第004話 むしひめ!(ラノベ風に言ってみました)

 ミカエラが言う、あってみてほしい人というのが、もうすぐ来るらしい。

 彼女は、端末で誰かを呼び出していた。

「もうすぐ来るですの! 私の『お付きの者』ですわ!」

 え、一人じゃなかったんだ。

 すると、一人の女性がギルドの入り口に姿を現した。

「ミカエラちゃん! 勝手に言っちゃダメじゃないの!」

 あまり見慣れない紅の服。おそらく、極東にある民族服、キモノというやつだろう。花柄のその服に短刀が刺されているが、恐らくそれが彼女の武器ではないことが分かった。

 彼女の背丈ほどもある大鎌を、持っていたからである。長い黒髪を少し櫛で結い、まとめているその顔は、うっすらと笑みを浮かべている。

「あ、どうもこんにちわ。ミカエラちゃんがお世話になりましたッ」

「やっときたか、ですの! リン」

 シオリが、不思議そうな顔をする。

「あれ? この人って確か、この前に入ったばかりで白金等級を獲得した人じゃ……」

「ああ! あの時にいた猫の獣人さん! またお会いしましたね!」

 どうも、前日に知り合っていたようだ。

「紹介するですの! お父様が私の保護者として一時的に任命している、ヤマト連邦の冒険者、Rin Namikazeリン・ナミカゼですわ!」

「どうも」

 シオリと僕も挨拶をする。


「へー、そんなことがあったのですか……」

 上品な人だ。どこぞの冒険者とは違って……。

「ダメでしょ? ミカエラちゃん。人の食料を勝手に食べちゃ」

「えへへへ、美味しかったですの……いい匂いがしたからつい」

「すみません。もう一二歳なのに、食い意地がすごくて……。それにサブマシンガンを撃ったとか」

 しっかりしてるなァ……。

「あ、いえ。僕は大丈夫ですから……すぐに治りますし」

「そーそー。こいつ耐久力だけはすごいから。サンドバッグでいいよー」

「うるせぇッ!」

 誰がサンドバッグじゃッ!

「とはいえ、この子もケイさんと同じく、初めは五級だったんですよ。今ではC級ですけどね」

「そ、そうか……」

「でも、前魔王の息子さんなんでしょ? 一回お手合わせしてみたいなー!」

 うむ。やっと僕に期待する奴が出てきた。

「えー、弱っちいからやめといたほうがいいと思うけど、秒で負けるよこいつ」

「余計なことは言わんでいいッ! ……ふはははははは! その大鎌と魔術でかかってきなさいッ、手加減は無用だ」

 ここらで勝っておかないと、プライドが許さない……。おちつけ、さっきまでの二人が異常だっただけだ。いくら理論だけとはいえ、こいつぐらいならいけるッ(はず)!

 僕たちは、模擬演習場まで足を運ぶ。

「では! お願いします!」

 リンが、変形大鎌を構えながら、構える。

「よっしゃあああああああああぎったぎったんにしてストレス発散じゃああああ! 

Volcano火山ッ! ひれ伏s」


「ぐはぁ……」

「あら、勝っちゃいました? で、でもなんというか、『独創的な』戦い方でしたよ?」

「それ、料理の味とかを遠回しにdisる言い方なんだけど……。だんだん負けるのに慣れてきてしまっている自分がいる……」

 僕は、全身を『蟲』に覆われていた。そしてその次にツタで体をぐるぐる巻き。

「もういいよー! 蟲たち! この壺の中に帰ってきなさーい!」

 もぞもぞと、大きいアリのような蟲が、リンが掲げる壺に帰っていった。多分あの中がどこかの飼育施設につながっているのだろう。

「ほらー、やっぱ負けたじゃん。勝ってもいないのに調子に乗るからだよwwwwバカなのwww?」

「くううううううううううううううう!」

 シオリめ、公共の場で煽り癖を披露するなッ!

「ともかく、蟲たちの毒を抜かないといけませんねぇ。ちょっと薬になる植物を探してきます」

「あ、あたしもいくー!」

「私もおいしそうな野草を探すのですわ! ケイ、ご機嫌よろしゅう!」

 え、ちょっと待っt。

「え? なに、僕置いてかれた? ひどい、まだ動けないんですけど? え? だれかあああああああだれかたすけてえええええええええええ!」

 チクショウ、こんなもの魔法でええええええええ!

「ぬおおおおお! おらああああ!」

 あれ? 体に力が入らない? もしや毒というやつのせいですか? え、嘘。詰んだ。

 なんか向こうから声が聞こえる。

「あら、こんなところにオオツノキコリ(モンスター。大きな角で木を切り倒すことがある)が、ちょっと戦闘しないといけないようですね?」

 リンの声だ。チクショウッ! 完全に僕のこと忘れてる!

「リン! 今、シオリはいない! ここは私のRPGでいくですの!」

「わかった、ミカエラちゃん。それならよろしく!」

「ぬおおおおおおお、オオツノキコリのもも肉は高級食材ですの! 粉々に吹っ飛ぶがいいですわ!」

 え、この子言ってることが矛盾してない? 粉々に吹っ飛んだらもも肉も何もなくない? ていうか、ショットガンの感覚でRPGを使わないんでいただきたいんですが!?

「そもそも声が聞こえるってことは結構近いのか……はぁ……いつまでこうしてればいいんだろう」

 シュー……。

「ん? 何かが飛ぶ音が聞こえてる。森の近くだからモンスターか?」

 ヒュウうううううううう!

「あ(察し)」

「ごめんあそばせ♡ ケイ、RPGの操作をミスったら、そっちへ飛んでいきましたの! 注意してくださいですわ!」

 RPGだけじゃなくて僕の命まで飛ぶんですが、そこについてはどうお考えなんでしょうミカエラさん。

 ああ、我が一生に一片の悔いなしとか言ってみたかったけど、こりゃ悔いばっかですわ。

「てい!」

 あれ? 大鎌が飛んできた。

 スパッ! 

 おお、対戦車弾が真っ二つに! これはすごい!

 ていうか、リンさんなんで?

「ごめんなさいケイさん……。すっかり忘れていたんです」

 あ、忘れてたのはそうだったのね。なんか悲しい。

「い、いやぁ、助かった。で、はやくこのツタを切ってくれませんか!?」

「それがぁ……解除術式用の道具を切らしてて……」

「へ?」

「まあ、疑似的な植物なので、夕方には枯れるんです」

「それまで待っとけと」

「はい!」

「笑顔でさらっと怖いこと言うな……おい」

「大丈夫大丈夫! ちょっと道具を探してきますから!」

 そんなこんなで、夕方までにはちゃんと解放されましたとさ、ちゃんちゃん。


 to be continued……

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