第15話『家庭訪問(後編)』 ――苺side
――
楽しみにしていた時間……だったんだけど、意外にもわたしは
ここ
ウトウトしかけては、首を振って意識を取り戻す。
しかし、すぐにまた
んぅ……このままじゃ
一度顔でも洗って目を覚ましてこよう。
そう思って立ち上がると、白鳥くんが疑問の
「どうしたの、
眠くても笑顔を意識して返す。
「ちょっとお花を
「えっと、場所分かる?」
分からないって言ったらついてきてくれるのかな。
それもいいかもだけど、からかったらきっと可愛い反応が返ってきそう。
「もしかして、ついてきたいの?」
「なっ! そんなわけないよっ」
案の
予想通りの可愛すぎる反応に、思わず頬が緩む。
「うふふ、場所は分かるから大丈夫だよ。ありがとう、白鳥くん」
白鳥くんの部屋を出て洗面所に向かい、顔を洗ってついでにストレッチをしてから2階に戻る。
「ただいま……って、あれ」
やけに静かだと思えば、白鳥くんが丸テーブルに
呼吸に合わせて穏やかに上下する背中。
わたしの声にも無反応だし、どうやら眠っているようである。
そっと白鳥くんの
「わぁ……寝顔可愛い……」
顔が横向きになっているおかげで、その表情がよく見えた。
なんだかちょっと幼く感じるかも。
「ぐっすりだし……ちょっとだけなら……」
白鳥くんの隣に座り、そっと身体を寄せる。
落ち着く温かさを感じた。
一度は消えた眠気が再来する。
「ちょっとだけ……ちょっとだけ……」
◇◆◇◆◇
「あ、あああ、赤井さんっ!!」
白鳥くんに呼ばれて意識が引き戻された。
ちょっと目を
ここ二日間の寝不足のせいかもしれない。
白鳥くんは自分の肩にわたしの頭が乗っていることにびっくりしたような反応で……。
って、わたし、白鳥くんにくっついたまま……っ!!!
しまったぁぁああああ!!!!!
まだわたしが起きてることには気付いてないみたいだけど、こっちから身を寄せたのは明らかだよねっ!!
ど、どうしよう……っ!!
いや、待って。ただの
わたしは少しだけ眠ったふりをし、白鳥くんの様子を
「悪戯しないの?」
「っ!?」
ビクリと身体を震わせる白鳥くん。
「も、もしかして起きてた?」
「うふふ、白鳥くんったらすごく慌てて面白かったぁ~」
「もう、赤井さん~! 意地悪だよ~!」
「えへへ~」
よかったぁ、うまくいったみたい。
でも今の白鳥くんの反応可愛いし、もっと見たくなっちゃったな。
もうちょっとだけ、頑張っちゃおう。
わたしは白鳥くんから離れずにテーブルの上から漫画を取って読み始めた。
本当はドキドキが止まらないし、今にもこの緊張が伝わってしまうんじゃないかと不安だけど。
「って、このまま漫画読むのっ!?」
白鳥くんは若干声が裏返っていた。
「え、ダメ?」
「だ、ダメってわけじゃないけどその……えっとっ!」
「うふふ、白鳥くんって本当に面白いね」
「い、今のも冗談……?」
「ごめんね、ちょっとからかいすぎちゃったね」
も、もうさすがに限界……っ!
これ以上は顔に出ちゃいそうだよぉ……。
わたしは白鳥くんから離れた。
まだ少し顔の赤い白鳥くんが
「ちょ、ちょっと飲み物持ってくるね。お茶で大丈夫?」
「うん、ありがとう」
白鳥くんが部屋を出ていった。
ふぁぁあ~!!!
どうしよう! どうしよう!!
白鳥くんと一緒に寝ちゃった!!!
すごく大胆なことしちゃったよ!!!
白鳥くんは冗談だと受け止めてくれたみたいだけど、戻ってきた彼と普通に顔を合わせられるかすごく不安だよぉ……。
でもなんとか頑張らないと!
わたしは白鳥くんにとって完璧な美少女でいなきゃいけないんだから!
◇◆◇◆◇
その晩、お風呂から上がったわたしは自室のベッドに横になった。
「今日は楽しかったなぁ」
色々ドキドキすることはあったけど、白鳥くんと半日も二人きりで過ごした時間はとても楽しかった。
近いうちにまた一緒に遊びたい。
「そうだ、お礼のLINE送っちゃおうかな」
せっかくのチャンスだし、そうしようっと。
そう思ってスマホのLINEを起動し、白鳥くんとのトークルームを開いたところで、あることに気が付いた。
「あ、アイコンが……」
白鳥くんのLINEのアイコンが変わっていた。
この前まではレストランのオムライスの写真だった。
それが今はなんと、わたしが今日作ったオムライスの写真になっていたのだ
「うぇへへ~」
うわぁ~! 嬉しい!!
すごく嬉しいよぉ~!!
きっと今のわたし、気持ち悪い笑い方してる。
でもそんなこと関係ない。だって嬉しいんだもん。
「また遊ぼうね、白鳥くん」
どうしようもないにやけ顔で、わたしはLINEにメッセージを打ち込むのだった。
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