第20話ようやく婚約

 いなりは俯いてた。


 だが、不意に立ち上がると、俺の隣へと駆けてきた。


 そして、思い切り抱きつき俺の胸に顔を埋めた。


 姿勢を崩しそうになったが、いなりが倒れないよう踏ん張る。


 いなりの身体は小刻みに震えていた。


 俺は何も言わずにいなりを抱きしめると、いなりはそっとその顔を上げた。


 その表情は涙に濡れていて、それはそれは綺麗な女神がそこにはいた。







「妾……! 妾……! 尋を、心から愛してる!」










 震える声音、背中に回された腕、触れ合う唇。











 俺は、こう思った。俺も、心から愛してる。




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