第11話『LINE交換』 ――苺side
――
帰りの学活が終わった直後、わたしは白鳥くんの席に行き、意を決して言う。
「もしよかったら、LINE交換してくれないかな?」
「へ……?」
うわぁぁあああ言っちゃった言っちゃった言っちゃった!
もう後戻りはできない! も、もし断れちゃったらどうしよう……っ!
不安な気持ちを表には出さないようににこりと笑い、付け加えるように事情を説明する。
「ほらこの前、二人だけで
すると白鳥くんがぎこちなく
「あ、なるほどねっ! う、うん、いいよ……!」
「やった! ありがとう!」
やったぁぁああああああああ!!!!!
白鳥くんとLINE交換できるんだ!!
わたしたちはそれぞれスマホを取り出してLINEのアプリを開く。
しかしそこで、白鳥くんが戸惑ったように首を
「えっと、どうやって交換すればいいんだっけ……?」
「ちょっとスマホ貸して~」
白鳥くんのスマホを借り、友達登録の画面を出す。
その時に気が付いたけど、彼のアイコンはオムライスだった。
この前オムライスが好きって言ってたけど、なんだか可愛いなぁ。
「アイコン、オムライスだね」
友達登録が完了し、スマホを返しながらそう言うと、白鳥くんの目が一気に輝いた。
「あ、うん! これ行きつけの洋食店のオムライスなんだけど、すごく美味しくてね!」
「へえ、わたしも食べてみたいなぁ」
まるで好きなイラストレーターさんについて話すときのように元気な白鳥くんだった。
彼のオムライス愛はそれほどまでということだろう。
ともあれ、このようにしてわたしは白鳥くんの連絡先をゲットできたのだった。
◇◆◇◆◇
その夜、自室のベッドに倒れ込みながら、わたしは喜びに
「白鳥くんとLINE交換できたぁ……ふへへ~」
LINEを開いてその事実を確認するたびに頬が緩んでしまう。
しかし、いつまでも夢心地でいるわけにもいかない。
わたしが緊張していることを白鳥くんに
完璧美少女として
「わぁああ……どうしようっ! 何て送ればいいんだろう……っ!」
けれども、いざトーク画面を開くと、どうしても最初の一言が浮かんでこなかった。
いつも
とにかく、可愛くて清楚で完璧な文章を……!
そうやって何度も文章を打ち直していた時だった。
赤井苺『こんb』
「あ! 間違って送っちゃったっ!! でも消せばだいじょ――」
間違って送ってしまったメッセージを消すためにタップしたその瞬間、その横に“
「一瞬で既読が付いちゃったー!!」
白鳥くん、メッセージ見るの早すぎるよぉ……!
「ま、まずは訂正のメッセージを……っ!」
たぶん意味が分からなくて困らせちゃってると思うし、急いで訂正のメッセージを送る。
『本当は“こんばんは”って打とうとしたの!』
『うぅ恥ずかしいよぉ・゚・(。>д<。)・゚・』
よ、よし、これでひとまずは完璧美少女を維持できた……かな?
一度スマホを閉じて
――ポロン
え、もう返信が来たの!?
白鳥くん、返すのも早すぎだよ!
スリープにしていた画面に浮かんだメッセージを見て、わたしは
『苺ちゃん好きー!!』
「えっ!?」
いきなりの苺ちゃん呼び!?
そ、そそそそ、それにしゅき、好きって!!!
震える手でスマホを持ち、もう一度画面に浮かんだメッセージをよく見る。
「って、よく見たら咲ちゃんからだった!!」
わたしのバカ!
変な勘違いしちゃった!!
でも咲ちゃん、昨日のメッセージにいきなり返信してくるなんて……。
まあ、いつものことなんだけど。
――ポロン
そんなことをしている内に、本当に白鳥くんからメッセージが返ってきた。
白鳥千尋『あ、そうだったんだね! ちょっとだけびっくりしちゃった』
赤井苺『驚かせちゃって本当にごめんねっ』
白鳥千尋『ううん!』
『えっと、じゃあ、さっそくだけど勉強会の話をしようか?』
赤井苺『うん!』
そうして、わたしたちは放課後の勉強会の日程について話し合った。
普段はそんなことないのだけど、何度も文章を見直していたせいで、一回メッセージを送るのに20分もかけてしまっていた。
うぅ、余裕じゃないことがバレちゃったかな……?
でも、彼におかしな文章を送るのはもっと嫌だったし、これでよかったと思う。
最終的に、わたしたちの勉強会は火・木曜日の放課後に行うこととなった。
白鳥千尋『というわけで、改めてよろしくお願いします、赤井さん!』
赤井苺『こちらこそよろしくだよ、白鳥くん!』
白鳥千尋『それじゃあ、おやすみ』
赤井苺『うん、おやすみ~(o^▽^o)』
白鳥くんとのやり取りが終了し、ベッドの上で横向きに寝転がりながら息を
楽しかった時間はあっという間に過ぎ、もうすぐ日付が変わる時刻である。
「白鳥くんとこんな時間までお話しちゃったぁ……」
「今夜は興奮して寝られないかも」
案の定、そのあと寝る
翌朝、わたしは寝ぼけ
この調子で今日一日もつかとても不安に思いながら、
「ふぁ~」
後ろの方の席で白鳥くんが大きなあくびをした。
もしかして、彼もわたしと同じだったのかな。
そう思うと、嬉しくてつい顔がにやけてしまう。
「赤井さん」
呼ばれて顔を向けると、教室入口に
席を離れ、彼女のもとまで歩み寄る。
「どうしたの、水瀬さん?」
「一限目で使う国語の教科書を忘れてしまったから、よかったら貸してもらえないかしら?」
「うん、もちろんいいよ~」
あくびを
「あら、今日はすごく眠そうね?」
「あ、うん。昨日はなかなか寝付けなくって」
「白鳥くんもなんだかすごく眠そうだけれど、何か関係あるのかしら?」
「えっ!? そ、そんなことは……っ!」
彼女にはわたしの想いも気付かれちゃってるみたいだし、無駄なあがきかも……。
「うふふ、順調なようで安心したわ。さあ、教科書をお願いできるかしら?」
「べ、べつに変なことはしてないからねっ!」
「大丈夫。ちゃんと分かってるわ」
にやにやとする水瀬さん。
うぅ……水瀬さんには絶対に
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