第012話 観光ッ! ときどきテロッ!

 とりあえず、各自でばらけて観光をすることにした。

 王国は鎖国状態といっても、最低限の貿易はしているらしい。西の大陸でも使われているものを時々見かける。ただ、建築が独特で、どこか異国の感じがする。

 僕の父親であるグレープフルーツ四世のときも、最も支配が緩かった地域だけあって、やはり閉鎖的だ。

 活発な市場でアクセサリーの類を見ていると、偶然かミカエラがどんぶりに盛られている何かを食べていた。


「観光客とは、珍しいねぇ! 外国人さんかえ?」

「そうなのですわ! おばちゃんお替わりですの!」

「はいはい、食べ放題だからね」

 うーん、なんか緊張感ないけど、とりあえず余裕は実際にあるし……。

 リンさんとミカエラが食べているのは、『冷麺』というこの国の代表的な民族料理だ。小麦粉を粉にして打った麺を平たく伸ばして、冷たいダシで食べるのだという、一風変わった料理。

「おいしいですわ! そのうち、コフコッフのみんなも連れてくるですの!」

「あら、それは嬉しいねぇ。でも残念だねぇ、そりゃたぶん無理だぁよ」

 なまった共通語で、おばちゃんが言う。

「なんでですの?」

「そりゃ見てわからんかえ? この国は鎖国状態……、大人数での入国許可なんて下りないのさー」

「大丈夫ですの! これから私たち魔王軍が開国させるですの!」

「へ、へ!?」

「手始めに、あそこに見えている王宮にRPGをどかどか打ち込んでもごもごもごも……」

 余計なことをしゃべるんじゃあないぜッ! 僕は、ミカエラの口を手で塞ぐ。

「す、すみません、お代払いますのでこれで……ミカエラ、行くぞッ!」

「あ、ありがとさん……?」


「ミカエラッ! いくら何でもあれはないだろ……」

「でも事実ですの」

「事実でもべらべら喋っちゃあいけません。めっ」

「わかったですわ……」

 さーて。昼も過ぎてきたし、いったん集団で行動したほうがいいな……。それにしてもリンとオトカがどこに行くか見当もつかないんだが……。


「……」

「おーい! オトカ」

「……」

 あれ? 街中で一人黙って突っ立って、何してるんだ?

「オトカ、おい」

「もー! いいところだったのに!」

「なんだよ、当てて見せようか? ナンパされるのを狙ってただろ」

「あ、な、なぜッッッ!」

「うーん、オトカの思考回路が分かるようになってきてるのが怖い……」

「くうッ」

 てか、自分からナンパされるのを待つとか、どれだけ自信があるんだよ。

「オトカ、そう言えば……リンさんはどこ?」

「うーん、知らなーい。私は魔法少女姿でうろついてただけだし」

「変身してたんかい」

「ついでにごろつきを正義の名のもとに折檻してた……」

 人はッ! 正義の免罪符を手に入れた瞬間にッ! 欲望に忠実な精神を持つようになる生物であるッ!


「うーん、リンさんどこだー?」

 リンさん、どこにいるのか全く想像がつかない……。

「どこにいるですの? リン?」

 ミカエラも不安げだ。山の中か?

「とりあえず、野外プレイでもしてみましょうか」

「言い方」

 オトカ……危ない。

「山間部にいるのかねー?」

 オトカの読みは当たってたのだが……。



 こちらも同じく山間部にある監獄。

「出しやがれこのビチグソ○○○○(自主規制)女があああああああ」

 シオリは、意味のない罵声をルーナに浴びせていた。

「はぁ……なんか死にたい」

「聞いてんのか、あん? 軽率に死にたくなりやがって」

「ちょっと黙って、Tsubuyaiter blockツブヤイター・ブロック

「んんんんんんんん」

 簡単な吃音魔術を使ったルーナは、そのまま外側に……。

「やっほーですの!」

「うわァッ! びっくりした!?」

 

 うーん、ミカエラ大丈夫かなー?

 てか、ここの監獄欠陥建築じゃね……? 鉄格子ないし! え、よくこれみんな逃げださないね!?

「んで、シオリは元気ですの?」

 なんか声が聞こえてくるし。

「あ、はい」

 なんかめんどくさそうな受けごたえだな。答えなくていいよルーナさん。

「それは良かったですわ! 引き続きおもりをよろしくです!」

「おもりじゃないんだけど……」

 すると、横から声が入る。

「そのまま入っててくれればいいんですよ、ミカエラちゃんに付く悪い蟲は」

 あ、リンさん。なんか目のハイライトが無いんですが……。

「だいたいシオリさんって、料理に媚薬混ぜてましたよね? あれ、どう考えても子供に食べさせるものじゃないんですけど、それを承知ですよね? 『私が任されたミカエラちゃん』をシオリさんが勝手にラリさせた件、あれまだ私許してませんから。あ、でもラリったミカエラちゃんかわいかったな、あとで拷問してキノコの入手経路聞き出しましょう。それでミカエラちゃんを餌付けするのは私になります。ええ、そうですよ。シオリさんは『そのまま牢屋でじっとしてればいいんです』。教育に悪いので。ミカエラちゃんは私が守りますよ。ミカエラちゃんの笑顔、ミカエラちゃんの泣き顔、ミカエラちゃんの頬を膨らませた顔全部です。あんな泥棒猫に純粋なミカエラちゃんが汚されないかうすうす不安だったんです。ちょうど良かったのでルーナさんには感謝してもしきれません。世界には蟲さんたちと植物と私とミカエラちゃんがいればいいんです。ミカエラちゃんは天使なんです。ミカエラちゃんと蟲さんたちは天使なんです。ミカエラちゃんと蟲さんたち、ミカエラちゃんと蟲さんたち、ミカエラちゃんと蟲さんたち、ミカエラちゃんと蟲さんたち、ミカエラちゃんと蟲さんたち、ミカエラちゃんと蟲さんたち」

「感謝されてる気がしないんだけど!? てか大丈夫!?」

 ルーナさん、わかるよ。なんかリンさん最近病んでるよね。

「ラリさせるなら、キノコじゃなくて粉末状の方が効率いいよ!?」

 そっちいいいいいいいい!?

「いや、私若いころ病んで混乱系の食材よく使ってたけど、西の方で取れる粉末の方が効能はいいんだ。植物から取れるから、植物に詳しいリンさんなら、そこから錬金術で合成できると思うんだけど」

 なんで早口!? 

「ルーナさん……!」

「リンさん……!」

 いやいやいやいや、分かりあわないでもらえる!? どうしたらいいのこれ!?


「じゃあ、シオリさんは煮るなり焼くなり好きにしてもらって結構ですので」

「うん。『リアル』でひどい目にあわされた分、たっぷりこっち側でオシオキさせてもらうよ」

 うん? リアル? 何のことだろう。


 この後、シオリは酷ーい目に遭いましたとさ(まだシンエン王国編は始まったばかり)!


 to be continued……

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