幕間①『お昼休みの苺ちゃん』 ――咲side

―― さきside ――



「あの、赤井あかいさん」


 給食の後の昼休み。

 あたしといちごちゃんがおしゃべりをしていたところへ、白鳥しらとり君が来た。

 何やら苺ちゃんに用事があるみたいだ。


「どうしたの、白鳥くん?」


 苺ちゃんが笑顔で返すと、白鳥君が少し震えた声で言う。


「えっと、今朝言ってた、僕の家に来るって話だけど」


「あ、うん! その話だね!」


 およよ?

 お家に行く? いつの間にやら二人って、付き合ってたのかな?


 白鳥君が遠慮がちな視線を向けながら訊ねる。


「今週と来週の休日はちょっと用事があるから、再来週さらいしゅうでも大丈夫かな?」


「たぶん大丈夫だと思うけど、一応お母さんに確認してみるね!」


「わ、わかった、うん」


「あ、そうそうねえ聞いて! もう取引の瞬間とかすごくわくわくしちゃってさ~」


 苺ちゃんがウキウキとした声音でそう言うと、白鳥君も顔を輝かせた。


「あ~! あれは手に汗握っちゃったよね!」


 え、取引?

 付き合ってるとかじゃなくて、実は二人ってただならぬ関係……?


 苺ちゃんが口元を手で隠してクスクスと笑う。


「まさかあのピンチの場面で、あんなところにじゅうが隠してあるなんて」


「本当に。部下がいい仕事してくれたよね~」


 じゅ、銃……?

 な、なんだろう……? なんだろ、なんだろ!

 まるで二人とも、裏の世界の人のようなお話をしてるんだけど……っ!?


「とにかく次の戦いもすごく楽しみだよ~。そんなわけで、よろしくね、白鳥くん」


「うん」


 白鳥君が自分の席へと戻っていた。

 なるほど、苺ちゃんたちがまさか極道ごくどうの世界に巻き込まれてたなんて……!


「二人って、そういう関係だったんだね……」


 あたしがそう言うと、苺ちゃんがきょとんとする。


「え、そういう関係って? 漫画のおは……」


 あたしは苺ちゃんの肩に手を置いて発言を制した。


「大丈夫。みなまで言わなくてもわかってるから」


「あ……うん、そう?」


「とにかく、頑張ってね、苺ちゃん!」


「よく分からないけど、うん。頑張るね!」


 苺ちゃんにも色々と事情があるんだね。

 まさか苺ちゃんがドラマみたいな世界に生きてるなんて……。

 苺ちゃんがどんな世界の人でも、かげながら応援させてもらうからね!

 頑張って、苺ちゃん。

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