第2-3話「侵略者」




「アグレッサーと龍王はそれぞれ一つの目的を持って行動しておる」


 ヴァンパイアによるアグレッサー講座の始まりだ。

 アグレッサーはウォルフを含めて十二人と極めて少ない種族だ。その十二人の頭領として君臨するのがヴァンパイアである。ヴァンパイア自身はただ長寿で頼られるだけと語るが、アグレッサーの中でヴァンパイアに逆らえるものは数少ないというのがウォルフの談だ。

 アグレッサーというのは魂のみで生きている生物で、それぞれが異空間に飛ぶ能力を有している。その異空間を飛んで異世界に現れるのがアグレッサーで、現在地球に全てのアグレッサーが集まっている。


「え、地球に全員いるの?」

「以前まではウォルフがいなかったがの。何の因果か、ウォルフまで地球ここに来たことで全員集まってしまったということじゃの」

「なんでアグレッサーは地球にいるの?」


 軽く旅行でもしてるのかな。とユウは想像するが、事態は深刻だった。


「地球を侵略するためじゃよ」


 ユウは目を丸くした。その後にヴァンパイアが「簡単に言うとじゃが」と言っていた言葉を聞き漏らすほど驚愕に満ちていた。


「……どういうこと? ウォルフ」

『ヴァンパイアに聞け』


 ウォルフも侵略にきたということなのだろうか。ユウはそう思って問いかけてみたが回答を拒否される。自分で答えたいものではなかったのだろう。しかし、ユウからしてみればウォルフに答えて欲しかった質問だ。予想していた反応だったとはいえ、少し失念している。


「本来の目的は地球を侵略することではない。いわばこれは手段の一つと言ったところじゃ」

「地球の侵略が……手段……?」

「別に侵略するのは地球でなくてもよいのじゃ。多くの生命体があればの」


 確かに地球には人間だけでなく、獣や虫、魚に植物と、生命体という部類で豊富に存在する。しかし、それがアグレッサーの目的とどう関係するのだろうか。ユウはさらに増えた疑問に不安を覚え始めていく。


「地球というより、侵略を手段とするのはそれがワシらの目的を考えるなら一番手っ取り早いのじゃ」

「その目的ってなんなの?」

「生命体が死に至ると、魂だけの存在となり異空間を彷徨う。その魂は異空間を彷徨った末に、天国という世界に飛ばされる」


 唐突に語り出す、以前ウォルフから聞いた死人の行方の話。それはユウの記憶の片隅に置かれていて忘れかけていたが、ここでウォルフから以前聞いていたなという感想を抱く。


「では、その魂を天国に導くのは誰じゃ?」

「誰って……、自然に流れるものじゃないの?」

「自然に流れとったら魂は天国へは行かん」


 よく物語として語られる異世界転生、または異世界転移という現象は実際に起こっている。ごく稀な出来事らしいが、これは自然現象であるとヴァンパイアは断言する。

 異空間にはアグレッサーとは違う存在の魂で生きる生命体がいる。その名を鳳凰ほうおうという。鳳凰は異空間で飛び回る管理者とされており、それに連れられて魂は天国へ導かれる。たまに鳳凰に見つからずに別世界に行くという現象は、自然現象とアグレッサーとはまた違った魂の存在、神を自称する生命体が呼び出すという稀に起こる偶然の一致ある。その自称神は全くの偽物で、そこに存在した世界に居着いたものだ。


「その鳳凰と地球侵略がどう関係してくるの?」

「ワシらアグレッサーの目的がその鳳凰なのじゃ」

「……鳳凰に何かさせるの?」

「逆じゃ。ワシらが鳳凰に何かをするのじゃ」


 鳳凰は異空間に一人しかいない生命体だ。つまり、全ての死を鳳凰一人で管理していることになる。


「もし、その死人が大勢押しかけたらどうする?」

「……え?」

「もし死人の数が、鳳凰の対応許容量を大幅に超えたらどうなる?」

「……まさか…………」

「そう、ワシらアグレッサーはそれを目的としておる」


 地球侵略とは名ばかりだ。

 侵略して征服することが目的ではない。侵略して、殺戮して、異空間で鳳凰に何かをする。それがアグレッサーの目的だ。

 地球侵略をとする。生命体が多ければいい。鳳凰は死を司る。異空間を管理する。天国への架け橋。そこまで考えて、ユウはやっとアグレッサーのしようとしていることを理解し始める。


「ワシらアグレッサーは、鳳凰を打倒し、異空間を支配するのが目的じゃ」


 アグレッサーの侵略対象は地球よりも遥かに大きなものだったのだ。


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