第9話 慈悲を乞う奴隷の少女、主人は張り切って罰を下す

奴隷少女「ご主人様お許し下さい!」


 華奢な少女の声が、悲痛に響く。


主人「いいや許さんぞこのゴミ奴隷が!」


 肥満体の中年は、その光景に怒号を飛ばす。


奴隷少女「どうか、どうかお慈悲を!」 


 少女の頬は涙で塗れていた。泥で汚れた古いメイド服。


主人「いいやもう許さんぞこのゴミ奴隷が!

よくも私が寝ている間に、収録直前の徹子の部屋に運び出してゲスト出演させてくれたな!

しかも俺が目覚める前に、徹子さんにたっぷりと『今日はウチのご主人様がすごく面白いことをしますよ、楽しみにしていてください。すごく面白いんですよ! ほんとですよ!』と吹き込んでハードルを上げやがって! 殺す気かお前は!

しつこくしつこくすごく面白いすごく面白い言いやがってよぉおお!」


奴隷少女「あれは場を温めようと思って……でも御主人様のやったモノマネシリーズ、『難産に苦しむ温水洋一の貴重な産卵シーン』はすごくウケてましたよ!」


主人「あの場で必死に考えたアドリブだったんだよ畜生! 持ちネタは全部お前が事前に説明して潰してたからな! もう許さんぞこのゴミ奴隷が!」


奴隷少女「もう二度といたしません、お許し下さい御主人様!」


主人「だまれ、お前にはやはり痛みで物事を教えたほうがいいようだな! さあこっちにこいたっぷりと苦痛と恥辱で躾てやるぞこのクズ奴隷め!」



△ △ △


主人「今日はお前のパソコンの中身をみてやるからな!」


奴隷少女「おやめください御主人様!」


主人「どーれお前のHDDにはなにが入っているのかなっと!」


奴隷少女「おい、ちょっと、ほんとマジでふざけんなよこのデブ!」


主人「え、ガチギレ…? 口調変わってんぞおい。………ええ、?」


主人「……このメールアドレスどこの? 日本じゃないよね?」


奴隷少女「……タリバン」


主人「お前と砂漠でツーショットで写ってるこの笑顔の目が笑ってない人は?」


奴隷少女「し、知り合いのモデルガン屋の店主で」


主人「これ明らかに実銃だよね? ていうか中東系じゃんこの人」


奴隷少女「……知り合いの武器商人です。RPG十個買ったら一個オマケしてくれたのでその記念に」


主人「この銃持ってる人達と写ってる写真は?」


奴隷少女「さ、サバゲー同好会の方達との記念写真で」


主人「デルタフォースとかロシア軍のコスプレじゃなくて、中東のテロリストっぽい恰好してるよね?

ていうかこのカラシニコフ、本物だよね?」


奴隷少女「すこし過激な思考を持ってるだけの本来は大らかな砂漠の民の方達なので……」


主人「この『世界拷問大全』ってサイトは」


奴隷少女「ただの趣味です」


主人「ほんとに?」


奴隷少女「あとで御主人様に試そうとか考えてませんほんとです」


主人「……」


主人「きょ、今日はこのぐらいにしといてやろうかなあ!」



 これは富豪の中年と、奴隷の少女との虐待と憎しみ、復讐と暴力の連鎖とマズいことには首を突っ込まないことにしておく中年の処世術が炸裂する無駄に緩い日常を綴った物語である。

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