第35話 慈悲を乞う奴隷の少女、主人はチープなスリル的ななにかに身を委ねたりしながら明日に怯えたりなんだりして罰を下す
奴隷少女「ご主人様お許し下さい!」
華奢な少女の声が、悲痛に響く。
主人「いいや許さんぞこのゴミ奴隷が!」
クレーンから鎖で溶鉱炉に吊り下げられた肥満体の中年は、その光景に怒号を飛ばす。
奴隷少女「どうか、どうかお慈悲を!」
少女の頬は涙で塗れていた。泥で汚れた古いメイド服。その手にはクレーンのハンドル。
主人「よくも俺が寝ている間に縛って稼動中の溶鉱炉の真上にぶら下げてくれたな! 降ろせ! 早く降ろさんかあああ!! めちゃくちゃ熱いんだよおおおお!!」
奴隷少女「申し訳ありませんご主人様! うっかり間違えてまああれこれあってこのようなことに!」
主人「もはやプロセスの説明さえ省きやがってよおおお!!」
奴隷少女「お許しください、もう二度といたしませんので!」
主人「謝るより早くここから安全な所に早く降ろせこのバカ奴隷があああ!!」
奴隷少女「ところで寿司が月二回で並みのままなんですがどうにかなりませんか」
主人「なるかボケエエエ!!」
奴隷少女「あぁ! ご主人様への申し訳なさに手が滑りそうに!」
主人「待て待て待て話し合おう。短絡的な結論はいけない。元の週二の特上にすればいいんだな」
奴隷少女「いえ週四でお願いします。職人の方に出張してもらって目の前で握ってもらうやつで。あとそれから課金は十万まで許してください」
主人「ふざけんなクソ奴隷がぁ!」
奴隷少女「ああ手が恐怖のあまりヌルヌル滑る!」
主人「ちょっと待ちましょう奴隷さん。我々は話し合いが出来る理性的な人間同士なはずだ。君の条件を全て呑もう」
奴隷少女「優しいご主人様で嬉しいです! 思わず勝利のピース!」イェーイ
ガ ン ッ
奴隷少女「あ、やっべ、ハンドルに手引っ掛けて動かしちゃった」
主人「あああああああああこのクソ奴隷があああ!!」
△ △ △
主人「このクソ奴隷が!よくもやってくれたな!」
奴隷少女「なんとなくそんな気はしてましたけど、なんで平然と生きてるんですか? 未来から来た殺人サイボーグでも死ぬんですけど……」
主人「この愚か奴隷め! 溶鉱炉のドロドロに溶けた高熱の鉄に、俺の脂足の水分が蒸発することで一時的な熱を遮断する膜ができるのだ!
これをライデンフロスト現象という! 火渡りの儀式で足裏にほとんど火傷を負わない理由とされる科学的現象だ!
これで熱を一時的にシャットダウン。さらに水よりもはるかに比重が高い溶けた鉄に人体は当然沈まずに浮く!
そこで両手をバタバタさせて浮力で体重を軽くし、右足が沈み込む前に左足を出し、左足が沈み込む前に右足を出す動きを高速で行えば、溶けた鉄の上をほぼ無傷で歩くことが可能になるのだ!
俺はこれで溶鉱炉の端まで走り抜けたというわけだ、わかったかこのサイコパス奴隷がよおおお!!」
奴隷少女「詳しく丁寧に解説してるようでいて途中からめちゃくちゃなこと言ってる……!」
主人「うるせぇバーカ無事なんだからいいんだよ罰してやるぞこのクズ奴隷があああ!!」
△ △ △
主人「ここにお前のスマホがあります」
奴隷少女「はい……」
主人「ここにお前が必死に課金してた某エロゲ出身のスーパー偉人大戦ゲーのアプリがありますね?」
奴隷少女「はい……」
主人「はいアプリ消去ー」
奴隷少女「ああああああああああ!!!ああああああああああ!!!」
主人「これでちったあ懲りただろうこのクソ奴隷があああ!!ていうか課金した金は全部俺のだからなあああ!!」
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