第036話 作戦会議はディナーの後で

「さてさて、カチコミって言ってもどうしましょう?」

 ニシカは、シオリと自分の食器を片付けながら、シオリに尋ねる。

「どうって? 魔術でボーンと……?」

「うーん。半分正解、半分不正解ね。確かに貴方の召喚術は威力絶大だけど、コフコッフの首都の基地には膨大な魔力障壁が設置されているわ♡ 勝てるかは五分五分ね!」

「んじゃあ?」

「ふふふ、決まってるでしょ? これを使うの!」

 テッテレー!

 『念鉄鋼ホープメタル』(CV大山のぶ代)

「え……なにそれ、初耳なんだけど。てか何その石」

「これは念鉄鋼って言ってね……。お国にも冒険者ギルドにもまだ登録申請してない、チョーチョーチョーレアものの結晶よ!」

 イった眼で、ニシカは早口でまくし立てる。こえぇ……。

「で、それ何でできてんの?」

Youあなたが shouldn't have known知るべきではないわ

「企業秘密が多すぎませんかねぇ?」

「仕方ないじゃない、某錬金術マンガみたいになっちゃうもの」

「人間が原料ッ!?」

「うーん、正確に言えば、『人間の意志の力』が原料、かしらね?」

 ニシカは、結晶を手に取って装置にセットする。

「さっき連れてきてもらったモルモット実験台たちは、原料になる意志が込められた魔力を抽出するのに使うのよ……フフ」

 シオリはごくりと息をのんだ。そんなことも躊躇せず、ニシカは鉄の扉の奥へと消えていった。


「や、やめてくれッ! 俺から意思を取ったら何が残るって言うんだ!?」

「なんでこんなことをッ!? ひどいッ、外道め! 人間のクズめがァッ!」

「ちくしょうッ! 殺してくれ……いっそ殺してくれええええええ!」


 やっべ、マジモンのサイコパスだ。ニシカ……。

「あらあら、皆さんがご想像される実験じゃないですよ? ちょっとこう、頭をチョイチョイっといじらせてもらうだけで……」

「十分ヤバいじゃねぇかニシカのやつ……」

 シオリは、猫耳をふさぐ。その直後には阿鼻叫喚ッ! 部屋から強烈な閃光が漏れ出て、一目見てまともなことをしていないというのが分かった。

「ふぅ……終わったわよ?」

「どう見ても非道な人体実験じゃねぇかッ!?」

「そんなことないわ! これからもあのホームレスたちはシアワセな生活を送れるはずよ!」

 そして、鉄のドアが開く。

「ありがとうございました! ニシカさん! 借金まみれで生きる希望を失っていましたが、やっぱりもう一度仕事が無いか探してみます!」

「!?」

 ホームレスは、次々と目を輝かせながら、街へ出ていった。

「に、ニシカ? 何をしたんだ?」

「ん? ちょっと薬品を注射した後に、高濃度の魔力を浴びせて思考をマヒさせただけだけど? あと、雑念を取り出して結晶化させたわ!」

「それで、あんなポジティブ思考に……」

「やっぱり人生楽しく生きていたいじゃない?(まあ、洗脳と言われればそうだけど)」

「ん? 今何かボソボソと聞こえたような」

「ううん? 気のせいよ気のせい」

 ニシカは、結晶を鉄の扉の中から取り出してきた。

「慈善事業よ。この奥にある装置と薬品を一回キメれば気分爽快ッ!」

「……」

「で、これが意思の結晶、念鉄鋼よ!」

「これってどう使うんだ?」

「さあ? ショットガンにでも入れでぶっ放せばいいんじゃない?」

「テキトーだなおいッ」

「とにかく、これを高速でぶつけて砕くと、なかの『雑念』や『意思』が飛び出して、被弾したものにくっつくわ。人だったら、頭の中を他人の思考で浸食されて、まともに動けなくなるの!」

「なるほど、遠くからこれを大量に浴びせればいいんだな……?」

「試しに一個やっとく?」

「やっとくって何を?」

「この結晶浴びてみる?」

「いや、やめときま」

「そーれ♡」

「あああああああああああああああああああああああ」

 結晶をシオリの口に押し込み、頭を上から手で挟み込んで潰すニシカ。よく咀嚼してしまったシオリは、結晶を飲み込んでしまう。

「あ」

「どう? 感想は?」

「ポジティブでフルーティー十万な車が、こっちへレッツゴー、ゆらゆらしてる。わからないんだ、私を助けないリンゴ。昔は常識的な物質。濃度が比例だねって次に叫ぶ万歳さんはどちら。狂うの砂利は非常にデリシャスかも王道。えらが見るときは論理的です」

「うんうん。うまくいってる!」

「は、はぁ……はぁ……ぜえ……ぜえ」

「こんなふうに思考が破綻しちゃうのね♡」

「わ、わかったから……もうよしてくれ……」


「ふう」

 ルーナは、暖炉の前で寝っ転がっていた。

「シオリ、どこに行っちゃったんだろう?」

「さあ、ミカエラを探してるんじゃない?」

 オトカは、昼ドラを見ながら適当に受け答えをする。

「探してるんじゃない? じゃないでしょ。ちゃんと受け答えしてよ!」

「あのさー? ルーナってさー」

「な、何?」

「意外とシオリのこと気にかけてんのなー?」

「は、ハァッ!?」

 ルーナは、顔を赤らめてオトカの方を見る。対してオトカはにやにやしている。

「いや、ここに放り込まれたときから『シオリはどこ』『シオリはどこ』ってさー? 何? あんたら付き合ってんの?」

「そ、そんなわけないし! アイツは今すぐにとっつ構えてぎったぎったんにした後、全身の毛皮を剥いで八つ裂きにしてやるッ!」

「ふーん……(* ̄- ̄)」

 いやー、ヘイワダナー(棒)


 to be continued……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る