第19話 慈悲を乞う奴隷の少女、主人はいつだってひたむきに罰を下す。あとバカがやっと気づいた


奴隷少女「ご主人様お許し下さい!」


 華奢な少女の声が、悲痛に響く。


主人「いいや許さんぞこのゴミ奴隷が!」


 肥満体の中年は、その光景に怒号を飛ばす。


奴隷少女「どうか、どうかお慈悲を!」 


 少女の頬は涙で塗れていた。泥で汚れた古いメイド服。


主人「よくも俺が寝ている間に富士演習場に放置してくれたな!

一○イチマル式戦車に轢かれて死ぬかと思ったわ! 消力シャオリーが使えなければどうなっていたことか!」


奴隷少女「申し訳ありません御主人様! もう二度といたしませんから!

……やはり国内展開のために橋を渡れるよう軽量化された日本戦車では足りなかったか」


「もはや反省の言葉さえやる気がないな貴様!

やはりお前には痛みをもって教えてやらねばならんかこのゴミ奴隷がああ!!」


 △ △ △


主人「今日は唐揚げだ!」


奴隷少女「わぁい!」


主人「ただしお前だけはタルタルソース抜きだ! タルタルソースのない唐揚げなど、クリープのないコーヒー、鳥山明のいないドラクエ、デンプシーロールの打てない一歩、キックしない仮面ライダーのようなものよ!」


奴隷少女「最近の仮面ライダーあんまキックしないらしいですよ」


主人「だから平成生まれはダメなんだ! なにかっていうとすぐ新しい武器に頼りやがって!

さあこのタルタルソースレスに絶望しろクソ奴隷が!」


奴隷少女「でも唐揚げにタルタルソースって普通いらなく無いですか?」


主人「え」


奴隷少女「ていうか、唐揚げにタルタルソースって御主人様はなにか重篤な脳のご病気なのですか」


主人「え」



 △ △ △


奴隷少女「ご主人様お許し下さい!」


 華奢な少女の声が、悲痛に響く。


主人「いいや許さんぞこのゴミ奴隷が!」


 肥満体の中年は、その光景に怒号を飛ばす。


奴隷少女「どうか、どうかお慈悲を!」 


 少女の頬は涙で塗れていた。泥で汚れた古いメイド服。


主人「よくも俺が寝ている間に勝手に相撲部屋に入門させてくれたな! もう四股名まで決められてたぞ!」


奴隷少女「申し訳ありません御主人様!

しかし私はモンゴル勢が幅を効かせる現在の角界に危機感を持ち、ここは御主人様の素質によって現状を打破するべきと思ったのです!」


主人「稀勢の里がいるから相撲界は大丈夫だよこのバカ奴隷があ!

もはや許さんぞこのバカ奴隷が! 身の程を思い知らせてやる!」


 △ △ △


主人「ほいゴキブリ」ッポイ


奴隷少女「ひいいいいい!!」ジタバタ


主人「はっはっは! いいぞ苦しめ! 脅えて後悔しろ! まあそのゴキブリはオモチャなんだが」


奴隷少女「ひいいいいい!!」ピンッ


主人「おいバカ手榴弾のピン抜くな戻せ投げるなゴミ奴」


 ド ガ ン ッ



 △ △ △


青年「あなたの経歴を改めて探らせてもらった」


主人「今度は興信所の真似事か」


青年「あなたの行ったと思われる犯罪行為には、あなたは関与していなかった」


青年「それどころか多数の児童施設に多大な寄付をしている篤志家だった。名前を知られていないのは、あなたが自分の名前をほとんど出さないから」


主人「金を持っていると寄付をしろと五月蠅くてな。すこしばかり恵んで黙らせてやっただけのこと。それだけのことに名乗るのも煩わしい」


青年「銅像を造る話もあったのに。その建造費用さえ寄付に回させた」


主人「あんなものはイタズラの標的か、ハトやカラスの糞だらけになるのがオチだ」


青年「あなたが子供達の前へ行ったスピーチ。子供達や未来への可能性の希望を語る、とても素晴らしいものでした」


主人「ふん、作家に金を出して原稿を書かせた価値はあったようだな」


青年「だからこそわからない……あなたが奴隷を所有することは、世間の社会評価的にはあなたのマイナスにしかならない。

そうまでしてなぜあの少女を物として扱い続けるのか」


主人「下らぬ人事ばかりに首をつっこむな若造……

いいか、金持ちでいて良かったと思える数少ないことの一つはな」


主人「そういう世間とかいう有象無象どもの口先に踊らされずに済むことだ」


主人「俺が俺のものをどうしようと俺の自由。誰にも口は出させん」


青年「しかし、それではあなたは世間から」


主人「くどい! とっとと帰れ若造! 何度も同じことを言わせ」



 ド ガ ン ッ


青年「ああ、僕の車が!」


主人「……あぁのバカ奴隷がああ!!」


青年「え」



 △ △ △


主人「あれほど人の車に爆弾仕掛けるのは止めろといったろうが!」


奴隷少女「申し訳ありません御主人様!

でも御主人様がなんだかイヤそうにしてたので、ああしたらお客様も空気読んで帰ってくれるのではと」


主人「ぶぶ漬け感覚で爆弾使うのやめろアホ奴隷がああ!!」

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