第32話可愛い自分を見て欲しい
「ふいーさっぱりしたのじゃー!」
バスタオルで髪を乾かしながら、いなりが寝室に入ってくる。
先日買ったピンク色のパジャマが可愛らしさを演出してるのに対し、髪の乾かし方が相変わらず男らしい。
ゴシゴシと擦っていて、髪が痛みそうだ。
だが、そんなことよりもだ。写真の真相を聞かねば。
「いなりー、つかぬ事をお伺いするがあの写真ってなんなの?」
「はてー? なーんのことかのう?」
俺が写真の真相を尋ねると、いなりは明後日の方向を向いて鳴ってない口笛を吹き始める。
なんて古典的なんだ。
動揺してるのかは分からんが明後日の方向を向いた目はおどおどとしており、明後日どころか明々後日の方向まで動いていきそうだ。
「見せた方がいいか? この写真なんだが」
「わー! み、見せなくても良い、わかっておる! は、恥ずかしいんじゃから尋ねるんじゃないのじゃ」
俺がいなりのトーク画面から送られた写真を表示していなりに見せると、いなりは慌てて写真を送って事を認める。
どうやら恥ずかしいから否定したみたいだが、恥ずかしいならなんで送ったんだと、素朴な疑問が生まれる。
「いなり、ならなんで写真送ってきたの?」
可愛いいなりの写真は、ありがたい事に目の保養になるから迷惑どころか嬉しい。
でも、真意がわからない。なので、直接質問をぶつけてみる。
「……だって、尋の撮った妾の写真、全然可愛くなかったのじゃ。……どうせなら、可愛く撮れたやつを持ってて欲しくて」
ボソボソと呟くように、自身のパジャマの端ギュッと摘んで真相を白状するいなり。
その声は恥ずかしさのあまりに今にも消え入りそうだ。
つまり、真相は可愛く撮れたいなりの写真を所持して欲しいという事なんだろう。
いやはや全く、可愛すぎるだろ!
ほんと、いなりは昨日までの可愛いを翌日には軽々と超えやがって毎日毎日可愛くて愛おしくなるじゃないか!
ただでさえカンストした可愛さがカンストをカンストするという訳わからない状態にすらなってる。
自分で思っててなんだけど、つまりはうちのいなりは可愛いという事だ。
頭の中で弾き出した答えは至ってシンプル。
目の前の可愛い可愛いいなりに、鼻血が出そうなくらいの気持ちを抑えてにこやかに微笑みかけた。
「そっか、ありがとういなり。すごく可愛くて、見てるだけで幸せになれるよ」
自分的には百点満点の返答が出来たと思う。
叫ばなかったし、鼻血出さなかった時点で百二十点あげたいくらいだ。
そして、いなりはというと、俺の返答を聞くや否やパアッとLEDの照明が明るく輝くかのような笑顔を見せた。
「良かったのじゃ。いきなり送ったから、尋が妾をひいたりしていたらどうしようかと思ったのじゃ」
「ひいたりはしないかな? 惹かれはするけど」
「ひ、惹かれ……。も、もう、尋は妾を照らさす天才じゃな。恥ずかしいからやめるのじゃ!」
いなりは顔を赤くして、俺の台詞に抗議してきた。
曰く、俺はいなりを照らさせる天才なんだそうだ。
……どの口が言ってるんだ?
ちょっぴり呆れた視線をいなりにぶつけたが、いなりは顔を赤くして俺から視線を逸らしていた。
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