第13話 慈悲を乞う奴隷の少女、主人はうんざりしながら罰を下す。あと無能刑事がやってきたぞ

奴隷少女「ご主人様お許し下さい!」


 華奢な少女の声が、悲痛に響く。


主人「いいや許さんぞこのゴミ奴隷が!」


 肥満体の中年は、その光景に怒号を飛ばす。


奴隷少女「どうか、どうかお慈悲を!」 


 少女の頬は涙で塗れていた。泥で汚れた古いメイド服。


主人「よくもトイレのウォシュレットをこっそりウォータージェットカッターと交換してくれたな! おかげで俺のマイホールが傷だらけの女神だ! 血が止まんねえぞ! どうすんだよこれ!」


奴隷少女「もうしわけありません御主人様! もう二度といたしません!

……なんか翼の折れたエンジェルみたいな言い回しを汚いものにつけるのやめましょうよ。それにアレですよ裂けて広がったほうが豪快な人みたいなイメージになりませんか」


主人「アレは比喩表現でデカいっていってるだけで実際にガバガバなわけじゃねぇよ!

もう許さねえからなこのサイコパスが! 今日という今日は徹底的にやってやるこのクソ奴隷があああ!」


△ △ △


主人「今までは寿司は週二回特上を出前してもらってましたが」


奴隷少女「はい」


主人「これからは月二回で並にします」


奴隷少女「御主人様私が悪うございましたお許しください」


主人「許さん!それと毎日風呂上がりにハーゲンダッツやってたが、あれもガリガリ君リッチに格下げする!」


奴隷少女「お許しください御主人様ああああ!!」


主人「うるさい! そのまま後悔に苦しめゴミ奴隷がああ!!」


△ △ △


奴隷少女「ご主人様お許し下さい!」


 華奢な少女の声が、悲痛に響く。


主人「いいや許さんぞこのゴミ奴隷が!」


 肥満体の中年は、その光景に怒号を飛ばす。


奴隷少女「どうか、どうかお慈悲を!」 


 少女の頬は涙で塗れていた。泥で汚れた古いメイド服。


主人「よくも俺のパラシュートを作動不能にしてくれたな!

五点着地方を使えなければ全身打撲で死んでいたぞこのゴミ奴隷が!」


奴隷少女「もう二度といたしません! お許しください御主人様! それといくら五点着地方でも高度三千メートルからの落下では普通意味がないのでは……」


主人「うるせぇ無傷で着地できたから五点着地方は凄いんだよ!

そんなことよりお前に罰を与えて根性叩き直すほうが先だこのボケ奴隷がああ!!」


△ △ △


主人「はいこのメントスを口に含んで」


奴隷少女「はい」パクッ


主人「はいそこでコーラ飲んで」


奴隷少女「はい」ゴクゴク


主人「するとメントスの成分とコーラが反応して急激な発泡を!」


奴隷少女「はい」ガシッ


主人「え、ちょなんで俺の頭掴んで顔の前に引き寄せてんのってちょやめなにを」


ブウウウウウウウウウウウ


主人「あああああああ!!このゴミ奴隷がああ!!」


△ △ △


刑事「この写真の少女、見覚えありますよね?」


主人「さぁ、そんなやつは知らんな」


刑事「……せめて写真を見てから言ってくれませんかね」


主人「無辜の市民が知らんと言ってるんだよ、刑事さん?」


刑事「この対戦車ロケットを担いでいる少女は、とあるテロ組織で育てられた人間です」


刑事「幼いころからテロリストとなる思想と戦闘の教育を受けてきました」


刑事「テロ組織は潰滅されましたが、現在メンバーではその少女だけが逃走中のままです」


刑事「この少女に、あなたは見覚えがあるのではないですか」


主人「知らん」


刑事「あの奴隷の少女、彼女は」


主人「あれは無能を絵に描いたようなやつだ。RPGなんぞ使わせたら自爆するだけだ。そんなやつにテロ行為などできるか!」


刑事「……彼女とはどこで出会ったのですか」


主人「雨の中で、ひとりでに立っていたのを拾った。無能すぎて前の屋敷を追い出されて途方にくれていたと言っていた」


刑事「あなたは……それが嘘だと気づいて」


主人「あれの前歴など知ったことか! 俺のものをどう使おうと俺の勝手だろう! そんなテロリストはどこぞで野垂れ死にしてるだろうよ!

それにな、刑事さん。俺はそのテロリストの少女など顔も知らないが……

何も知らん子供が、大人からそれが正しいと教育され、今度は別の大人から罪を償えと責め立てられる。酷く寒々しい光景とは思わんかね?」


刑事「……あなたが語りたいこと、矛盾を感じていることは自分もわかります。ですが、自分は警察官なのです。個人としての感情や理屈ではなく、法律としての理論により犯人を逮捕し裁きの場へ連れて行く役割を全うすることが全てです」


主人「……君は、つまらん男だな」


刑事「よくおわかりで。いつも妻に言われますよ」


主人「わかるさ、俺もつまらない男だからな。……さあ、つまらない男同士の会話などしてもしょうがない。帰ってくれ刑事さん」




主人「……いるんだろ、奴隷」


奴隷少女「あの、御主人様、その、私は」


主人「お前の過去など、俺の知ったことか」


奴隷少女「あの、」


主人「お前のは俺のものだ。死ぬまでここでこき使ってやるこのゴミ」


アナウンサー『臨時ニュースをお知らせします』 


主人「え」


アナウンサー『先ほど、テロリストとして指名手配されていた少女が逮捕されました』


主人「……え、なにこれ」


奴隷少女「だからさっきの写真は私じゃないと言おうとしたんですけど」


主人「なんだこのオチは!? さっきの刑事が無能なだけじゃねぇかチクショオ!」


奴隷少女「御主人様も写真見ないで話進めるからですよ」


主人「うっせうっせバーカ!知るかこのゴミ奴隷がああ!!」

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