第16話 慈悲を乞う奴隷の少女、主人は流れ作業気味に罰を下す。あとバカがまためんどくさくなる
青年「あの男のTwitter……」
・今日は腹パン協会というサイトを見つけた!
・怪我をさせずに苦しみだけ与える腹パンを打てるらしい
・あのクソ奴隷のお仕置きにぴったりだ!
青年「こんなことを……やはりあの男に人間の心はない!」
・腹パン協会と連絡が取れたぞ! メール一本で腹パン職人をお届けしてくれるらしい! 超便利! 見てろクソ奴隷め!
・いいね!が100溜まったら腹パンで苦しんでるうちのクソ奴隷の写真見せるよ!
青年「いいねが1000を越えてる……く、人間のクズに集まるやつはやはりクズか!」
・腹パンめっちゃきつかった死ぬかと思った…
青年「……なんであの娘じゃなくてゲロ吐いてるあの男の汚い写真が写ってるんだ?」
△ △ △
青年「あの男のやっていることは紛れもなく人間の尊厳に触れる行為です。あんな少女を物のように扱い、卑劣な虐待を与え支配しています」
富豪「ごめんね、うんちょっとなにを言ってるかわからない」
青年「あなたは一応はあの男の友人なはずだ。ならばあの男がやっている虐待を止めることができたはずだ!」
富豪「いやー、虐待……? いやまぁまずいカレー食わせるのはそりゃまあ虐待といえば虐待のような」
青年「まずいカレー……? なにか拷問か何かの暗喩ですか」
富豪「いやまずいカレーはそのまままずいカレーで」
青年「カレーがまずいうまいじゃない、今はあの娘を助け出すための話がしたいんです!」
富豪「やだこの子人の話聞いてない……!」
△ △ △
奴隷少女「ご主人様お許し下さい!」
華奢な少女の声が、悲痛に響く。
主人「いいや許さんぞこのゴミ奴隷が!」
肥満体の中年は、その光景に怒号を飛ばす。
奴隷少女「どうか、どうかお慈悲を!」
少女の頬は涙で塗れていた。泥で汚れた古いメイド服。
主人「お前なああ! 俺が十年かけて投稿してやっと採用されたタモリ倶楽部の空耳アワーで、初めてもらえたタモリさんのサイン入りのTシャツをよくもヤフオクで売りやがったなあああ!
ゆ゛る゛さ゛ん゛ぞおおお! クソ奴隷があ!」
奴隷少女「申し訳ありません! もう二度といたしませんから!
でも隣にいるもじゃもじゃの人のサイン入りのやつと、なぎら健壱のサイン入りのコースターはちゃんと残してありますよ! 安心してください!」
主人「そっちは別にいらないんだよおおおおこのゴミ奴隷がああああ!
今日こそは徹底的に罰してやるううう!」
△ △ △
主人「まずデビルマンな」
奴隷少女「うぅ……いきなり大物」
主人「それからテラフォーマー」
奴隷少女「キツイ……」
主人「さらにハリウッド版ドラゴンボール……」
奴隷少女「それは反則でしょお……」
主人「もいっちょ行こう。シティーハンター」
奴隷少女「これはジャッキー映画としてみれば別に」
主人「そしてガッチャマン」
奴隷少女「ああぁ……これはキツイ」
主人「漫画の実写化した映画地獄だ! たっぷり楽しめこのクソ奴隷があ!」
△ △ △
青年「あなたの今までの行いを、様々な人に掛け合って白日の下に晒す。そして正しい罰を受けてもらう! 必ずだ!」
主人「なにを言いにきたかと思えばそんなことか……暇なやつめ。下らぬことに時間をかけるなら本業に勤しめこのバカものが」
青年「なんとでもいうがいい! お前の今までに行ってきた犯罪行為の数々……
エベレスト山頂から人を突き落とす! 地雷原に置き去りにする! 放火! そして爆弾による僕への脅迫!
それら全てを白日の下にしてやる!」
主人「え」
青年「一体どれほどの人々がお前の悪魔のような行為の犠牲になったのか!」
主人「え、ちょ、待って待って。なに? 全部俺のせいに」
青年「そしてあの少女への虐待…なんか、まずいカレー?かなにかがどうたらということをしていると」
主人「俺のカレーはマズくねぇよバカやろうが!」
青年「え」
主人「まずなぁ! スジ肉は二日かけてコトコト煮込んでるの!
あと玉ねぎは六時間かけて炒めてる!」
青年「あの、そういう話じゃなくて」
主人「スパイスは現地で厳選したやつを買ってる! 調合もやってるぞ! そして各種野菜と子牛の骨から取ったスープを合わせ」
青年「あの、ちょっと」
主人「ルーは小麦粉から炒めてスパイスを合わせ、オーブンでゆっくりと火を入れながら炒めている!」
青年「だめだ、錯乱して話にならない……僕はもう帰らせていただく!」
主人「待てよ! 俺のカレー食って……チッ、行っちまった!」
奴隷少女「あの御主人様……お客様はお帰りですか?」
主人「あ、あぁ……そうだ、今夜はカレーにしてやる! 前よりももっと旨いカレーができたからな。今日こそは旨いと言わせて」
奴隷少女「御主人様のカレーよりココイチのカツカレーにチーズとエビフライトッピングしたやつのほうが百倍旨いので私は遠慮させて頂きます」
主人「なあああああああああ!!!」(発狂)
奴隷少女「ええ、食べなきゃだめですか……」
主人「ほんとイヤそうな顔すんなよ、すっげぇ傷つくわ! ほれ一口だけでも食って見ろって」
奴隷少女「わかりました……あ、トッピングいいですか」
主人「……まあそのくらいは許してやるか。なんだよ」
奴隷少女「納豆」
主人「元の味台無しいいいいい!!」
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