第41話 慈悲を乞う奴隷の少女、主人はひさしぶりに罰を下す


奴隷少女「ご主人様お許し下さい!」


 華奢な少女の声が、悲痛に響く。


主人「いいや許さんぞこのゴミ奴隷が!」


 肥満体の中年は、その光景に怒号を飛ばす。


奴隷少女「どうか、どうかお慈悲を!」 


 少女の頬は涙で濡れていた。泥で汚れた古いメイド服。


主人「よくも俺が寝ている間にサハラ砂漠に置き去りにしてくれたなぁ!」


奴隷少女「申し訳ありませんご主人様! でもパジャマ一貫からサバイバルして生還するなんて素晴らしいです!」


主人「うるせぇ必死にサバイバルしたんだぞ! マスターキートン読んでて助かったわ!」


奴隷少女「スーツは砂漠に最適なんてどう考えても嘘っぱちですよ! そもそも御主人様パジャマでしょ」


主人「知るか! うまくいったからそれでいいんだよ!」


奴隷少女「しかも助けられた現地部族に協力して砂漠地帯の15パーセントの緑地化事業を成功させて帰ってくるなんてさすが御主人様です!」


主人「助けられた義理は返さんといかんからな! そんなことよりお前に罰を与えるほうが先だ! こっちにこい!」


奴隷少女「ああ! お許しください御主人様!」



 △ △ △ 


主人「はいカメラ回すよー」


奴隷少女「う、うぅ、これは勘弁してくださいぃ……やめましょうよ……」


主人「うるせぇぞクソ奴隷! はい配信スタート!」


奴隷少女「うぅ……はーい! みんなー!今日もチャンネル見ててくれてありがとう! 奴隷男の娘竹輪農家……ええとあとなんだっけ」


主人「鯖缶ハンター」



奴隷少女「あ! えーと……鯖缶ハンタータピオカ黒魔術師ネットアイドルYouTuberチャンネルの時間だよぉ!」


奴隷少女「今日はね! 社会課見学! しかもリベンジ! 二度目の竹輪工場です! というわけでまたお願いしますちくわ工場長さん!」


ちくわ工場長「……」


奴隷少女「あ、あの、ま、またよろしく」


ちくわ工場長「……なにしきたの?」


奴隷少女「……」


ちくわ工場長「あのさあ前にも言ったけどウチは真面目にやってる工場なんで、そういうちくわは畑で取れるとかふざけてやってる企画で来られても困るんだよね」


奴隷少女「……はい、おっしゃるとおりです」


ちくわ工場長「だいたいさぁ、これも前にいったよね? ネットアイドルとかいってそんな鯖缶が山で取れるとかタピオカは黒魔術で作るとかカレーがマズいとかさあ、そんなことやっても人に笑われるだけでアイドルになんてなれないと思うよ?」


奴隷少女「か、カレーは私じゃなくて」


ちくわ工場長「話きいてるの?」


奴隷少女「ひ、は、はい」


ちくわ工場長「あれだけ言われてもまだ来るって人の話聞いてないよね? そんなにこっちの話なんか聞いてられないの?」


奴隷少女「いえあのそういうわけでは」 


主人「その通りですよ! もっと言ってやってください!」


ちくわ工場長「……」


主人「こいつはねぇ、こっちのいうことなんか全然聞かない問題児なんですよ! 何度怒鳴りつけたことか!」


ちくわ工場長「いやあんたにも言ってるからね?」


主人「え」


ちくわ工場長「こんな子供にあんたなにやらせてるの? 全部あなたが企画してるんでしょマネージャーさん?」


主人「え、あ、はい」


ちくわ工場長「いい年した大人が子供おもちゃにしてなにやってるの? 子供の将来とか考えないの? こんな子供を笑い物にして話題取ろうなんて人間として恥ずかしくないの?」


主人「はいおっしゃるとおりです……」


ちくわ工場長「自分も子供いるけど、自分の子供がこんな目にあわされてアイドルやらされるなら絶対止めさせるよ? あなた一体なに考えてこんなことしてるの?」


主人「はい、すいませんでした……もう二度とご迷惑おかけしまけんので……」


ちくわ工場長「よろしくお願いしますよ」


奴隷少女「御主人様! 良い表情です! はいそこで笑顔!」ジー


主人「……カメラ回してんじゃねぇよこのクソ奴隷があぁ!」


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