第011話 とりあえず、海賊まがいのことをやります
よっしゃ、そうと決まれば手ごろな貿易船を……。
うーん。しかし、どうしたものか。
「どうにも、どれも大きすぎるですの。五人乗れればいいですのに……」
ミカエラの言うとおりだ。貿易船とはいえ、さすがにそんな大きなものを母校たちだけで使っていくのはマズイ。
「では、船員を脅して、私たちも一緒に乗せてもらうというのはどうでしょう」
リンさんが名案を出した。てか、よく平然とこんな会話できるな。……四天王たちの方が魔王向いてるんじゃね(今更)?
「よし、そうと決まれば私が脅してくるー!」
オトカが、そのままシンエン王国行きの貿易船の方に向かっていく。
「ん? 嬢ちゃんどうした? この船はシンエン王国行きの貨物船だよ?」
「私たちものーせて☆」
「いや、その。そういうわけにはいかないんだが……」
「いいのかなー? そんなこと言っちゃってー? 魔法少女オトカ☆ノイズが折檻しちゃうぞ!」
折檻て……。
「おい、だれかこのアタマのおかしい嬢ちゃんを放り出してくれ」
「いやッ! 離してッ! 何するつもりですか! エッチなことするんですか(ワクワク)」
オトカ退場。さすがに実力行使ってわけにはいかないからな。あくまで『脅す』程度で乗せてくれればいいんだから。うーん。オトカは後で回収するとして。
さて、どうするか……。
「はいはいはーい! 私がいくですわ!」
お、ミカエラか。……軍事力を背景に圧をかけそうだな。
「おーじさん!」
「ん? 今度はちっこいのが……」
「貨物船にのーせて! ですの!」
「ま、またかよ……ダメだよ嬢ちゃん」
「むー! お前らの家族が二度とまともな暮らしができないようにしてやってもいいですの?」
脅し方、まんまヤのつく人じゃねぇか、こいつホントに一二歳か!?
「……(作業員は無言で警備員に手を振る)」
「わー! チクショーですわ! 後でお前らの頭をバレットM82で粉々にしてやるdeathの! 脳漿ぶちまけるがいいですわ!」
あーあ。捨て台詞がなんか古ーい感じ……。
「じゃあ、俺が行くわ」
安心と信頼のシオリ(安心と信頼とは)。
「よー、おじさん」
「お? こんどは猫の獣人かよ……で、なんだ?」
「貨物船に乗せろ(威圧)」
「……あのー、お引き取り下さ」
「乗せろ」
「……お引き」
「乗せろ」
「……」
「乗せ……」
「シャーァァァァァッ!」
シオリも連行か。唸り声あげてるし。
「じゃ、じゃあ私が……」
リンさんか……。なんかおっとりしてる感じだから脅しが通用しないかも。
「あ、あのー」
「で、貨物船か?」
「え、ええ、そうです」
「あのさー、こっちも困るんだわ。さっきの三人みたいに連行されたくなかったら、たのむから引き下がって……」
「見てください、この可愛らしい蟲たちを……(恍惚)」
「……?」
「この子たちは、お肉が大好物なんです! その子貨物船に積んである冷凍肉なんか、すぐ食べきっちゃいます。もちろん人のお肉も食べますよ(笑顔)? 腐ったお肉でも生きたままのお肉でも大好物なんです。この壺からわんさか出てくる千匹の蟲たちを貴方達船員に向かわせたらどうなるでしょうね? 体の穴という穴、粘膜という粘膜から血をすすり、肉を食み、骨を削り、神経をぶちぶちと引きちぎって、貴方達は美味しくいただかれてしまうでしょう。貴方達はこの蟲たちの毒によって、気絶することも出来ず、暴れることもできず、究極の苦しみの中で生きたまま食べられるのです。人間を食べ終わればこの蟲たちは船の材木などを食べ始め、あっという間に船は沈没、証拠なんてどこにも残りません。ね、素晴らしいでしょう? 最高の兵器であり、生命の美しさを体現したこの子たちは、まさに私の愛の結晶なんです(うっとり)ッ! 命の神秘が生み出したこの魔法蟲たちを私は飼っているのですが、たまにモンスターを勝手に食い散らかして困るんですよぉ、もうっ、食いしん坊なんだから(ハイライトの無い眼)♡ そこで今回貴方達の体とその存分な保存食を餌にしようと」
「いやー、快く了承してくださいました! 優しい船員さんたちですね!」
うん、優しかったね(白目)。
「なんで乗せてくれたんですの?」
「……ミカエラ、聞かないほうがいい」
「え?」
「世の中には、知らないほうがいいこともあるんだ」
「わ、分かったですの」
イイ子だね、ミカエラ。毎日リンさんと過ごしているのが不思議でならない。……もしかして四天王の中で一番危ない……? リンさん?
「そういや、そろそろつくよ」
シオリが言う。
船だから、飛行船よりは遅い。そのため、小さい島を経由しながらでも一週間はかかった。飛行船はなかなか出なかったから仕方ないのか……。
「やっほーい! 上陸上陸ゥッ!」
シオリ、久しぶりの祖国だな。
「うわー! スゴイ! 体格の大きい獣人ばっかりだ!」
オトカも目を輝かせている。普通、こんなに獣人がいる所なんてないからな。
「レッツゴー! ですの!」
「はあはあ、ミカエラたんかわいいよおおおお!」
シオリ、だんだんミカエラに劣情を抱き始めている、危ない、っとメモメモ。
「よっしゃ、祖国をぶっ潰すぜ……え?」
かちゃり、と音がした。
「て、手錠だとォォォォォッ! お、お、俺の両手首がッ! 手錠にッ! 『拘束』されているゥゥゥゥゥッ!」
ジ〇ジョ風に言わなくてもよい。てか……手錠?
「出たな、宿敵ッ! シオリ・ロータスリーブズ! やっと会えた」
そこには、銀髪をなびかせた、亜人系の女が経っていた。
「シオリ・ロータスリーブズッ! お前を、『国家転覆容疑』ならびに『亡命容疑』で逮捕するッ!」
だ、だれ?
「ぬおおおおおおおおおお! ルーナちゃんじゃん! ひっさしぶり!」
「なにが『ルーナちゃん』だ!」
あれ? 知り合い……? 女は、こちらに向くと、一言あいさつした。
「挨拶が遅れた。
これは……捕まってますねー。
「あれ? てかこれ僕たちさ、シオリを受け渡してることにならない? え? 違法入国じゃないの?」
「そうですねー?」
リンさんも不思議そうだ。
「確かに、密入国だが……そういう動機でも与えないと、こいつは入国する気にならなかったのだろう。周到な計画、見事だ」
「あ、はい。そうですー(棒)」
よし、とりあえず違法入国は免れたし、シオリには犠牲になってもらうか←。
「ちょ、ちょっとおおおおおお!? ケイ! リン! オトカ! ミカエラ!? お、俺を見捨てるのか薄情者おおおおお!」
シオリ、案の定。しかし、他の僕を含む四人は微動だにしない。
「さ、さああ、何のことですの? 私たちは初めからこのつもりでしたの。ねえ、オトカさん?」
「そそそそ、そうなの! ごめんねシオリ! がんばって! ファイト!」
「裏切者めええええええええッ!」
手錠をグイっと引っ張ったルーナは、そのまま暴れるシオリを引っ張っていく。
「さあ、お前には聞きたいことが山ほどある。監獄に一時収容して聞かせてもらおうか!」
「え!? 監獄プレイ!? それなら代わりに私が!」
「オトカ、お前は反応せんでよい」
大変なことになったわけではないが、まあ……観光するか!
to be continued……
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