第1話『部活動』 ――苺side
――
「……というわけで、三年生ですが興味があるので部活見学に来ました」
放課後、
机を向かい合わせて座り、一人の女子生徒と話をしていた。
彼女の名前は
「わかったわ、
「うん」
「じゃあ、
「し、白鳥くん! うん! 一緒だったよ!」
どうしてここでいきなり白鳥くんの名前が出てくるの……!?
まさかとは思うけど、わたしがここに見学へ来た理由がバレちゃってる!?
わたしがここへ来た理由――それは、白鳥くんが漫画研究部の部員だからだ。
だから、わたしも部員になれば毎日放課後は一緒に過ごせるようになる、と
ちなみに白鳥くんの部活は、
そんなわたしに、水瀬さんが素敵な提案を持ちかけてくれる。
「じゃあ、白鳥君に紹介をしてもらいましょうか」
「ぜひ!」
身を乗り出すわたしを前に、水瀬さんがクスッと笑った。
「なんだか急にテンション高くなったわね。まあ、いいわ。ちょうど白鳥君が来たわ」
水瀬さんが顔を向けた方向には、教室に挨拶をしながら入ってきた白鳥くんが。
わあ! ど、どうしよう!
思ったより早く白鳥くんが来ちゃった!
でも苺、ここで臆病になってちゃダメよ!
まずは落ち着かなきゃ、ひっひっふー……。
水瀬さんが先に席を立ち、白鳥くんに事情を説明すると、二人してわたしの方を見てきた。
わたしは笑顔を意識して手を振り、彼のもとまで歩いていく。
「よろしくね、白鳥くん!」
◇◆◇◆◇
白鳥くんから部活紹介をしてもらった後、流れでイラストレーターさんの話になった。
小学校の頃はイラストレーターさんなんて全く知らなかったけど、当時の彼の話をメモして、二年かけてしっかりリサーチしてよかった。
そっか、以前はできなかったことが今日はできたんだ。
んふふ……そう実感すると、なんだかすごく嬉しい。
しかし、楽しい時間というものは早く過ぎてしまうもの。
チャイムが鳴り、白鳥くんが残念そうに眉を曇らせて言う。
「……あ、そろそろ部活終わる時間だ」
「あ~、楽しすぎてあっという間だった~!」
「ほんとに? 赤井さんも楽しかった? 僕、一方的に話しちゃってたけど……」
「うん、もちろん楽しかったよ! またこの話しようね」
「じゃあ、入部するってことで――」
「ううん、それはやめておく」
「え……入部しないの?」
きょとんとする白鳥くん。
こんなに
「うん、それはやめておくよ」
「ど、どうして?」
「わたしは描くより、見てるほうが好きなんだなって気付いたから」
白鳥くんをはじめ、漫画研究部の人たちはみんな好きなことに一直線だ。
そんなところに、白鳥くんと一緒にいたいだけという
部活の紹介を聞きながら、そう気づいたのだ。
わたしは、白鳥くんの絵を、白鳥くんが描いている姿を見るだけで充分なんだよ。
そう心の中で呟きつつ、何気なく白鳥くんのクロッキー帳を開いた。
やっぱり白鳥くんの絵は素敵だな……あれ?
この絵の女の子、わたしにそっくり……。制服のデザインも髪形も同じだし。
え、え、じゃあこれってもしかして……っ!?
「あっ……いや、それはそのえっとあのね……っ!!」
白鳥くんが言葉に詰まった様子で、それでも何かを言おうとしている。
その反応を見て確信した。
――やっぱりこの絵のモデル、わたしだぁぁああああ!!!
え、でもどうして!? 白鳥くんどうしてわたしを描いたの!?
というかわたし、ここまで可愛くないよ! 美化されてない!?
ああ、ダメだ。あまりにいきなりのことすぎて、頭がうまく働かない。
今は一刻も早く、この場から立ち去らないと。
わたしはクロッキー帳のページをそっと閉じ、
「うふふ、今度から描くときは言ってね。白鳥くんのためなら、いつでもモデルになるから。じゃあ、また教室でよろしくね」
そうして漫画研究部の教室を出た瞬間、肺に溜まっていた空気をすべて吐き出した。
うわぁぁああああ! やりすぎたぁぁあああ!!!
今のわたし、絶対変だったよね? おかしかったよね?
わたしの絵を描いてもらっていたことが嬉しくてつい変なテンションになっちゃったよ!
明日からどんな顔して話せばいいの!?
うぅ~~~、できるなら今日一日をやり直したい……。
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