第46話 慈悲を乞う奴隷の少女、主人はスピリチュアルな方向で罰を下す


奴隷少女「ご主人様お許し下さい!」


 華奢な少女の声が、悲痛に響く。


主人「いいや許さんぞこのゴミ奴隷が!」


 肥満体の中年は、その光景に怒号を飛ばす。


奴隷少女「どうか、どうかお慈悲を!」 


 少女の頬は涙で濡れていた。泥で汚れた古いメイド服。


主人「慈悲じゃねぇよこの産廃奴隷がぁ! よくこの俺が寝てる間に心霊現象で何人もの霊能力者を返り討ちにしてる廃病院に縛って放置してくれたなぁぁ!! 俺が寺生まれでなければ憑き殺されていたところだ!!」


奴隷少女「もうしわけありませんご主人様! でもご主人様が『最近健康診断行ってなかったなぁ』と仰っていたので病院にお送りしようと思ったのですが場所を間違えてしまいまして!」


主人「あの廃病院の近くにある病院は動物病院しかねぇぞゲロボケ奴隷!! たまたま葬式帰りだったからポケットにお清めの塩があって助かったわ! 拳に塩を刷り込んでぶん殴って悪霊退散させて脱出できたから良かったものの、どうしてやろうか!」


奴隷少女「え、悪霊って手に塩つけたら殴れるものなんですか?」


主人「いわゆる生活の知恵、ライフハックというやつだな! 脚に刷り込んで四の字固めしてやったらすぐに泣き入れて土下座しやがったぞ! やっぱいつまでも未練がましく成仏できないやつは根性がない!」


奴隷少女「幽霊なのに脚あったんですか……?」


主人「うるせぇなやったらできたんだよ!! お前はなぜこれだけ罰を受けても反省しないのか……やはり暴力では人間は変わらないということか」


奴隷少女「それご主人様にも刺さる言葉では? 主に物理的な方向で」


主人「なあ奴隷よ。人間関係で好かれるコツは、周囲の人間を誉めることだそうだ。けなされても人間のメンタルには悪い影響しか働かない。誉められ評価されることで人間は良い方向に変わるという」


奴隷少女「はあ」


主人「だから試しにお互いをほめ合ってみよう。まず俺からな。お前は多少見てくれはいいんだし、物覚えもいいから頭も悪くない。変なところでツテをつくる行動力もある。手先は器用なんだしその才能をもう少しいいことに生かせばいいんだ」


奴隷少女「はあ」


主人「はぁ、じゃねぇよやる気ねぇなオメエは……とにかくお前だっていいところはあるんだからもう少し人の役に立つ方向に生かせ。さあ俺は誉めたから次はお前の番だ。なにか俺を誉めてみろ」


奴隷少女「えぇと、いざやれとやれと言われるとなんだか恥ずかしいですね。ご主人様の良いところは沢山あると思いますけど、まずは、ええっと」


主人「……」


奴隷少女「えーと、んーと」


主人「……」


奴隷少女「あー、えーと」


主人「……」


奴隷少女「うーん、えーと」


主人「……思いつくのにそんな時間かかることか?」


奴隷少女「あ、ご主人様はちゃんと二足歩行してて偉いと思います!」


主人「まずそこからか」


奴隷少女「あと二酸化炭素吸って酸素吐いてるところですね」


主人「やってねぇよそんなこと。逆だ逆。俺は植物か」


奴隷少女「それから美味しい寿司食べさせてくれるところです」


主人「それ寿司屋誉めてるだけだよな」


奴隷少女「課金も月十万まで許してくれる優しいところとか」


主人「許してねぇし五千円までだっつってんだろどさくさ紛れに増やそうとしてんじゃねぇぞ」


奴隷少女「あとなにしても死なないところですね」


主人「そうだなお前がそれをさんざん試してくれてるからなぁ! 何一つ誉めてねぇしまったく反省してねぇぞ今度こそはきっちり仕置きしてやるから覚悟しろよこのドブ奴隷がぁ!!」


奴隷少女「ああ! お許しくださいご主人様!!」



 △ △ △


主人「くらえファンク一家殿下の宝刀、スピニングトーホールド!!」グルングルン


奴隷少女「あああああ!!! 膝と足首!! 膝と足首がギリギリと苛まれる!!」ジタバタ


主人「そのまま流れるように脚四の字固めに移行!!」ギリギリ


奴隷少女「ギブギブギブ痛い痛い痛い!!」


主人「ふはははは!!このまましばらく苦しんで反省しろこのボケ奴隷がぁ!!」ギリギリ


奴隷少女「痛い痛い!! ……からの四の字をひっくり返してぇ」グルン


主人「え」グルン


奴隷少女「返し技の裏の四の字固め!」ギリギリ


主人「あああああああ!!! いででででギブギブギブ!!!! おのれこのゴミ奴隷がぁあああ!!」



 △ △ △


主人「焼けたぞ奴隷。ほれ食え」


奴隷少女「……これ食べれるんでしょうか?」


主人「わからん。だがこの大きさの二足歩行する爬虫類らしき生物など地球上のどこにも存在はしていないはずだ。……見た目から恐らく恐竜の生き残りかもしれんなぁ。とっさの少林寺拳法が通用してことなきを得たが」


奴隷少女「こんな秘境の森の中にまさか恐竜が生き残ってたなんて……」


主人「さすがギアナ高地だな。しばらくは救助を待つためにサバイバルしかない。まあ慣れたもんだこういうことはな」


奴隷少女「ご主人様、私怖いです」


主人「心配するな。きっと救助は来る。外敵に出会わず、それまでの食料や水の確保さえしておけば問題ないはずだ」


奴隷少女「ご主人様はやっぱり頼りになりますねえ! ご主人様と一緒で私良かったです!」


主人「はっはっは、こやつめこんなときだけそんな口を効きおってからに」


奴隷少女「あははは! もーご主人様ったら!」


主人「はっはっは」


奴隷少女「あははは!」


主人「はっはっは」


奴隷少女「あははは!」


主人「はっはっは」


奴隷少女「あはは」


主人「なにがっ!! おかしぃっっっっ!!!!???」ポコッ


奴隷少女「痛い! ぶった!? ご主人様がぶった!! 暴力! 暴力主人!!」


主人「うるせぇよこの負の遺産奴隷がよぉおお!!? 俺が寝てる間にギアナ高地に運びやがってよおお! ヘリが事故で墜落したからお前まで遭難するとはな! 聞きしに勝る愚か奴隷だな!!」


奴隷少女「すいませんご主人様! ご主人様が「土佐で新鮮なカツオのたたき食べたいなぁ」とおっしゃっていたものでサプライズしようと思って」


主人「ギアナ高地はギアナ高知じゃねぇよボケ奴隷がぁ!! もう許さねぇからな帰ったらめちゃくちゃ仕置きしてやるぞテメェ!!」


奴隷少女「お許し下さいご主人様!!」


 △ △ △


主人「はい椅子に縛り付けるー」


奴隷少女「縛り付けられるー」


主人「はい対BC装備の科学防護服を着てー」


奴隷少女「え」


主人「はい七輪置いてくさや焼くー」パタパタ


奴隷少女「う、ゲホゲホゲホ!!臭い臭い!!」ジタバタ


主人「そのままシュールストレミング解放」ブシュー


奴隷少女「ああああああああ!!!! 人生三度目ええええ!!!」


主人「デザートにドリアンもやろう!!食え!!」


奴隷少女「もう嗅覚麻痺してなに食べてるかわからない……」モグモグ


主人「この後は奴隷男の娘YouTuber企画でエスキモーのキビヤック作りにも参加してもらう! 今日という今日は徹底的にやってやるからなぁこの臭奴隷がぁ!!」 


奴隷少女「お許し下さいご主人様ぁ!!!」



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