第020話 犯人はこの中にいる……かもしれない。

 とにかく、飛行船で移動中だ。前回のような緊張感はなく、なかなかのんびりできてはいるのだが……。

「わーいチェリーさんのお菓子ですのー!」

「いただきまーす」

 ミカエラとオトカは、共用スペースのテーブル席で、チェリーさんにお茶をご馳走になっている。いやー、ヘイワな風景だ……、と思っていたら。

「キャー!」

 うん? リンさんの悲鳴が……。確か、船内の個室からだ。シオリは、僕からお金をぶんどって(カツアゲ)一人スイートクラスを満喫しているのだが……。

「リンさんの声ですの!」

 ミカエラは、そのままクッキーをほおばってシオリの個室の方へ。

「あ……あ、あ、あ、あ」

「リンさん! どうしたんだ!?」

 僕は、座り込んでいるリンさんに聞く。すると。

「あ、あ、シオリさんが……!」

「シオリが!? ……なにッ!?」

 そこにいたのは!

 

 テッテレー!


 シオリの死体!(棒猫型ロボットのアイテム風)


「なん……だと……」

 オトカとチェリーさんも駆けつけた。

「こ、これは一体ッ!」

 オトカ、お前いつの間に探偵風の格好に着替えた。あとちゃっかりパイプ持ってるし。

「あらあらー、死んでますー」

 チェリーさん頼むから天然やめてくれる!? 雰囲気壊れちゃうから! あと、何気に死体を見て死んでますーって言えるの変わってるからね!?

 シオリはベッドの上で赤い血まみれになって仰向けに倒れており。現場には凶器と思われるナイフが落ちていた。

「……ふむ」

 オトカ、お前嫌な予感がするが。

「犯人は……」

 あ、うん(察し)。

「この中にいるッ!」

「ど、どう言うことなんですか!? オトカさん?」

 リンとオトカ、お前たち事前に練習してきたんじゃねーだろうな? てか、ミカエラがカンペ出してるし。これ、たぶんグルだわ。

「ふっふっふ、まずは教えてしんぜよう。この名探偵オトカが来たからにはもう安心です。まずは、現場の状況から」

「何が始まるんだろうなー(棒)」

 呆れたなぁ。

「リンさん? この部屋、貴方が合鍵で開けるまで、鍵がかかってましたね?」

「は、はい! なんでわかったんですか?」

「見ての通り、リンさんがシオリさんの遺体を発見する少し前は、個室の清掃時間でした。そのときに鍵をかけておくとは、『個室の清掃を依頼しないということの伝達』です。つまり、船員のスタッフは、部屋の鍵は開けていない。……ミカエラさん私たちが最後にシオリさんを見たのはいつですか?」

「え、えと。朝ですの。それからずっとこもりっぱなしでしたの」

「そうです。シオリさんはトイレに向かう以外に、この個室を離れてはいない。つまり、密室なのです」

「それが、私たちの中に犯人がいることとどう関係がー?」

 チェリーさん。あっさり中に加わらなくてもいいんですよ? てか加担しないで?

「シオリさんの部屋を密室にするのは、私たちしかできないんです。それに他の乗客たちがシオリさんを殺す理由がない」

「とーいうと?」

 リンさん、めっちゃ芝居下手なんだけど。僕何を見させられてるの?

「シオリさんの部屋に鍵をかけるのは、合鍵を持っているリンさんが怪しいです。しかし、私たちも出来ないわけではありません。そう、『魔術』を使えばね」

 ……いろいろとガバガバなんですが? てか何これ。そもそもミステリーが成立しないんですけど。

「とにかくリンさん! 怪しいのはお前だあああああああ」

「ち、違いますッ! なんで私がシオリさんを!」

「うるさいッ! リンさんは、ミカエラちゃんの件でシオリさんをねたんでいた。それで殺したんでしょ! とっとと吐けやオルァッ!」

 推理も何もなくない!?

「ち、ちがうッ! 私は確かにシオリさんを拷問してぐちゃぐちゃのミンチにしてコンクリ詰めにして海に沈めたいぐらいには思ってましたけど! そんな」

 いやいやいやいやいやいや!? 明らかに殺したがってますよね!?

 オトカは、魔法少女姿になって、テーブルとスタンドライトとかつ丼を用意した。

「……ゲロっちまいな?」

「違います」

「第一発見者が真犯人ってのは、よくある話だよ?」

「違います」

「くッ……ならッ! 真犯人は、チェリーさん! 貴方だッ!」

 なんか、チェリーさんに謎の矛先が向いた。

「わ、わたしですかー?」

「そうッ! 貴方は、ギルドで問題ばかり起こす癖に、なかなかに仕事を持っていかれるシオリを恨んでいた! それで殺したんだ!」

「そ、そんなことないですー!」

「無駄だ。そろそろ私が紅茶に仕込んでおいた、びやk……ゲフンゲフン。『幸せの薬』が効果を表すことだ。さあッ! 本当のことを言わないと公共の場で発情してしまうよ!」

 なんちゅーもん入れてんだッ!? てか探偵でもなんでもないよね!? ただの脅迫だよねこれ!? すると、オトカが。

「あ、あれ……なんか体がほてってきt……」


 数分後。


「は、はぁ……はぁ……」

 うーん。床に倒れこんで描写できないような顔をしてるな、オトカ。よだれ垂らしてあられもない表情を浮かべている。

「なにか怪しい粉末を私の紅茶に入れようとしたので、すり替えておきましたー!」

 チェリーさん……。てか、一番犯罪者まがいのことしてるの、オトカじゃん。

「ち、ちくせう……はぁ……はぁ……。あわよくば、チェリーさんの豊満な体に埋もれて、百合百合プレイを楽しもうとしていたのにィ……はぁ……ああああ////」

 ダメだこりゃ、これ以上このまま放置したら、この小説が危ない。あわよくばどころか、最初からそれが目的だっただろ。

「じゃ、じゃあ誰が犯人ですの?」

 ミカエラが不安げに、手をもじもじさせる。

「そ、それは……はぁはぁ。ケイ! お前だ!」

 え、何? オトカ、まだこれ続けるつもりなの?

「な、なんで僕なんだ!?」

「ケイには、アリバイらしいものがないッ! シオリに餌付けされてるミカエラちゃんなわけがないし! 消去法でアリバイもないお前だああああああああ」

「無茶苦茶だろ!?」

「「じー」」

 なんでリンさんもチェリーさんもジト目で見つめてくるんですか!?

 と、そんなときだった。

「ジャスティいいいいいす!」

 ん? 誰だ、このリンさんと同じような着物を着た人は?

「説明しようッ!」

 あ、はい。どうも。

「俺の名前はTsumugi Forestツムギ・フォレスト。ヤマト連邦出身の鬼の一族だ」

「で、その貴方がなぜここに?」

「ふっふっふ、あまりにも滑稽な状態だったからなァ」

「といいますと?」

「シオリは、生きているッ! 寝ているだけだあああああ」

 すると、ベッドの方から声が……。

「あー……よく寝たわぁ」

「シオリさん!?」

 リンさんが、駆け寄る……。うん、さっきの話を聞いてたら、なんか全部演技に思えてくる。この人演技が上手なんだか下手なんだか。

「ところで、なんでその……ツムギさんはシオリのことを?」

 すると、シオリがツムギの方を見る。

「あ、ツムギじゃん。どこ行ってたの?」

「おお」

「へ? 知り合い?」


 どうも、ツムギとシオリは、知り合いらしい。

 シオリが亡命する際に、ヤマト連邦でお世話になったのだという。船内で知り合って、朝からワインを飲んでいたところ、シオリは泥酔。ワインを倒してぶちまけたそうだ(なんじゃそりゃ)。

 ツムギは、船員を呼ぼうとしたが、かなり怪しい現場になってしまったため、呼ぶのよ躊躇。しかも、おつまみを切るのに使ったナイフが落ちてるという事態のため、その場から逃亡ということでした! ちゃんちゃん←


「ぜ、ぜんぶわかってたわ……はぁ……はぁ……」

 オトカ、お前は薬が抜けるまで個室に引っ込んでろ。



 to be continued……

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