第38話お昼休みといなり

 昼食を食べ終えた俺は、朝にヨービックを奢り、自分の缶コーヒーを購入して一度自分の車に戻る。


 ドアを閉めるや否や、俺はスマホを取り出しラインを開いた。


 表示される通知に思わずにやける。


 そう、いなりからのラインでにやけてしまうから、俺は休憩を車でとることにしたのだ。


 ぽこっと電子音がなり、いなりの無機質なプロフィール画像から吹き出しが表示される。


『ひろ、しごとがんばって』


 たった一文。平仮名だけで書かれた十文字にも満たないその一文の嬉しさといったら、天にものぼる気持ちだ。


 俺は速攻でスマホをタップして返信を打ち込む。


『ありがとうな! 頑張れる!』


 淡白な返信ではあるかもしれないが、こんな何気ないやり取りが嬉しい。


 俺は満足して送信をタップすると、缶コーヒーのプルタブを開けた。


 一口グビリと飲んで、また画面に視線を落とすと既読がついていた。


 ……え、既読? 早くない?


『ひろー。いま、へんしんのれんしゅうしてたらひろからきた。うれしい( ^ω^ )』


 漢字はうてないのに顔文字をうてるようになったいなりの文に、少し笑ってしまう。


 今、いなりの事を見れないからわからないけど、四苦八苦しながらもニコニコ顔でうってるのだろうか。


 いなりの事を考えると本当ににやけちゃうな。


『いなりが嬉しいと俺も嬉しいお( ^ω^ )』


 俺もいなりと同じ顔文字を使って返信をうつ。


 その際、誤字をしてたの気付かず、変な誤字が画面に表示されていた。


 ちょっと恥ずかしいな。なんて思ってたら、すぐに既読が表示される。


 ああ、ちょっとはいじられてしまうかもしれない。恥ずかしいなあ。


 俺はコーヒーを口に含みながら、羞恥心を覚えてると、また返信を告げる電子音が鳴った。


『わらわもうれしいお( ^ω^ )』


 心の中の俺が、いなりの返信を見た瞬間尊さのあまりに吐血した。


 ただのミスった変な語尾なのに、何も知らずに使ういなりを想像したらめちゃくちゃ可愛いじゃないか。


 ああ、甘い気分になる。コーヒー飲んでるはずなのに勝手にカフェオレになってやがる。


 いなりは離れていても俺を幸せにする天才だな。


『今から仕事戻るね! いなり、ありがとう』


 いなり分チャージ完了した俺は、仕事に戻る旨を伝えると缶コーヒーを全て胃に流し込んだ。


 元気百倍だ。午後からも頑張る!


 気合いを入れ直し車から出た瞬間、もう一度返信を告げる電子音がなる。


 最後に見ておくか。と、画面を開いた瞬間、俺の元気は千倍と、ゼロが一桁増えるのであった。


『ひろ、がんばって。ひろ、すき」

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