第17話いなりは辱められる
「あー! 楽しかったのじゃー!」
「あー……。疲れた……」
両極端のテンションで帰宅するいなりと俺。
いなりはご機嫌で玄関の扉を開けた瞬間に耳を出し、大きく万歳するように手をあげた。
俺は指が引きちぎれそうな重さの袋を抱えて廊下にドサドサと袋を落とした。
そのどれもがいなりのもの。
袋の表面のほとんどがフクリという表示がなされている。
そう、たまちゃんのお店でいなりの服を買い漁った結果である。
下着も普段着もパジャマもよそ行きも全て買い揃えた。
お値段なんと、二万円なり。
かなり安いと思うだろ? 服を袋いっぱいパンパンに買ってるのに。
……でも、下着が八割占めてるんだ。
なんだよ、ブラジャーとショーツで一万六千円って。
それ以外は安くしとくって言ってもらって本当に引くほど安くなったのに下着ってこんな高いの?
レシートの印字には、勝負下着セット一万六千円、その他四千円という雑にも程がある印字がなされている。
たまちゃんにこれが一番高いよ。なんとブラ、ショーツのセットてま八割占めてるからね。と言われて、レシート見たらこれだもの。
女性の下着ってこんな高いのか。破産するかもしれない。下着貯金とかした方がいいのだろうか。
「尋、どうしたのじゃ? 疲れたのかのう? 妾の服を買ったからもしかしてお金を使わせすぎたかのう」
「あ、いや、服はめっちゃ安かった。あり得ない値段で買えたくらいだ。しかし、ちょっとその、言いにくいんだけど下着を一着ずつしか買ってないのに値段が高いなと思っただけでな」
「え? 妾下着は何点か買ったのじゃよ? 流石に一着じゃちときついからのう」
心配そうに、俺を覗き込むいなりにちょっとオブラートに包みながら一着しか購入していない下着が高かった事を告げる。
しかしながら、いなりは下着を何点も買ったと主張した。……どういう事だ?
「え、じゃあ勝負下着ってなに?」
「なっ……!」
俺がぽろっと疑問を口にすると、いなりが瞬間的に顔を赤くして耳をピンとたてる。
さらに驚きのあまりなのか尻尾もズボンの隙間から飛び出した。
「なんで勝負下着の事を知ってるんじゃ! そ、そそそ、その、その、あの、えっと……うわあああ」
いなりは顔を手で押さえてうずくまり、悶えた声を漏らす。
その頭からは湯気が出てるが如く、すっかりと熱をおびていた。
「だ、大丈夫?」
「ふ、ふはは。わ、妾は尋をその気にさせる為なら手段を選ばないのじゃよ! 悩殺してやろうかと思ったからのう! まあ、たまちゃんに尋に内緒にしてと言ったのにバラされたのは誤算じゃったけどな!」
半ばヤケクソ気味に笑いながらとんでもない事をのたまういなりがちょっぴり可哀想になる。
俺の頭の中にたまちゃんが現れて、いなりにザマアミロと舌を出していた。
しかし、俺を悩殺する下着か。妄想が膨らむじゃないか。
それだけで疲れが吹き飛ぶ。ありがとう、たまちゃん。
「うう……。たまちゃんめ……覚えておれ」
涙目で恨み言を呟くいなりに申し訳ないと思いつつ、いなりの勝負下着に想いを馳せて、俺は妄想を楽しんだ。
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