第014話 やったねッ! 正真正銘の悪党ッ!

 とにかく、今僕たちは逃げている。

 まだ街中を歩けるが、そうできなくなるのも時間の問題だ。

 なんでこんなこそこそと逃げ回る羽目になったのか……、その経緯は一日前にさかのぼる。


「と、とりあえずずらかるんだ! ですの!」

「そうだねー、うん。このままここにいるのはヤバい。証拠を隠滅してさっさと逃げよう」

 ミカエラもオトカも、よくそんな頭が回るな。ある意味尊敬するわ。

「では、蟲さんたちに足跡を消させましょう」

 リン酸が、懐から魔法陣を出現させ、蟲を呼び出す。今回はカブトムシのような少し大きめの甲虫だ。

「では、蟲さん。証拠を残らず隠滅してくださいね!」

 すると、甲虫たちは茂みの中へと飛んでいく。しばらくして。


「な、なんなんだ!? この蟲は!? ぐあッ! やめろッ! ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 あ(察し)。

「り、リンさん? これまずくないか?」

「なんですか? 残って私たちを目撃した兵士たちを口封じしただけですけド?」

 怖いよリンさん。目が笑ってないよ。ハイライトもないよ。

「大丈夫です。もうじきあの兵士たちは、蟲さんたちが注入する麻薬によって正常な思考を失い、街中で裸踊りを始めるはずです。終わったころには私たちの記憶なんか消し飛んでます」

「うん、物理的に死なないことは分かったけど、社会的には死ぬのね」

 ヤバいことに変わりはなかった。

「わ、私にもその蟲さんを」

「オトカ、お前どさくさに紛れて魔法陣に手を突っ込むな。迷惑するのこっちだから」

「いやだああああああ私は人間を超越するんだああああああああああ」

「ラリるのを中二病風に言うな!?」

「ぬおおおおおおおおおリミッターが外れた痴女の本気をみるがいいッ! ケイッ! 私は人間をやめ」


 てことがあった。そう、僕たちが追われているのは、あのパックミサイル(結果的に基地壊滅)がばれたからじゃない。『オトカが町中で裸踊りをしたからだ』。

「てかなに!? え? 効果がなんで『裸踊り』限定なの!? リンさん」

「うーん、みんな何かから解放されたがってるんじゃないかな? それが表面化したら裸踊りに訴えるとか」

「テロに訴えるみたいな言い方で裸踊りをカッコよく言わないで」

 うーん、とにかく公然わいせつ容疑でオトカが逮捕される前に逃げ出したわけだけど。とりあえず大陸を横断するか。ちょっと王宮からは離れるけど。

「あ、こちらのラジオ放送をジャックしましたの! どうやらシオリは、今から私たちが行く方面に移送されたみたいですの」

「じゃあ、ちょうどいいな……」

 僕はそう言ってから、水を飲む。確かにちょうどいいんだが。

「どうにも、公共機関を使うわけにはいかない」

「わーい! 美味しいもの食べるですの! お昼ですの!」

「ミカエラ……聞いてないし」

 ともかく、僕たちは大陸中央部の山岳地帯に映ることにした。少し北上するが、ここはかなり北の地方だ。昨日から大分移動したが、夏でも涼しく、山頂部には雪があるところもある。冬は全体が雪まみれになるようだ。

「こんなところに町なんてないから、動物やモンスターを狩るか……」

 移動方法もある程度考えないといけないし、あー頭痛い。


「あむあむ。やっぱりシオリおねーちゃんの料理が一番ですの」

 ミカエラはグルメらしいが、シオリに限ってはやめた方がいいと思う。あいつ、毎回混乱系の薬草入れてるし。何がしたいんだか。

「とりあえず、公共機関以外だと……そこらへんで馬でも捕まえて」

「いやいやいやいや」

 オトカ、どうしたらそんな発想が出てくるんだよ。

「じゃあ、魔術で飛ぶ?」

「お前は魔法少女だから飛行魔術が得意かもしれないが……そんなに日常的に使わないしな……飛行魔術」

 膨大な魔力量を必要とする割に、スピードは出ないし。

「ともかく、別の街まで行きましょうか。自動車があるかもしれませんし」

 やっぱりリンさんの言うとおり、町まで降りるのが無難だ。

「よし、じゃあこの先の街まで……」

「あ! ラジオを受信しましたの……えーと」

「どうした?」

「いいニュースと悪いニュースがありますの」

「ほー」

 こいつの言う悪いニュースが、いいニュースに対して釣り合う気がしないんだが。

「どっちから聞きたいんですの?」

「いいニュースから」

「この近くの街からいける港に、王宮行きと東行きの船がありますの」

「じゃあ、そこに行けば王宮にもシオリの方にも行けるってことか」

「そうですわ! で、悪いニュースは……」

 ミカエラは、もじもじと髪をいじる。

「私のパックミサイルがばれましたの♡」

 うん、知ってた。

「なんでそんなハダカデバネズミみたいな顔してるんですの?」

「いや、うん。こうなるのは大体予測できた」

 オトカが困った顔をしている。まあそりゃそうだわな。

「どうするー? もう強行突破しちゃう?」

「うーん、シオリさんはもうどうにでもなれって感じですかね?」

 リンさん、シオリに対してのあたりが強いなー……。でも、確かにどうにでもなれってところは同意できるのが皮肉だ……。

「うーん、基地から戦車でも空母でもかっぱらうですの?」

 ミカエラ、こいつホントにお嬢様か?

「ともかく、一般人は巻き込みたくないですの」

「そうよねー」

 リンさん、珍しくまとも。

「いずれ搾取するための大切な人民ですものね」

 前言撤回。てか、魔王軍だったらこれがまともか? あれ、これもしかして僕が一番いい子ちゃん?

「うーん、とりあえず今日は野宿か……」

 やっぱりそうするしか……

「えー、やだよいっつもダブルベッドの上で一人で妄想してるんだから!」

「いやですの! キングサイズよこせですの!」

「ケイさん、ほらミカエラちゃんが要求してるんですから早くこしらえてください」

 三者三様でした←


 to be continued……

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