第二章 ケイ、世界征服するってよ(冒険者編)
シンエン王国編
第006話 鍛練あるのみッ!
次の日になった。
ともかく、四天王は集まった。戦力は申し分ない。
申し分ないのだが……。
「わーい! 朝ごはんですのー!」
「ほいほい、たくさん食べな。こんなのでいいんだったら」
シオリは、さっそくミカエラを餌付けしている。今日は、小麦粉を練って焼いたものと、体力強化のスパイスグリル焼き(何の肉かは不明)だ。
「あむあむあむ! もぐもぐ! おいちーですわ!」
「にしても食べるねー……」
どうも、カレーの件と同じように、日ごろから大量に食べるらしい、これに加えておやつもずっと食べてるし。あの小さい体のどこにそんなスペースが!?
「ぐッ! ボリって……」
「あー! 骨だよ。ほら、ぺッしなさいぺッ」
……母親かよ。
「シオリおねーちゃん! 大好きですの!」
「ふ、ふへへへへぐへへへへ」
なんかよからぬことを企んでそうな笑い方だな。おい。
「いやー、ミカエラちゃんが懐いてくれてよかったです」
相変わらずリンさんは常識人だなぁ。
「それで、新しい四天王というのが見つかったんですか?」
「そうだな」
「その魔法少女の人は、いったいどこに……?」
「あれ? そう言えばオトカが見当たらない……」
そう言っていると、ギルドのドアが開いた。ベルが鳴る。
「「「お、おお……」」」
冒険者たちがオトカの方を見る。
いや、オトカは普通に美少女なんだよなぁ。変身してないときは地味なだけで。あと、とんでもない嗜好の持ち主だけど。
「おはよ、ケイ、シオリ。この二人が他の四天王?」
「あ、ああそうだ」
「なんか……みんなあんたより強そうなんだけど?」
「それは言わないお約束だッ」
「いや、魔王が一番弱そうとかどういうことよ!?」
「しょ、しょうがないじゃないか(涙目)! 強い方がいいだろ、世界征服するんだったら!」
「なに子供みたいなこと言ってんの引くわー」
「勝手に引いていろッ!」
「……よくこんな奴らが四天王なんかになってくれたね」
「みんなお前と同じような下らない理由だ」
「くだらないって何よ! 負けて『くっ……殺せ』とかめっちゃたぎるでしょうが!」
「たぎらねぇよ!」
そんなこんなでクエストを受注することになった。いやー、白金級が二人もいるパーティーだったら、いろいろと受注も楽だろうな。
「えーと」
僕は、クエストの掲示板を探る。
「まずは討伐系……と。ランタントカゲの討伐、モンキーゴブリンの撲滅、ダイオウカチャカチャ(カチャカチャの上位種。水辺にすむ巨大な鳥)の討伐」
うーん。どれもかなり報酬が高いが、他も見て見ようか。
「んじゃあ、次は護衛系ね」
シオリが掲示板を見ている。
「今日の昼頃に大規模な食糧の輸送があるから、モンスターや野党に襲われないように護衛する……うーん、あんまり美味しくはないけど、人数分報酬が出るみたい」
リンが、他の掲示板を見て戻ってきた。
「じゃあ、製作系にします? 素材を集めたりして、指定のものを作って納品するクエストです」
「製作系は当たり外れが大きいからなー……」
オトカが言う。彼女も最近は言った割には勉強しているな。
「やっぱり私は討伐系かな、負けてもおいしく頂かれるようなのが……」
「そんなものない」
僕はオトカの頭をぶっ叩いた。
「いったー! 何すんの」
「よし、見てろ……」
僕は、受付に髪を持っていく。
「……討伐系、全部引き受けます」
「「「えええええええええええええ!?」」」
他の四人から悲鳴が上がった。そりゃそうだ。現時点での討伐系クエストは、二四種。ちょっとカッコつけたかったんだ(本音)
「……四天王よ、よく聞け(精一杯の魔王ボイス)。これぐらいの武力を持たずして、なにが四天王、なにが魔王だ。世界征服への道は遠い、鍛練あるのみだ!」
「どこの口が言ってんのさ」
「本当ですわ」
「そのー、無理かなー? ケイには、なんて……」
「は? アタマ沸いてんの?」
四人それぞれに罵倒してきやがる。でも負けないッ! 負けないぞ!←
「ふっふっふっふっふ、僕に作戦がある」
「え?」
シオリがとぼけた声を出した。
まあ、見るがいい。前魔王直伝の帝王学を!
「よし、森に付いたな……ここらへんが一番のスイートスポットだ……て、聞けぇッ!」
四人それぞれに野原で遊んでいた。
「いやー、ベニキウイ(マタタビの一種)最高だー(猫)」
「リン! みて、ちょうちょなのですわ!」
「あー! きれいですねー!」
「……ぐーぐー」
オトカに関しては寝てるし。
「いいか、四天王諸君! これから一気に二四種の討伐クエストを達成するッ! そのために……さっきこれを作ってきたのだァァァァァ!」
「……ナニコレwww」
シオリが笑っているが気にしない。見てるがいい、僕一人で終わらせてやる。
「見たらわかるだろう。罠だ」
僕が魔法陣から転送させたのは、木製の大きな小屋のようなものだった。
ランタントカゲをおびき出すための、鳥の脂をぶらさげッ!
モンキーゴブリンを仕留めるために、縄で陣を作りッ!
ダイオウカチャカチャを射るために、ボーガン発射装置を設置した!
その他のクエストも、この機械に付属されている罠一つで解決する!
「ふッ……天才か……僕は」
「いや、単に罠をテキトーに置いただけでしょ」
オトカ、細かいことはいいんだ! 見た目は確かにショボいが、気にしては負けなのだ!←
「もー! いいから見てるの! 手柄は全部僕のものだぜヒャッハー!」
数分後。
全部罠にかかった。
『僕も』
どうしてこうなった。
「ギャーギャー」「グら! グララ!」「ケー! ケー! ケー!」「ボロボロボロ!」「くぇ くぇ」「ヒー!」「バサバサバサバサバサ」「キャキャキャ!」「たすけてえええええええええ!」
地獄絵図だ。二四匹(ゴブリンは十匹以上かかってるから実質三四匹以上)が半径一メートル以内に敷き詰められている。いや、罠を解こうと思ったら、ゴブリン用の縄に引っかかったんですわ。トホホ。
「け、計画通りだ」
「どこがですの!?」
と、とりあえずうるさい! 暑い! くさい!
「リン! 大鎌で縄を切ってくれ! そしたら罠が解ける!」
「それがその……言いにくいんですが」
「なんだ?」
「……罠を解いたら、全部放出されません?」
「……。あ」
やべ。本格的にどうしよ、これ。宙づりになった状態で、僕は考える。
「と、とりあえずこいつら全部魔法で討伐できないか?」
「やっちゃってもいいけど、俺」
シオリ! こんな時こそ高火力な召喚術師が役にたつ! 皆さんも一家に一人。シオリ・ロータスリーブズいかがですか?
「たのむ!」
「じゃあ、『アールバ』。爆裂魔法でやっちゃって☆」
シオリが、精霊を召喚する。屈強な体格をした精霊は、そのまま火焔の球をこっちに投げつけた。
「え、まって、これ僕も巻き込まれない? ちょっと! シオリ!?」
「……(無言の笑み)」
シオリ! きさまあああああああ謀反か!
「助けて! 助けてくださいお願いします!」
「ケイ……いい奴だったよ」
「ちょっと!」
「ケイは、クエストの犠牲となったのだ」
み、ミカエラ! リン! オトカ! 僕は必死に視線を送る。
「「「……(無言の笑み)」」」
こいつらああああああああああああああッ! 二四種のクエストの報酬に目がくらんで、僕を焼き殺そうとしてやがる! いくら吸血鬼でもこれ死ぬよ!? 我死ぬよ!?
「ぬおおおおおおおおおおおお魔法で消却じゃあああ! こんなところで死んでたまるk」
「ぐはぁ……」
なんか毎回ぐはぁ……って言ってる気がする。
周りには爆散した肉片が飛び散っている。焼き鳥だーおいしそー(白目)。
「と、討伐完了だッ! 皆の者、よくやった」
「『よくやった』って……よく堂々と言えるね、ある意味すがすがしい」
オトカの罵倒は気にしないが、とりあえず、今日だけで二四種のクエストが達成できた。金はたまったはずだ。
ちくしょうッ。なのになぜか悲しいぞ! 頑張れ自分! 負けるな自分!
to be continued……
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