢を引き上げやがったああああああああああああああああああああッ!
「じゃ、じゃあ僕が働けるところはッ!?」
「えーと……少々お待ちください……」
「は、早く見せろッ!」
「え、ええと。『聖アレクサ孤児院の職員』とか、『一般水道整備士』とか、あとは『飲食店のウエイター』」
「そ、そんなもの誰でも就けるような低賃金職じゃないかッ!? そんなものでは軍など作れないぞッ!」
ふざけるなッ! そんな人道的な道徳系の職なんてもってのほかッ! 僕が作るのは世界征服の軍なんだぞ!
「じゃあ、冒険者ギルドにでも入って、荒稼ぎしてください。ちょうどモンスターとかが南の地方で増えてますので」
「くッ……そんな低俗な職に就くとは……しかし、高賃金が期待できるのはそれくらいしかないか……ッ。命拾いしたな、職員のじじいッ。今日はこれくらいで勘弁してやるッ」
「?」
僕は、とりあえず冒険者として荒稼ぎをすることにした。
高報酬のクエストをガンガン受けていけば、いずれ金持ちにはなれるだろう。
しかし、そううまくはいかなかったのだッ!
to be continued……
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