第005話 ピンク髪にろくなやつはいないッ

 さて、すっかり夕方になったわけだ。

「どうしますの? 私ははやく晩御飯を食べたいですの! シオリおねぇちゃんの晩御飯が食べたいですの!」

「ミカエラちゃん、もうちょっと待ってね……」

 リンは、洞窟の中を蟲に偵察させている。

 現在僕たちは、『ガンクツオオバクダンジュウ』の討伐に来ている。

 リンさんも白金級。そういうわけで、あのクエストを持って行ったのは、ミカエラのパーティーだったのだ。ついでにリンさんも四天王に加わることになった(パーティーに入った)ため、残るは一人。……まあ、明日に集めればいいか。いや、一刻も早く『まともな』人員が必要……。

「それ、ケイ。いってきな」

「なんで僕!?」

 シオリは、僕を深い洞窟の穴の中に放り込む。

「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああ」

「実戦経験は一番の成長の源!」

「やりすぎだろ!?」

 ドサ。

 とりあえず、魔法を使って上手いこと着地したが……これ、どこにバクダンジュウがいるのか分からんな。

 とりあえず明かりをつける。

「……ガー」

「や、やあ、ご機嫌いかが……?」

 はい、顔の目の前デスヨネー、ソウオモイマシター。

 鎧のような殻をもつ牙を生やした獣は、僕を確実にえさだと思っている。

「ぐるあああああああああああああああああああああああああああ」

「ファー! しにたくない! しにたくなあああああああい!」

 すると、追い打ちをかけるようにミカエルが上から叫ぶ。

「ケイ! 見つけたんですのね! とびきり大きいバクダンジュウには、グレネードが一番ですわ! ですわ!」

 ひょい、と何かが暗闇に落ちてくる。

 グレネードでした!←

「ひいいい! 爆発物を投げ入れるな!」

「洞窟から衝撃で追い出すんですの! おとりに使ってやったんだ、感謝しろ、ですわ!」

「嫌だァもう嫌だァッ!」

 チクショウッ、四天王に力が十分とは言え、倫理観ぶっ壊れてやがるッ!

 しかし、これも世界征服のため! これくらいなんのこれしき!

「ぬおおおおおおおおこんじょうじゃああああああ!」

 グレネードが破裂する前に、僕は崖をよじ登る。術式、

ascenditur登るを使って、上方向の運動を加速しながら、壁をよじ登るのだ。

 

 ばーん。


 はい、無理でした。


「ところでさ」

「ん? なに?」

 ギルドのベッドで寝ている僕は、シオリに話しかける。

「シオリって、自分のことを『俺』とか『私』とかいうじゃん?」

「うん」

「……失礼ながら、シオリって『男』なのか? 『女』なのか?」

「さあ、『バイ』で、『リバ』だから、どっちでしょう?」

 ますますわからんな。はぐらかされるだけだ。

 気にしても仕方ないか。

「シオリ、今日の夜、町でやりたいことがある」

「ん?」


 そして、夜の都市部。

 僕は、テーブルの上に真っ白なクロスを引き、段ボールにペンでこう書いた。

『四天王募集中(幹部、兵士も可)(次期魔王候補のサイン入り色紙が今ならもれなくもらえるッ!)』。

「あのさー……」

 シオリが気まずそうに話しかける。

「なんだ?」

「これ、……本当に集まるの?」

「当たり前だ。四天王になりたいと思ってる奴なら、飛びつくはずだ。しかも、この僕のサイン入り色紙付きだからな……」

 すると、前を通りかかった、親子の方から声が聞こえる。

「ママ―! あれー!」

「だめよ。かかわっちゃだめ」

 ……。

「完全に頭のヤバいやつだと思われてんだけど、俺ら」

 シオリ! いうな! なんだか泣きたくなってくるッ!

「チクショウッ! なんでだッ! なんで集まらないんだッ!」

「当たり前でしょwwww今時四天王候補とかw」

「ぐぬぬぬ、もう夜の一一時か……人通りも少なくなってきたし、そろそろ帰ろう……」

 また今度か……。意外と難しいな。四天王集め。

 しかし、はたから声が聞こえてきた。数人のチャラそうな男の声だ。

「よおよお、君さー、一緒に飲まない?」

「かわいいなー! 誰かをまってるの?」

 すると、その囲まれている中から可愛らしい少女の声が聞こえてくる。

「ふぇ、ふぇええ……その、あの、一人で、その」

「いいじゃん、俺たちと一緒に飲もうぜ!」

 なるほど、これは俗人がする『ナンパ』とやらか。しかも、話の定番通り中に囲まれている少女は戸惑って困っていると見える。

「いや、その……」

「さあさあ、こっちっこっち」

 このままでは酒を飲まされて家にでも連れ込まれるだろう、手を握られ引っ張られていく。……ん? まてよ。これはチャンスじゃないか?

 そもそも、僕は知名度が低いと見える。

 ここらで、この少女をナンパから解放してやれば、ちょっとは好感度や知名度が上がり、世界征服がしやすくなるのでは? 千里の道も一歩から、恐怖の魔王とは言えど王。仁徳は詰まねば……。それならば善は急げ。さっそく助けてやろう。

「あ……ちょっとケイ……」

「シオリ、待っててくれ」

 僕は、四人の路地裏の男たちに近づく。

「や、止めてください……離して……」

「ちょっとまったあああああああああああ!」

 僕は、威勢のいい声でストップをかける。よし、決まった←

「あ、だれだよ兄ちゃん? 誰でもないなら引っ込んでな」

「ふっふっふっふ……ふははははは! 女子を連れ込もうなんぞ、俗悪なお前らの好きにはさせん! その少女の手を放せッッッ!」

「こいつ……ヒーロー気取りか? アタマおかしいんじゃねぇの?」

 問答無用ッ、天才は理解されないものなのだ!

「少女よ、もう安心だ。この魔王、ケイ・レモネードが来たからには……!」

「え、あ、はい?」

「とりゃあああああああああああ悪人どもめ力の前にひれ伏せええええええpercute殴るッ! ボッコボコにしてやr」


「ぐはぁ……」

「はッ! なんなんだよ……こいつ。弱ぇしよ。さあ、一緒に楽しいことしよーぜ」

 ま、まだだ……。

 僕は、男の脚を掴む。

「ッ? なんだ、離せよ! おい! やめろ、ひっかくなッ! があ!」

「ボ、僕一人の力で君たちに勝たないと……世界征服ができないんだ……!(某マンガ風)」

 「く、このッ! このッ! なんだよこいつ、キモチワルッ! わかった、わかったからッ! ほら、行くぞ、こんなんに付きまとわれちゃかなわねぇ……!」

 男たちは去っていく。ふ、ふふふ。ふあはははははは! 勝った()! 勝ったんだ! ざまあ見やがれ悪人ども! 

「さあ、ダイジョウブですか? お怪我は(精一杯のイケボ)?」

「……ヤロウ」

「え?」

「どうしてくれんだこのヤロウッ!」

「え!?」

 さっきの気弱な少女が一転。鬼のような形相で、僕の方へと歩いてくる。

「せっかくの連れ込みプレイが台無しじゃん!? まさにエロ漫画展開だったのにィ!?」

「は? へ?」

「ドチクショウッ! 何ヒーロー気取ってんのボッコボコじゃん!?」

 グサリ。僕の心がまた一段階折れました。

「あと、あの台詞なんだよ『僕一人の力で君たちに勝たないと』とか、なに? の〇太? キッモ……キッモ!」

「く、助けられてその態度はなんだッ! 言っとくがな、僕は悪の魔王時期候補なんだ! 精一杯助けてやろうと思ったが、無礼を働かれては話は別だ! 命乞いをしても無駄だ!」

 そして、少女の姿をよく見る。いたって普通の平民だった。しかし。

「へえ? 魔王の候補なんだ? それで? よーし、オトカ、頑張っちゃうぞ☆」

 すると、どこからか星型のステッキを取り出したオトカという名前の少女は、くるっと回った。次の瞬間。

「ちぇーんじ!」

 周りが光に包まれる。光の中から現れたのは。

 フリフリがこれでもかとついた、ピンク色などのカラフルな色が付いた、ミニスカートのロリータファッションだった。髪と目はさっきとは違うピンク色に染まっており、髪も可愛らしく止められている。

「ふ、ふん! いいもん! 魔法少女だろうが、なんだろうが、魔王の前にはむりょくなんだもん!」

 僕は、魔法陣を展開する。

「いっけえええええええ魔王直伝奥義! universum宇宙! 散れ! 無礼もn」


「ぐはぁ……」

「愛と正義は勝つ!」

 彼女の姿が、さっきの地味な平民にもどる。髪と目は茶色になった。

「あーあ。また負けたね」

 シオリが歩きながら、倒れこんでいる僕の前で言った。

「な、なぜだぁ。何者だ、お前……」

「ふっふー! 私の名前はOtoka Noiseオトカ☆ノイズ! 司法に変わって、刑罰よ!」

 それ、ただの法律違反だろ、私刑は犯罪だぞ。

「なるほどねぇ。熟練してるってわけか」

 シオリが、頷く。実戦経験が豊富な魔法少女。そう言うことだったのか。

「ふへへへ、親もいないから魔法少女の連れ込みプレイができるところだったのだ」

「とんでもないエロ魔法少女だな」

「でもねー……」

「なんだ?」

「普通さ、魔法少女の〇辱モノは、強い魔法少女が触〇とか、怪人に負けて○○されるからいいんだからさ」

 いや、台詞の中に〇〇伏字が多すぎるぞ! 大丈夫かこいつ!?

「魔法少女になってギルドにも入ったんだけど!? 何!? みんな弱すぎ! すぐに倒せちゃうから全然堕ちられないんだけど!」

「そういう目的!?」

 いや、これはチャンスかもしれない。……いつものことだ。この強い魔法少女を利用できれば……。

「……オトカ・ノイズ。歳はいくつだ」

「え、一七歳」

「なるほど。まだまだ若いんだな」

「言っとくけどあんたは嫌だからね。同い年だし」

「こちらも襲うのはごめんだ。こんな変態魔法少女。それよりなんだ。……魔王の四天王に入らないか?」

「へ、四天王?」

 シオリが説明してくれる。

「なんか、世界征服したいんだって、実際、こいつ魔王の実の息子らしいし」

「へー。魔王のドSプレイとか期待できないわー」

 そんな趣味はありません。作者にもありません。

「そこでだ。……お前の力を存分に発揮するというのはどうだ」

「えー、なんかめんどくさいし!」

「……オトカよ、正義の側に立つ実感はどうだ?」

「え、……思ったより、全然退屈かも。期待する展開にならないし」

「魔王軍に入れば、少々危なっかしいことも建前なしでできるようになるぞ? もちろん、発禁になるようなエロ本やらを発売できるようにしてやってもいいし、男やモンスターも選び放題だ……」

「え、エロ本!? 男やモンスター!? ごくり……」

「どうだ……?」

「よ、よし! 今日からオトカは『悪の魔法少女』になるのだ!」

 ……落ちた()。


 これにて。一日でそろったインスタント四天王。しかし、本番はここからだ。

 さあて、どうしたものか。


 to be continued……

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