第008話 すさまじいビジネスチャンスだッッッッ!

 ふう、あれから一週間が経った。

 とにかく、金を稼ぎまくる。それぞれ理由は違うが(シオリは、推しのため。ミカエラはごはんのため。リンは、蟲や植物の維持費のため。オトカは貯金のため)とにかくパーティーとしては一流に、僕たちは大金を稼いでいた。

 シオリに指導してもらい、敵の攻撃をよけつつ魔法を撃つことが可能になった。僕のランクも、F級までは上がったようだ。とりあえず、これである程度食っていける……。


「え? あのチェリーから依頼……?」

 オトカが、目を見開いて叫ぶ。

「いや、それがな……」

 僕も、どう話したものかよくわからん。


 あの、チェリー・ライトスカーレットから、『四天王も連れてきて』、と呼び出しを喰らったのだ。


 な、なにかまずいことしたかな……(汗)。練習中にギルド施設の窓ガラスを割ったり、飲食禁止の部屋の中でコーラ飲んだり、いろいろ思い当たることがあるんだが……!

「とりあえず、どこ集合なの?」

 シオリが、チキンを貪りながら話しかけてくる。

「えと……たしか……『リッター王国ギルド』とか」

「へ!? リッター王国ギルド!? この国のギルドの本部じゃん!?」

「どどどどどどどうしよシオリ、ななななにかやばいことしたかなななななな」

「……日頃から世界征服とか公言してるから、目ぇつけられたんじゃないの?」

「びええええええん! 僕の世界征服の夢があああああああああ!」

「落ち着くんだケイ……素数を数えて落ち着くんだ……」

 シオリ、それ何の慰めにもなってない。

「俺はそうじゃないと思うけどな? 一応早いとこ行ってみたらどうだ?」

「じゃ、じゃあッ! 四天王集合ッ!」


 というわけでやってきました! リッター王国の首都、ハルトマン!

 いやーきれいな街並みですねー! 魔術で作られた高層ビルが、これでもかと建ち並んでますよ!

「何地の文でリポートしてるの、ケイ」

 オトカ、……一度やってみたかったんだ。

「ともかく、ここじゃ魔法少女姿は目立つから、変身はダメね」

「わーい! 入国手続き以来なのです!」

「私もー」

 リンさん、なんか結構うれしそう。

「こういう外国の風景、ゆっくり見たかったんですぅ」

「ともかく、まずは用事を済ませてからだ……堂々と……堂々とだ」


 数分後。


「うわああああああんん! 無理いい無理無理無理無理無理絶対無理!」

「ほらあああッ! さっさと行くよ!」

 泣き叫ぶ僕を引っ張るオトカ。

「無理だって! 目の前で迎えられたけど、絶対これ処分下るやつじゃん!? 怒られる! げんこつで殴られるゥッ!」

「知らないわよ! あんただけ処分だったらまだましで、酷い場合はパーティーで連帯責任だからね!? あと、げんこつはないから安心して」

 ともかく、大恥をさらすことになった。しょうがなかったんだもん。げんこつ怖いもん。


「……」

「え、えーと? どうも、二度目の挨拶ですねー!」

 チェリーは、相変わらずニコニコとしている。

「チェちぇちぇちぇ、チェリーさん? あ、あ、あの処分の方は?」

「えー? 処分? 何のことですかー?」

「へ?」

「処分なんてありませんよ?」

「でも……窓ガラス割ったの僕ですし、飲食禁止の部屋でコーラこぼしたのも」

「……あとでー、こちらから別の通達を受けてもらいますね?」

 あ……。

「「「「馬鹿か!?」」」」

「まー、ケイさんが罪を自白したのはいいとして―……ねむーい」

 チェリーは、そのまま奥の部屋へと僕たちを案内した。

「それでですねー、会わせたい人がいるんですよー」

 大きな扉をうんしょと開けるチェリー。そして。

「よく来てくれた!」

 なんか、めっちゃえらそーな声が聞こえてくる。

「えーと、誰?」

「誰だよお前」

 僕とシオリは目の前にいる青年を凝視するが、他の三人は一気に緊張しだした。

「あ、あ、あ!」

 ミカエラは、彼の名前を口に出す。

Michinaga Ministarミチナガ・ミニスター! この国の大臣の一人ですの!」

「ふぇ?」

 だ、ダイジン?

 こんな若いやつが?

「ふむ、そうである! 私こそ! この国の外交大臣である! ミチナガである!」

「でー、何の用なんですか? 私たちに用って」

 オトカが困惑している。どうも、今回の呼び出しは変わっているらしい。

「……まあ、まずは座り給え」

「ほーい」

 

「それでだなー……」

「あのー、早くしてもらっていいすか?」

 シオリ、余計なことを言うんじゃない!

「何を言う、シオリ・ロータスリーブズ。君こそこの件の重要人物なのに(自分の給料上がるから別にいいけど)」

「ん? 今なんか聞こえ」

「HAHAHAHAHA! 気のせいだよ!」

「……?」

「で、重要人物というのは、……君、亡命してるだろ」

「はい」

 ……え?

「「「「ええええええええええええええええッ!」」」」

「ちょちょちょっとまてッ! 初耳なんだが!?」

「え、話してなかったっけ」

「嘘!? え、何、どこから」

「シンエン王国」

「……あ(察し)」


 シンエン王国というのは、この世界で唯一鎖国体制を敷いている、ほとんどが『獣人』の国だ。獣人族の発祥の地とも言われている。

 極東に位置しており、物理的にも他の国の大陸と距離が離れているため、船や飛行船での交易がほとんど。その規制も厳しく、あまり内情は知られていない。

 近年、他の国に向かって、堂々とミサイルの開発を宣言したことでも話題を呼んだ。


「んで、なんすか?(鼻ホジ)」

「君には、帰国してもらいたいんだが……」

「嫌です。この国の推しに貢ぐって決めたんで」

「いやーしかし、追っても来てるし、あの国、武力で何するか分かんないし……国交の改善とか、その他もろもろも手配するから、ね?(別にこの件で給料が上がればお前なんてどうでもいいんだけど)」

「心の声がダダ洩れなんですが?」

「そ、そうかい?」

「ここまで心の声がダダ洩れな人初めて見た……。良く出世できたな?」

「と、とにかく、必要であればパーティーメンバーと一緒に、シンエン王国に行ってほしい!」



「嘘でしょ?」

 僕は、唖然とする。

「だーかーらー。あの国でテロれば何とかなるって言ってんの!」

 シオリ、……やっぱりサイコパスだ←。

「テロるって何!? コンビニ行く感覚でテロ起こそうとしないでくれる!?」

「しょうがないじゃん! あの国の独裁体制ぶっ潰さないと、あんたたちも追われるよ!」

 おいおい、こんなの他の四天王が許すわけ……。

「ふへへへへへ久しぶりに敵対国家で堂々と大暴れできるですの!」

「ミカエラちゃんのカワイイ狙撃姿が見られます! 蟲たちも気分転換になるでしょう!」

「私は、どちらかというと、獣人特有の大きくて野性的な『ミサイル』で貫かr」

 やる気満々なんですがあああああああああ!?

 え、何!? 旅行じゃないんだぞ!?

 ……逝くか(決して誤字ではありません)。

「わ、わかった……よし、明日から準備だ。目的は……」

「「「「「シンエン王国の開国!」」」」」


 さーて、明日から忙しいぞい。

 困ったなァ。僕、あいつらまとめられる気がしないッ。

 てか、勝手に大暴れされると結構困っちゃうんだけどなァ。


 



 そのころ、シンエン帝国で、シオリの渡航に構えるものがいた。

「はい……ええ、亡命者は見つけ次第、原則として『国家転覆』の罪で銃罪に問われます。もちろん。私の因縁の相手ですから……はい。今回は必ず仕留めます」

 その亜人は呟く。

Luna Twilightルーナ・トワイライトの名に懸けて!」

 



 次の朝。

「さて、まずは日用品を買い出しに行かないとな」

「ケイ! オウゴンバナナはおやつですの!?」

「ああ、おやつだ」

「ケイ! クロパンはおやつですの?」

「ああ、おやつだ」

「ケイ! 牛は」

「『おやつじゃありませええええええええん!』」

「えー、なんでですの!? 牛は生きたまま運んで捌くのが」

「あのな、旅行じゃないんだぞ!? しかも、牛ってなんだよ牛って!? 牛一頭おやつ感覚で食べるのはダメですッ!」

「一頭じゃなくて二頭ですわ!」

「ダメです!」

「えええええええいやだいやだいやだですのおおおおお! もっていくんですのおおおおおお!」

 あ、あ、あれ? これ、僕が泣かせたとか思われてる? え!? え!?

「わ、わ、わかった。次、競り落とそうな!」

「わーいですわ!」

「……チクショウ。ウソ泣きか」


 to be continued……

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