第41話たまちゃんの秘密を知りたくて
仕事終了した俺は、そのまんま直帰せずにエオンへと向かう。
車を走らせる事十五分。
帰宅ラッシュに巻き込まれ到着が遅くなってしまったが、無事に到着する。
駐車場は、仕事終わりに買い物に来た俺のような人達で割と埋まってしまっており、俺は大人しくちょっと遠目のエリアへ駐車した。
特に買い物もないしな。
俺は車を降りて少しだけ駆け足気味にたまちゃんの元へと向かう。
早く聞きたいことがあるし、なにより、早く聞いて帰りたい。
いなりに早く会いたい。
フクリに到着すると、たまちゃんが眠たそうに大きな欠伸をしながら店のレジに頬杖ついて座っていた。
本当、商売人の反面教師だなこの人。
「たまちゃん」
「ん? 尋じゃないか。どうした? 今日はいなりと一緒じゃないのか?」
「今日は個人的な用事。たまちゃんに会いたくて」
たまちゃんに声をかけると、たまちゃんは驚いた顔で俺に手を振る。
そして、キョロキョロ俺の周りを見ていなりがいない事を不思議そうに聞いてきた。
俺は素直に買い物ではない事を告げると、たまちゃんは思案顔で俯き、ニヤリと笑って俺を見た。
「なんだ? 私に会いたいだなんてトキメクような事を言って。私をナンパしに来たのか?」
「ハハッ、寝言は寝て言え」
「こやつめハハハ。仙人の力でぶっ殺すぞ」
「すみません!」
たまちゃんの小ボケに悪態で返すと、倍返しで返ってきた。
物騒すぎる。約束を破った訳でもないのに。
だが、ニコニコ顔で言われたぶっ殺すの言葉のパワーに言い返す事も出来ずすぐさま謝った。
「やれやれ。尋は時々私の事が仙人である事を忘れてるだろう」
「だって、見えないからなあ」
「はあ? この美貌こそが仙人だろうが!」
「仙人なんてハゲでヒゲモジャのお爺ちゃんを想像するわ! なんだ美貌が仙人って、どこ情報だ!」
「私だ。……まあいい、仙人イコール美貌だと今後はインプットしろ」
横暴だ!
そう言い返してやりたい所ではあるが、脱線続きで話が進まない。
俺は言いたい言葉をグッと堪えて不満気に頷いた。
それとは対照的に、俺の肯定を確認した瞬間満足そうに頷くたまちゃん。
しばきたい、この笑顔。
「殊勝な心がけだな。……で、結局何用だ?」
「そうだ、たまちゃんにカチカチの真相を……」
「ふにゃああああああ!?」
たまちゃんが俺に用件を聞き、ようやく本日の用事を伝えた瞬間、たまちゃんが猫みたいな叫び声をあげて耳を出した。
しまった。そういえばカチカチと言うとこうなっちゃうんだった。
お客様全然いない店で良かったけど……、なんかたまちゃんプルプル震えてるし、怒ってるよなあ。
「おう、コラ。ええ度胸しとるやんけ、おおん?」
たまちゃんが古いタイプの関西弁ヤクザの口調で、目に涙を溜めながら俺を睨みつける。
目に涙溜めてる時点でもう怖くないんだよなあ。
「いや、申し訳ない。理由があるんだ」
「ほう、この仙人である私に喧嘩を売るほどの理由か」
「ああ。たまちゃんにその言葉の真相を聞けと、夢で言われた。その夢が誰がなんの為に言ったのかどうしても思い出せないのに、聞かなければならないと思って頭から離れないんだ」
カチカチと言わずにその言葉とぼかしながら、聞かなければならない理由を告げる。
夢だと? 馬鹿にしてるのか? なんて言われるかもしれないが、どうしても頭からこべりついて離れないその言葉を聞かなければならないんだ。
俺は真剣な眼差しで告げると、たまちゃんは頭をがしがしとかいて、嫌そうにだが、真剣な顔で店の奥を指差した。
「店の奥で話すぞ。理由はわかったし、察した。だが、私にとっても話すのもトラウマだし、大切な記憶だ。こっちで話すぞ」
たまちゃんはポニーテールを翻して店の奥へと向かっていく。
理由を察した? 良くわからないけど、察してくれたなら好都合だ。
俺はたまちゃんの後ろをついて行き、店の奥へと入って行った。
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