第19話『ダブルデート?』 ――苺side
――
「えーと、I列の25番……っと」
映画館内。
チケットとにらめっこをしながら歩いてきた
「って、あれ、
わたしも
「あれ? 白鳥くんっ!? ――あっ! わたし間違ったチケット渡しちゃったんだ!!」
チケットをみんなに配ったのはわたしだから、きっと配り間違えちゃったんだ。
白鳥くんは今頃、そう思ってることだろう。
けれど、本当は違う。
――わたしは、あえて間違えたのである。
だって!
せっかく白鳥くんと一緒に映画に来れたんだもん!!
だから、白鳥くんの隣になりたかったのだ。
前の方の席で、咲ちゃんと
わたしは“変な思惑に巻き込んじゃってごめんね”という意思を込めて、手を合わせた。
と、そこへ緑川くんから白鳥くんにLINEが送られてきたようだ。
「緑川くん? なんだって?」
わたしが
「うん、このままでいこうって」
「うぅ……緑川くんと隣が良かったよね……。間違っちゃってごめんねっ」
「ううんっ! 全然大丈夫だよ! むしろ……」
「むしろ?」
「な、何でもないよ! さあほら、映画始まっちゃうよ! 座ろう!」
「あ、うん! 楽しみだね!」
ちょちょちょっと!!!
むしろの続きがすごく気になるんだけどっ!!!
普通に考えれば、むしろこれでよかった、ということだけど、ポジティブすぎるかなっ?
だけどそうなら嬉しいなぁ! やっぱりちゃんと白鳥くんの口から聞いておきたい!
ううん! 落ち着いてわたしっ!!
白鳥くんの前なんだから、余裕そうで完璧な美少女でいなきゃ!
美少女はこんなことで取り乱したりしないもん!
わたしは小さく息を吐いて、特に気にした素振りも見せず座席に腰を下ろした。
その後、
正直、白鳥くんと隣同士で映画を観ているという事実にドキドキしすぎて、ほとんど映画に集中できなかった!
でも、その時間はわたしにとって、とっても幸せだった。
楽しい時間はすぐに過ぎ去り、あっという間にエンドロールに。
ずっと我慢してきたけど、ついに耐えきれなくなってちらっと白鳥くんの様子を盗み見る。
「……っ!」
すると偶然白鳥くんもこちらを見たらしく、目が合ってしまった。
思わず視線を
危ない危ない……。
うふふ、白鳥くんは目を背けちゃったみたい。
可愛いなぁ。
よし、せっかくだしこのまま攻めちゃお。
けど、どう仕掛けようかな? 恋人同士の映画デートっていえば、エンドロールで……キス?
無理むりムリ!!!!! わたしたちにはまだ早いよっ!!!
じゃ、じゃあ、手を握る……とか?
うぅ……別れ際ならまだしも、こ、この後どんな顔して一緒に過ごせばいいか分からなくなっちゃうよぉ……!!
せめて、もっと仲良くなった時とか……。
……そっか、もっと仲良くなるお誘いをすれば。
わたしは白鳥くんの肩を叩き、そっと耳打ちをする。
「映画、面白かったね」
「うん」
んん~~!!
これだけでもすっごくドキドキしちゃうっ!!!
でも、これくらいは頑張らないとっ!!
わたしは静かに深呼吸し、彼の耳元で囁く。
「今度は二人きりで来よっか?」
「え」
よ、よし……!!
言えた!! 言ったよ!!!
白鳥くんはポカンと口を開けてびっくりしてるみたいだ。
冗談だと思われたりしてないかな?
一応念を押しておこう。
「考えておいてね」
んぁあああやっちゃったぁぁあああ!!!
耳打ちするの忘れただけじゃなく、緊張で喉が渇いて、うまく声が出なかったよぉおお!!
うぅううう恥ずかしいぃ……!!
さすがに我慢しきれず、わたしはスクリーンに顔を戻して、集中しているふりをした。
結局、白鳥くんから答えを聞きそびれてしまった。
し、白鳥くんはオッケーしてくれるのかな……?
ん~、気になるけど聞くのが怖いっ。
でも、頑張れわたし!
◇◆◇◆◇
映画を観た後、わたしたちはファーストフード店で昼食を取り、ゲームセンターで一緒に遊んだ。
そして夕方になり、帰りの電車内。
空いていたおかげでわたしたちは横一列に座ることができた。
けれど、遊び疲れたのかわたし以外の三人は眠ってしまったようだ。
わたしも眠かったけど、起きていた。
寝過ごしてはいけないと思ったのもあるが、それ以上に、隣で眠る白鳥くんが頭を寄せてきたおかげで、鼓動が早鐘を打ち、眠るにも眠れなかったのである。
ああもう幸せ!!!
ずっと電車が駅に着かなきゃいいのに!!
――ガタン
電車が揺れた。
その衝撃で白鳥くんが頭を起こす。
「……あぇ、ごめん……」
白鳥くんは寝ぼけ
いや! ダメだよ白鳥くん!!
「ううん。もうちょっとこのままでもいいんだよ?」
「しょっか、じゃあそうしよ……」
「え」
まさかそんな素直に……!?
あ、白鳥くんがわたしに頭を預けてきたよ……!!
それにさっきより身体が密着してるし!!
あぅわ~!!
緊張でどうかなっちゃいそうだよぉ……!!
結局、みんなの家の最寄り駅までずっとそのままで、家に辿り着いたわたしはクタクタになっていた。
ベッドに倒れ込み、ウトウトしかけたところでLINEの通知が届く。
一応確認しておこうとスマホに手を伸ばした瞬間、わたしの体力はマックスまで回復した。
思わず枕に顔を埋め、足をバタバタさせてしまう。
白鳥『二人きりの映画の件だけど、僕も一緒に行きたいですっ』
放課後の赤井さんはあざと可愛い。 海牛トロロ(烏川さいか) @karasugawa
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