ヤマト連邦編
第041話 新たな門出
「さーて、魔王一味諸君」
僕は、魔王城の玉座(パイプ椅子)に座りながら、ソファーでだらけるミカエラを中心とした四天王、そしてその周りで料理を作る幹部一向に問いかける。
「チェリーさんから冒険者ギルドに調整を貰って、新しく依頼が舞い込んできた。聞いて驚け、銅級の依頼が一〇個と、銀級が九個。金級の依頼が三個に、……プラチナ級が一つだ」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
一味全員が驚愕の表情を見せる。僕も驚く(なんでやねん)。
「こ、コホン。そ、そうだ。そういうことだ。プラチナ級は、国家プロジェクト並の依頼だ。報奨金がたんまりたまる」
「質問ですのー」
「ふはははは、なんだミカエラ? 申してみるがよい」
「ぶー、ケイのくせに生意気ですの。国を一つ落としたぐらいで調子に乗るから、いつまでたっても魔王の品格が無いんですの!」
「グサッ」
「で、質問ですの」
「あ、ああ……」
「リッター王国経由での、このシンエン王国への依頼。どうしてですの?」
僕は、依頼書を見せる。
「ふむ。理由はこれだ」
シオリが怪訝な顔をする。
「これってよー……。リッター王国機密文書のコピーじゃねぇか。」
「そうだ。これによると……」
ざわ……ざわざわ……。
「ヤマト連邦になんかあるらしい」
「いや、『なんか』ってなんだよ」
すると、ルーナ(クラシカルメイド服)が手を上げる。
「財宝……とか?」
「おおおおお、財宝か!」
ツムギが同意する。
「ちょっとまて、なんで財宝があるってことなんだ?」
僕は困惑するが、ルーナが説明し始める。
「ヤマト連邦の大陸は、もともと新大陸にあった半島らしいんです。だから、貴重な鉱物が集まっていて……、昔からヤマト連邦に埋まっているものはガラクタと財宝が半々だってよく言われるの」
「へー……」
「その機密文書も、なにか国家プロジェクトに必要なものを要請するための物なんじゃないかな? ほら、『請求する』って単語が何個も出てますし。具体的に何を請求するとは明かされてないけど」
「な、なるほど! そういうことか……ふふふふふ、ふっふっふっふ。ふははははははは!」
「どした? 気でも狂った?」
オトカ、やめて、キャラ付けが重要だから、こういうのは。
「この天才、ケイ・レモネードッ! 気づいてしまった! ようは、その財宝やらなんやらを横取りすればいいんだな!? 以来という大義名分をもとに、ヤマト連邦に侵入。そして征服だッ! よし、決めた! 第三の侵略先は、『ヤマト連邦』だああああああああ!」
「おー。ケイにしてはよく考えたな」
シオリが呟くが、僕は無視する。
「善は急げだ!(悪だけど)。 リンさん。ヤマト連邦出身のリンさんなら入国申請もたやすいだろう」
「わ、わかりました! では早速入国を申請します」
「ふは! ふははははははは! よっしゃああ、カチコミじゃァ」
現在、魔王一味は、僕、シオリ、ミカエラ、リン、オトカ、ルーナ、ツムギ、リジコ、ニシカの九人。うち、ニシカは研究所の設立をシンエンで行うため、今回は不参加。よって、ヤマト連邦へのカチコミは、残った八人で行う。リンとツムギはヤマト連邦の出身なので、案内役も兼ねている。
「よし、準備は整った。いくぞ!」
「えー、帰ってきたばっかりなのに」
オトカが駄々をこねる。
「もうちょっとゆっくりしてこーよー」
「甘いッ! 世界征服を目指すものは、日々の精進。規則正しい生活。勤労奉仕が重要なのだ!」
「世界征服ってなんだっけ」
「すすめやすすめ! 僕たちは希望の旅路にいるぞーーーーーー!」
「だれかこいつの頭を直してやってください」
ケイ・レモネードは今日も行く! 魔王一味を引き連れて、世界征服どんとこいじゃああああああああああッ!
一時間後。
「おrrrrrrrrr」
「www吐いてやがんのwwww」
シオリ、笑うな。僕は……船酔いがひどいのだオrrrrr。
「でもさー、あれだよな。今までの侵略する国に比べたら、ヤマト連邦はまともだよな!」
「いや、それが……」
リンさんが気まずそうな顔をした。
「そうでもないんですよ……」
「ど、どっちにしろ大丈夫ッ! この魔王の息子、ケイ・レモネードがおrrrrrrr」
やばい、やばすぎる。
「とりあえずお前はもう喋んな」
シオリは、僕の背中をさすりながら罵倒しましたとさ。
「リン? ヤマト連邦にはどんなおいしいものがありますの?」
「そうねー、ミカエラちゃん。ヤマト連邦には、スシっていう生魚の切り身を酢飯で握ったものがあるのよ」
「うわー! おいしそうですの!」
「それに、塩辛い『ショーユ』ってものをつけて食べるのよ。ものすごくおいしいから、あとでお店に行きましょうね。お金はケイに払わせるから」
「やったー! ケイのおごりですの!」
やめてくれ、もう貯蓄が無いんだよッ!
「いいですよねケイさん?」
……ハイライトのない眼で脅迫しないでいただきたい。
to be continued……
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