第2話『委員会活動』 ――苺side

―― いちごside ――



「じゃあ、やりたい委員会のところに名前を書いてください」


 委員会決めの時間がスタートした。

 さっそく友達に何の委員会に入るかたずねられたけど、その応対をする最中さいちゅう、わたしはずっと白鳥しらとりくんの動向にちらちらと目を向けていた。


 委員会活動は当番活動がある。

 つまり、ごく自然なかたちで二人一緒にいられる時間が作れるというわけだ。

 だからなんとしても、白鳥くんとは同じ委員会に入っておきたい。


 っと、どうやら白鳥くんは緑川みどりかわくんと少し話した後、迷わず図書委員会に決めたみたい。

 よし、じゃあわたしも図書委員会に……待って、もうすでにさきちゃんの名前が書いてある。


 一歩遅かった……!

 ……ううん、諦めてたまるものか!

 絶対白鳥くんと同じ委員会に入るんだ!


 わたしは、おしゃべりに来ていた咲ちゃんの手をつかんでお願いする。


「ねえ、咲ちゃん! よかったら図書委員会代わってほしいんだけどっ!」


「い、苺ちゃん、すごい剣幕だね……?」


 気が付けば顔にすごく力が入っていた。

 手でマッサージして表情を緩める。


 うん、これでいつもの可愛いわたし。

 危なかった。さっきの表情を白鳥くんに見られたら嫌われちゃうところだったかも。

 あくまで冷静に。落ち着いて。


「とにかく、お願い、咲ちゃん。どうしても図書委員になりたいの」


「え、どうして?」


 咲ちゃんはきょとんとした顔で首をかしげた。


「えっとその、わたし、本が好きだから!」


「そうだったっけ?」


「こ、この二年ちょっとで好きになったのよ」


 本当はあまり読みません。これからは読むようにします!


「まあ、わたしも楽そうだからって図書委員会を選んだから、別にいいよ~!」


「ほんとに!? ありがとう、咲ちゃん!」


 にこやかに了承してくれた咲ちゃんにお礼を言い、すぐさま二人で黒板に名前を書きに行った。

 その足で白鳥くんの席に立ち寄り、手鏡で髪を少し整えて“今日もわたしは可愛い!”と自分に言い聞かせてから絵を描く彼に声をかける。


「同じ図書委員会だね。よろしくね、白鳥くん!」



   ◇◆◇◆◇



 放課後、図書室での委員会活動が終わり、図書委員長から当番活動の説明を受けたわたしと白鳥くんは、実際に仕事をやってみることに。


 カウンターに入り、わたしはパソコンの前に立つ。

 まずは本の貸し出しの方法を確認し、次は返却の方法を実践じっせん

 けれども、いっぺんに仕事を教えられたせいで、どうやってやるのか忘れてしまった。


「それで返す時が……あれ?」


「その上のところをクリックして返却画面にするんだよ」


 困っていたわたしに助言をしてくれる白鳥くん。

 でも、どこをクリックすればいいのかまだ分からない。


「え、どこ?」


「えーと、マウス貸して」


 白鳥くんがわたしとパソコンの間に入るようにしてマウスを操作しようとする。

 不意に彼の後頭部が目の前に来るという状況に、わたしの心臓が飛びねそうになった。


「あ、わかった!」


 動揺を誤魔化ごまかそうとして、あろうことかわたしはマウスを掴もうとしてしまう。


「っ!?」


 わたしたちの手は重なり、全身に電流が流れたかのようにドキリとした。


 何やってるんだ、わたしはぁぁあああああああ……っ!!!


「ご、ごめんっ!」


 白鳥くんがびっくりして離れてしまった。

 あぅ、もっと彼の手の温もりを感じていたかった……!


 って、ちょっと待って落ち着けわたし!

 彼の前では完璧な美少女でいなきゃなんだから!


 わたしは口元に手を当ててくすりと笑う。


「うふふ」


「ど、どうしたの、赤井さん?」


「白鳥くんの手って、ずっと触っていたいくらい温かいなって思って」


「なっ!!?」


 白鳥くんはさっきよりも驚いた顔でわたしを見つめた。


 うぅ~~~、ずっと触っていたいって攻めすぎたかな!?

 すっごく恥ずかしい!!!


 でも白鳥くんの反応可愛いよぉ……。

 顔から火が出そうなくらい恥ずかしかったけど、この表情が見られたなら頑張ってよかった。

 もうちょっと頑張ってみようかな。


「ねえ白鳥くん、もう一回触っちゃダメ?」


「ダメだよ!!」


 白鳥くんが顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまった。

 照れてるのかな。すごく可愛い。


 わたしはすっかり熱くなってしまった頬に手を当てて冷ましながら、耳まで赤くなった白鳥くんを見て口元をゆるますのだった。

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